根尖性歯周炎とは?口臭との関係/原因/治療法
虫歯のイメージといえば、「歯の一部分が黒くなっている」「冷たいものがしみる」といった症状が一般的ですよね。その時点で歯科医院に行けば、ほとんどの場合は虫歯の部分を削って詰めるだけで済むのですが、長く放置して虫歯が進行してしまうと、最終的に根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)という病気になってしまいます。
根尖性歯周炎になってしまうと、歯を削るだけでは治すことができなくなります。今回は根尖性歯周炎の原因や症状、治療法について詳しく解説していきます。
根尖性歯周炎とは?
根尖性歯周炎を簡潔に表すと、「歯の根の尖端に炎症が起きて膿が溜まった状態」です。
歯の構造は、物を噛むための白く硬い歯冠(しかん)部分と、歯肉に埋まった歯根(しこん)部分から成っており、歯根の中には根管(こんかん)という神経が通る穴があります。
歯冠にできた虫歯はどんどん深くに進行していき、歯の中に通っている神経に炎症を起こし、根管へと到達します。この状態を歯髄炎といいます。
根管をさらに奥深く進むと、根管の先端にある穴から歯周組織という歯を支えている組織に炎症が波及し、膿を形成します。この頃には既に虫歯によって神経は死んでいて、痛みを感じることはありません。この状態を根尖性歯周炎といいます。
エックス線写真を見ると、歯根の先に黒い円が見える時があります。この黒い部分は、炎症によって骨が溶かされて膿が溜まってしまった状態を示しています。
根尖性歯周炎の原因は?
根尖性歯周炎の発症原因はほとんどの場合が虫歯の進行によるものですが、転んで歯をぶつけてヒビが入り神経を死なせてしまったなど、外的に強い刺激が加わることによって根尖性歯周炎が生じることもあります。
また、可能性は低いですが、過去に根管の治療をした際に与えられた刺激によっても起こることがあります。刺激というのは治療器具によるものや薬によるものです。根管の治療にはとても細く小さな器具を使うため、器具の尖端が折れたまま根管の中に入り込み、炎症が起きるということも少なくありません。
こんな症状があったら根尖性歯周炎になっているかも…
根尖性歯周炎は、進行度合いによって様々な症状が現れるようになります。具体的にどのような症状が出てくるのか詳しく紹介していきます。
1.歯が浮いたような感じがする
根尖性歯周炎になると、歯がグラグラするような、浮いたような嫌な感じがします。これは歯周組織に炎症が起きていることを意味しています。
また、根尖性歯周炎では歯の神経が死んでいるため痛みを感じないと述べましたが、ものを咬んだ時や、歯を叩いたときには歯周組織に響いて痛みを感じることがあります。歯医者さんが金属の棒で歯を叩く時は、この歯周組織で生じる痛みを確認しているのです。
症状が強く出ている急性根尖性歯周炎の時は、叩かれると強い痛みを感じます。
2.進行すると痛みが強くなってくる
根尖性歯周炎の初期なら少しだけ鈍痛がある方もいますが、何もしなければさほど痛みは感じません。しかし、進行していくにつれて、ドクドクと血管の脈拍に合わせるかのような痛みが出てきます。特に、夜寝る前に体温が高くなると痛みが増すことがあります。
3.歯肉が腫れる
根尖性歯周炎を起こしている歯の歯根があるあたりの歯肉が赤く腫れます。膿が溜まることによって膨らんだり、押すと痛みを感じたりすることもあります。重度の場合は顔の半分がパンパンに腫れてしまうこともあります。
4.熱が出る
根尖性歯周炎は虫歯による細菌感染ですから、重症になると顎の下の免疫器官であるリンパ節が腫れ、体調が悪いと発熱することがあります。熱が出ると身体がだるくなり、食欲不振に陥ります。
5.フィステル(瘻孔)ができる
根尖性歯周炎によってできた膿は、いつまでも身体の中に留まっていることはなく、歯肉を突き破って外に出てきます。この時に歯肉にできる穴をフィステル、もしくは瘻孔(ろうこう)といいます。
膿がフィステルを通って排出されると、張っていた痛みが無くなり、熱も下がって楽な状態になりますが、決して治ったわけではありません。
また、フィステルによって膿が外に出てくると臭いを伴い、唾液に苦みや強い口臭を感じることがあります。フィステルは顔の皮膚にできることもあり、この場合は外歯瘻(がいしろう)と呼ばれます。
「根尖性歯周炎かな?」と思ったら…
歯医者さんが苦手な方や忙しい方の場合、「ちょっと痛いけど我慢すればいいや」と、つい通院を先延ばしにしてしまいがちですが、虫歯が根尖性歯周炎にまで進行してしまうと、さらに辛い治療が待っていたり、治療期間が延びてしまったりすることとなります。
本来であれば、根尖性歯周炎かなと思う前に受診するのがベストです。つまり、虫歯の時点で歯科医院に行くべきです。
既に根尖性歯周炎の症状が現れてしまっている方であれば、すぐに歯科医院で適切な治療を受ける必要があります。
根尖性歯周炎の診断はどのように行うの?
