何とかしたい…歯茎のかゆみ・ムズムズ感
歯茎がかゆく、なんだか落ち着かない感じがする時がありますよね。疲れた時にかゆくなる場合もあれば、ものを噛んだ時にかゆくなる場合もあります。あのムズ痒さの正体は一体何なのでしょうか?
歯茎のかゆみについて、その症状・原因・予防方法を解説します。
歯茎がかゆいのはなぜ?主な9つの原因
歯茎がかゆくなる一番の理由は「炎症」です。アレルギーも炎症の一種で、ヒスタミンという物質がかゆみを引き起こします。具体的な例で見てみましょう。
1. 歯肉炎・歯周病
歯肉炎は歯肉に起こる炎症です。歯磨きをしないで歯垢(プラーク)汚れを放置していると、歯垢中の細菌が炎症を起こし、歯肉が熱を帯びて赤く腫れます。
この症状はヒスタミンという化学物質によるものです。
ヒスタミンとは?
ヒスタミンはかゆみ物質でもあるので、血管を拡張させてかゆみを引き起こします。身近な例でいうと、アトピー性皮膚炎で肌がかゆくなるのも、このヒスタミンのせいです。歯周病でも歯周ポケットの中に炎症が起こるので、同様にかゆくなります。
妊娠中の歯茎の炎症
また、女性は妊娠をした際にホルモンバランスが崩れて妊娠性歯肉炎を発症することがあります。歯茎が腫れ、出血が起こり、痛み・かゆみが現れます。分娩すると症状は治まり、歯肉炎も回復します。
もちろん、歯肉炎・歯周病にはさまざまな症状があり、歯茎のむず痒さが症状として現れない場合もあります。歯茎のかゆみがなくても、出血・腫れなどがある場合には歯肉炎や歯周病の可能性がありますので、早めの受診をおすすめします。
2. ストレス
ストレスがかかると免疫力が落ち、歯肉炎や歯周病の症状が悪化することがあります。また、ストレスはあらゆる影響を及ぼすので、人によっては原因不明のアレルギー症状のようなものが出て、かゆみを呈することも考えられます。
また、心身症の可能性もあります。心身症とは、心理的・精神的負荷が症状に大きく関わる病気です。原因のわからないかゆみが出ても、決して不思議ではありません。
さらに、ストレスは先に紹介した「歯周病・歯肉炎」のリスクファクターの一つでもあります。ストレスが免疫力を低下させ、歯周病のリスクを高めてしまうのです。
ストレスのない生活を送ることは困難ですから、ストレスを上手に解消することが大切でしょう。
3. 虫歯
虫歯では痛みを感じますが、かゆみは基本的に感じません。歯の神経を司る歯髄は、痛みしか感じないからです。虫歯の際に冷たい水や熱いお湯がしみるのは、この痛覚を刺激するためです。
痛みの神経であるC線維への刺激の強さによって、かゆみが引き起こされるという説もありますが、詳しいことはハッキリとわかっていません。
歯根膜炎によるかゆみ
虫歯が進行して歯根膜炎になった場合、疼痛・かゆみ・歯が浮くような違和感・ウズウズ感などが出現します。歯根膜というのは、歯と歯が埋まっている歯槽骨の間にある組織のことです。緩衝材のようなもので、噛み応えを感じることができるのはこの歯根膜があるからです。歯根膜には痛み神経以外に知覚神経があるので、異常があると噛む際に違和感が出ます。
歯根膜炎の場合は根尖性歯周炎を起こしている可能性も
歯根膜炎が起きている場合、根尖性歯周炎という歯の根っこに膿が溜まっていく病気になっている可能性も考えられます。根尖性歯周炎では、既に虫歯によって歯(の神経)が死んでいるので、痛みを感じることはありません。しかし、歯根膜を含め歯の周りにある神経はまだ生きているので、噛んだ時に痛みやかゆみなどを感じる可能性があります。急性期の場合は何もしていなくてもすごく痛く、慢性期だと軽い痛みや違和感、排膿が生じます。
また、根尖性歯周炎は治療後も症状が出る可能性があります。治療では死んだ神経を抜き取り、薬でキレイにして、代わりとなるものを詰めます。しかし、神経の管は複雑な形をしているので、全ての神経を除去することはかなり困難です。治療後も神経の一部が残ってしまうと、痛み・かゆみ・違和感を引き起こします。その場合は、再び管の中をキレイに掃除しなければなりません(再根管治療)。
4. 乳歯・永久歯の萌出
新しい歯が生えてくる時は、歯肉を突き破って出てくるためムズムズするのが正常です。かゆみがあっても問題はありません。しかし、小さな子供だと気になって歯茎を指で引っ掻いてしまう場合があります。グラグラしてあと少しで抜けそう、という場合は歯科医院に相談して抜いてしまっても良いでしょう。
5. 親知らず(智歯周囲炎)
親知らずも乳歯と同様で、生えてくる時にかゆみや痛がゆさを感じることがあります。
生えかけの親知らずは歯肉が半分被っていたりする場合も多く、歯磨きがしづらく、炎症を起こしやすいです。細菌感染を起こしてしまうと化膿して強い痛みを感じます。頬が腫れ、発熱して口が開かなくなることもあります。こうなるとかゆみどころではないので、抗菌薬と痛み止めで落ち着かせてから抜歯する必要が出てきます。
