歯垢(プラーク) による歯や歯茎への影響・減らす方法
みなさんは、毎日歯磨きを行っていると思います。でも、歯磨きの目的って何だかご存知ですか?
そうです、歯磨きは歯垢除去を目的に行っています。「食べカスを取り除くためでは?」と思う人も多いと思いますが、歯磨きの主な目的は歯垢除去です。
食べカスと歯垢、何が違うのでしょう?歯垢や食べカスについて知り、ブラッシング効果の向上、虫歯・歯周病予防につなげることが大切でしょう。
歯垢(プラーク)とは?
歯垢(プラーク)とは、細菌の塊のことを言います。この時点で、食べカスとは違うということがおわかりかと思います。食べカスは、食事が口に残ってしまったものですが、歯垢は、その食べカスに細菌が繁殖したものです。
つまり、食べカスが歯面に付着したり、歯と歯の隙間に残っていたりすることで、口の中に歯垢ができてしまうのです。プラークが生成されるのは、食事をしてから8時間程度経過してからとされています。
歯垢に含まれている細菌の種類・数
歯垢にはたくさんの細菌が含まれています。プラーク1ミリグラムに1億個もの細菌が含まれているとされています。また、その種類は300種とも言われています。
口の中の細菌で、特に知られているものに、虫歯の原因菌であるミュータンス菌(ストレプトコッカス・ミュータンス菌)が挙げられますが、虫歯の発生に関わる細菌はこれだけではありません。ミュータンス菌は虫歯菌の一つなのです。
また、歯周病の発生にも多くの細菌が関与しています。
わずかな歯垢であっても、そこに含まれている細菌の数・種類はとても多いです。このことからも、わずかな磨き残しからも病気が発生するということが、納得できるかと思います。
歯垢はネバネバしているのでうがいでは落とせません
プラークコントロールの効果を高めるために、マウスウォッシュを取り入れている人も多いと思います。マウスウォッシュを使用しただけで、口の中がスッキリするので、歯垢や細菌が除去されたような感じがするかもしれません。
しかし、歯垢は粘着性がありますし、水にも溶けません。そのため、たとえマウスウォッシュを使用したとしても、うがいだけでは落ちません。歯ブラシや補助清掃用具を使用して物理的に除去する必要があります。
歯磨き粉や洗口剤を使用したとしても、正しくブラッシングを行わなければ歯垢は落ちないので、虫歯や歯周病を効果的に防ぐことができないのです。
歯垢とバイオフィルムの違いって何?
歯垢とバイオフィルムは、どちらも細菌の塊です。近年は、プラークもバイオフィルムの一種として認識されるようになっています。
バイオフィルムは、口の中に限らず存在していて、お風呂やキッチンなどのヌルヌルもバイオフィルムです。口の中に存在するバイオフィルムを、特に「口腔バイオフィルム」とも呼ばれます。
バイオフィルムは虫歯や歯周病の原因です。バイオフィルム内の細菌が原因となる病気を「バイオフィルム感染症」と呼びます。
歯垢と歯石の違いは?
歯石とは、歯に付着した歯垢が除去されず、時間の経過とともに固まったものです。唾液の成分(カルシウムなど)が歯垢に作用して、石のようにかたくなります。歯垢は歯ブラシで除去することができますが、歯石になってしまうと、歯ブラシでは落ちないです。歯科を受診し、専用の器具で除去してもらう必要があります。
歯石は歯周病の原因となるため、歯石が付着しないように、歯垢の段階でしっかり除去することが大切でしょう。
歯垢が付着していると…
歯に歯垢(プラーク)が付着していると、主に次のような悪影響があります。すぐに何らかの病気が発生するということはありませんが、歯垢が付着したまま放置されてしまうと、歯垢の中に潜む細菌が繁殖し、その細菌によって歯や歯茎などにダメージを与えてしまうのです。
また、蓄積された歯垢の量が多くなると、口のニオイにも影響します。
1.歯垢は虫歯の原因です
「甘いものばかり食べていると虫歯になる」などと言われていますが、虫歯の直接の原因は歯垢の中の細菌です。歯垢内の細菌が、糖分を栄養源として虫歯を作り出すため、甘い物は虫歯の原因になると言われているのです。
歯垢の中の細菌は、摂取した食べ物の糖を分解して酸を作り出します。虫歯は、この酸によって歯が溶かされること(脱灰)によって起こります。
歯が溶かされ続けると歯のダメージは大きくなり、歯に穴が開いてしまいます。
本来、唾液には溶かされた歯の表面を修復する作用(再石灰化)があります。しかし、唾液量が不足していたり、歯磨きが十分でなかったり、糖の摂取量が多かったりすると、この修復が間に合わずに脱灰が進んでしまい、虫歯になってしまうのです。
歯垢の付着だけでなく、さまざまな要因が複雑に関係して虫歯が発生するのですが、直接の原因は歯垢とも言えるでしょう。歯磨きで、しっかり歯垢を除去することによって、虫歯を防ぐことも可能でしょう。
2.歯垢によって歯周病が発症する
歯周病とは、歯を支える歯周組織が破壊されてしまう病気です。歯を支える顎の骨(歯槽骨)が溶かされてしまったり、歯肉に炎症が起きたりします。進行すると、歯周組織が歯を支えられなくなって、歯が抜け落ちてしまうこともある恐ろしい病気です。