歯科医院では、必ず放射線によるエックス線検査で診断を行います。フィステルができていれば、そこに「ガッタパーチャポイント」というエックス線写真に写る根管充填材を入れて撮影し、歯とフィステルの関係を探ります。ガッタパーチャというのは天然由来のゴムで、薬効はありません。
口の中に対する検査であれば、歯を叩いて痛みをみる「打診痛」や、微弱な電気を歯に流すことで神経が死んでいるかを判断する「電気歯髄診」のほか、歯肉を押して圧痛を確認することもあります。
問診では、医師から痛みの有無や症状の経過について聞かれます。
根尖性歯周炎の治療方法
根尖性歯周炎になった場合、根管の中の虫歯によって感染した部分を削って綺麗にする感染根管治療がなされます。削るといってもドリルで削るのはほんの少しで、リーマーやファイルと呼ばれる細い針のような器具で少しずつ削り取っていきます。
清掃のために薬を使いながら、最後は神経がなくなりスカスカになってしまった根管をガッタパーチャポイントで埋めて治療完了となります。
治療回数は症例によっても異なりますが、根管の形が複雑な難症例だと1ヶ月以上かかってしまうこともあるため、長期的な治療が必要となるケースを考慮しておくべきでしょう。
感染根管治療の現状
感染根管治療はとても難しい治療で、成功率は60~80%程度と言われています。この成功率を上げるには、「ラバーダム」というゴムのシートを用いて、細菌が含まれる唾液が治療中に根管の中に侵入しないように防ぐことが大切です。
しかし、ラバーダムを実践している歯科医院は少ないのが現状です。これは、ラバーダムを使っても保険点数が付かない、つまり無料サービスになってしまうということ、また、感染根管治療は大変な治療なのに、保険点数が低めに設定されていて採算がとれないことも要因のひとつです。
安く医療を受けられる日本の健康保険が素晴らしいのは事実ですが、治療における質の低下を招くことのないよう、材料費や手間に見合った適正な点数設定が求められるところです。
「成功率をとにかく上げたい」という方は、感染根管治療専門の歯科医院に行きましょう。ラバーダムに加え、マイクロスコープという顕微鏡による丁寧な治療が行われます。ただし、自費で受けることになるので、治療には相当な費用がかかります。
根尖性歯周炎で抜歯が必要になるケース
歯が縦に割れている場合は、感染根管治療をしても治らないため、残念ながら抜歯せざるをえないケースがほとんどです。
また、歯根が溶けてしまって吸収されている場合も抜かなければなりません。重度の歯周病で歯を支える骨がない場合も、同様に抜歯を選択することとなります。
感染根管治療で根尖性歯周炎が治らない場合、メスで歯肉を切って直接根管治療を行う外科的療法もありますが、この外科的な方法を行っても治らない場合は、やはり抜歯となります。
根尖性歯周炎による抜歯を避けるためには、日々の虫歯ケアも重要ですが、定期的に歯科医院を受診することで治療すべき歯を早期に発見することも大切です。セルフケアと専門家によるケアを両立することで重症化を防ぎましょう。
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