親知らずはさまざまなトラブルの原因となるため、生えてきたことに気付いたら、早めに受診することをおすすめします。
6. 口腔アレルギー症候群(OAS)
野菜や果物、ナッツなどを摂取した時に口腔内にアレルギー症状が出る人がいます。唇の腫れ、舌がヒリヒリする、のどや歯茎がかゆいといったさまざまな症状が口の中に起こります。
また、口の中だけでなく、皮膚に症状が現れたり、下痢などの症状が起こったりする場合もあります。重篤な場合は命に関わるアナフィラキシーショックを起こすことがあるので、軽視はできません。
口腔アレルギー症候群は、花粉症やゴムのラテックスに対するアレルギーと併発することが多いと言われています。
花粉症やラテックスアレルギーのある人で、食事によって口の中に症状が現れる場合には、検査によりアレルギーの原因となる食品を調べ、その食品を避けることが望ましいでしょう。
7. 薬の副作用
薬の副作用が原因で、歯肉炎・歯周病・歯肉増殖を生じる場合があります。歯肉炎や歯周病は一般的ですが、「歯肉増殖」はご存知ない方も多いかもしれません。
歯肉増殖とは、その名の通り歯肉が異常に増えて肥大化する疾患のことです。歯と歯の間から歯肉が異様に盛り上がり、圧痛を感じる人もいれば、何も感じない人もいます。歯磨きがとても行いにくく、プラークコントロールがうまく行えなくなるため、歯周病や虫歯のリスクが高くなります。
薬物性歯肉増殖の原因となる薬は?
薬物性歯肉増殖を起こす薬は、高血圧や狭心症に使われるニフェジピン、免疫抑制薬であるシクロスポリンA、抗てんかん薬であるフェニトイン・ダイランチンが代表的です。
薬が原因ですから、「薬の服用を中止すれば良いのではないか」と考える人も少なくないでしょう。しかし、薬の中止は主治医への相談が必要です。薬の変更などを行える場合もありますし、主治医の指示に従うことが大切です。
また、歯科医院でクリーニング(歯周基本治療)を受けることによって、歯周病などの病気の発症リスクを抑えることもできます。
8. ヘルペス(ヘルペス性歯肉口内炎)
ヘルペス (単純性疱疹)とは、ヘルペスウイルスによる感染症のことです。ヘルペスウイルスは、特に珍しいウイルスではなく一般的なウイルスです。さまざまな種類があり、水疱瘡の原因となるウイルスもヘルペスウイルスの一種です。
歯茎のかゆみなど、口の中に症状が起こるヘルペスには「ヘルペス性歯肉口内炎」があり、一般的によく知られている「口唇ヘルペス」は口元や口周りに起こります。
ヘルペス性歯肉口内炎は、違和感・かゆみ・痛痒さ・痛みといった症状が歯肉などに起こりますが、子供に多く、大人が発症した場合は症状がかるい傾向があるようです。
また、疲れや風邪などによって免疫力が低下していると、感染・再発リスクが高まります。
ヘルペスにより歯肉に症状が起きている時は、歯磨きをすると強い痛みが生じる場合があります。出血を伴う場合もあります。そのため、一時的に歯磨きを中止せざるを得ない場合もあるでしょう。
9. 歯を磨きすぎている
1日に何回も歯を磨いたり、必要以上の圧力を加えてゴシゴシ磨くなど、誤った歯ブラシの使い方をしていると、歯茎を傷つけて擦過傷ができてしまいます。
痛みが生じたり、痛痒い感じがしたりする場合もありますが、腫れにより歯肉がブヨブヨして気持ち悪いと感じる人も多いです。
強く磨いた方が汚れが落ちるような気がするかもしれませんが、圧をかけすぎてしまうと、歯肉に負担をかけてしまいますし、歯の表面を傷つけてしまう場合もあります。適度な力加減でブラッシングを行うことが大切でしょう。
多くの歯科医院で歯磨き指導を受けられるので、一度自分の歯磨きを見直してみるのも良いでしょう。
歯茎をかくのは厳禁!
かゆいからといって歯茎をかいても原因は解決しません。むしろ、汚い手でかくと炎症や化膿を引き起こす可能性があります。かゆみを消すために歯ブラシを強く当てれば、余計に傷がついてしまいます。
歯茎がむず痒いことで夜もよく眠れないという場合もあるかもしれませんが、症状を悪化させてしまう恐れもあるため、直接かいてしまうことはやめましょう。
歯茎のかゆみが、何らかの病気のサインである可能性もあるため、症状が続く場合には医療機関を受診して相談することをおすすめします。
歯茎がかゆい時の正しい対処法
歯茎がかゆい時の対処法は、かゆみを引き起こしている原因によって異なると言えます。自分の歯茎のかゆみの原因をつきとめ、正しく対処することが必要になるでしょう。
歯周病や虫歯など、進行する疾患が隠れている場合もありますから、早めの対処が必要な場合もあります。
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