歯垢の中の細菌は、歯周組織にも悪影響を及ぼし、歯周病を発症させてしまいます。歯垢は歯の表面だけでなく、歯と歯肉の隙間(歯周ポケット)にも付着しますが、この隙間に細菌が入り込んで歯肉や歯槽骨にダメージを与えていくのです。
歯垢内の細菌は、歯肉や歯槽骨を破壊しながら歯周ポケットを深くしていきます。健康な人では3ミリ以下ですが、進行した歯周病では6ミリを超えます。
歯垢にはたくさんの細菌が含まれていますが、歯周病を発症する細菌は、虫歯を発症する細菌とは異なります。歯周病発症の原因細菌には、P.g.菌・A.a.菌などがあります。
3.歯垢で口が臭くなる
歯垢は口臭の原因にもなります。プラーク内の細菌が、臭いガスを放出するのです。
歯垢内の細菌が作り出す口臭の原因となる物質には、硫化水素・メチルメルカプタンなどがありますが、硫化水素は腐った卵のニオイ、メチルメルカプタンは腐った玉ねぎのニオイがします。
口臭が気になると、「胃が悪いのかな」と考える人も少なくないようですが、口臭の原因の多くが口の中にあるとされています。プラークが多く付着した口腔環境では、口も臭くなってしまうのです。
また、歯垢は虫歯や歯周病の原因となることは紹介しましたが、虫歯や歯周病も口臭の原因になります。口臭を予防するには、適切なプラークコントロールを行い、口の中を衛生的で健康に維持することが必要になるでしょう。
歯垢が落ちているのかわからない!歯垢をチェックするには?
歯垢がたくさん付着していれば、蓄積した箇所が黄色っぽくなるため、視覚的にわかります。しかし、歯垢の付着量が少ないと、見ただけではわかりにくい場合が多いです。そのため、磨き残しを見落としてしまうことは珍しくないでしょう。
磨き残しがあると、虫歯や歯周病、口臭の原因となるため、自分が上手く磨けない箇所を把握して、磨き残しをなくすように努めることが大切です。
プラークを染める!?「染め出し」とは?
「染め出し」とは、染色液(染め出し液)を使用してプラークの付着箇所を確認することを言います。歯磨き後、歯に染色液をつけると、歯垢が残っている箇所が赤く染まります。つまり、赤く染まった箇所が、磨き残しになっている箇所です。
磨き残しになっている箇所は、上手く磨けていない可能性があるため、普段から注意して磨く必要があるでしょう。歯科医院では、歯磨き指導を行っているので、上手く磨けない箇所の磨き方などを教えてもらうことができます。
染色液はどこで買う?成分は?
染色液は、歯に残った歯垢を真っ赤に染めます。磨き残しは確認しやすいのですが、どんな成分が使われているのか、体に悪影響はないのか、といったところが気になるところかと思います。
染色液にはさまざまな種類がありますが、かまぼこなどの食品にも使用されている着色料などが使われていますので、安全性については心配要らないでしょう。
また、染色液は薬局・ドラッグストアなどで販売されています。比較的手軽に手に入りますから、自宅で染め出しを取り入れることも可能です。
歯垢を減らす3つのポイント
口の中の歯垢を減らすことが、口の中の病気や口臭などの効果的予防につながります。次のようなことを常に心がけ、さまざまな悪影響を及ぼす歯垢を少しでも減らすことが大切です。
1.正しく歯磨きを行う
プラークコントロールの基本は、毎日の歯磨きです。正しく歯磨きを行うことで、効果的に歯垢を除去することができるでしょう。
しかし、正しく歯磨きを行えていない、丁寧にブラッシングを行っていない、という人も少なくありません。自分の歯の磨き方を、改めて見直すことは大切なことです。
また、1日に複数回歯磨きを行う人が多いですが、全てに時間をかけて丁寧に行うことは困難かもしれません。虫歯・歯周病の予防という観点から言えば、就寝前の歯磨きを特に丁寧に行うことが有効です。
忙しくて時間がないという人も、就寝前の歯磨きだけでもしっかりと行うことが大切でしょう。
2.定期的に歯科で除去してもらう
毎日丁寧に歯磨きを行っている人でも、磨き残しができてしまうものです。自分では落とせない汚れを、歯科医院で徹底的に除去してもらうことが大切です。
プロのクリーニング(PMTC)を受け、歯垢を完璧に除去することで、虫歯・歯周病・口臭などの予防効果が高まり、衛生的で健康な口腔環境を作ることができるでしょう。
歯ブラシでは落としにくい着色汚れも除去することができ、ホワイトニング効果が得られる場合もあります。
3.歯ブラシは定期的に交換しよう
毛先の開いた歯ブラシでは、効果的に歯垢を除去することができません。そのため、毛先が開いてきたら、新しい歯ブラシに交換することが大切です。
交換の目安は1ヵ月程度と言われていますが、磨き方や力のかけ方などによって、歯ブラシの傷み方は人それぞれです。自分の歯ブラシを普段からチェックすることも大切でしょう。
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