歯垢が臭い原因は?プラークによる口臭予防
「歯磨きをしているのになかなか口臭がなくならない…」という方は、正しい方法で歯を磨けておらず、歯の汚れの除去が上手に行えていない可能性があります。
歯磨きで落とすべきなのは、食べ物の残りカスだけではありません。歯にベットリと付いた歯垢(プラーク)という汚れをキレイにしなければ、口臭は減らないのです。今回は歯垢と臭いの関係について解説します。
そもそも歯垢(プラーク)とは?
歯垢とは歯に付着する黄白色や白色のネバネバした物質のことで、75%が細菌、25%が不溶成分や唾液成分で構成されています。つまり、歯垢のほとんどは細菌でできているのです。
歯垢中の細菌は200~300種類、1mg当たりつき1億~数億個あるとわかっており、ミュータンス菌などの虫歯菌やジンジバリス菌などの歯周病菌、口臭の元となる臭いガスを出す細菌など、悪さをする菌がたくさん含まれています。
歯垢には粘性があるのでうがいでは除去することができず、必ず歯ブラシやフロスなどによる物理的な清掃が必要となります。歯垢をそのままにしておくと、歯石という乳白色の硬い物質へと変化します。
歯垢の臭いは?プラークが口臭の原因になるって本当?
細菌には酸素が好きな好気性細菌と、酸素が嫌いな嫌気性細菌が存在します。歯の白く見えている部分には好気性細菌が付着しやすく、狭くて酸素が少ない歯と歯茎の間の歯周ポケットには嫌気性細菌が多く潜んでいます。
歯垢を放置するとどうなる?
歯垢を放置していると口腔内には嫌気性細菌が増えていき、歯周ポケットや舌の上に残ったアミノ酸・タンパク質を分解し、臭いガスを出します。
この臭いガスの正体である揮発性硫黄化合物(VSC)には硫化水素、ジメチルカプタン、ジメチルサルファイドの3つが含まれています。これらのガスが「夏のドブ川のような臭い」「腐った温泉卵のような臭い」「洗っていない水槽のような臭い」「魚のような生臭さ」を呈し、キツい口臭の元となるのです。
歯垢が口臭の原因となる病気を招くことも…
歯垢の除去を怠っていると、口臭を発生させる虫歯や歯周病などの病気を発症しかねません。では、虫歯や歯周病により口臭が発生するメカニズムについてチェックしていきましょう。
虫歯になるとなぜ口臭が発生するの?
歯磨きなどのプラークコントロールが適切に行われていないと、歯垢はどんどん蓄積していきます。歯垢中の細菌はタンパク質を分解して臭いガスを出すだけでなく、成長していく過程で酸を排出して歯を溶かしていき、口臭を引き起こします。
さらに放置された虫歯は細菌の恰好の住処となり、酸を出して増殖していきます。歯の中の神経が細菌に感染して死ぬと、最終的には歯根の先端に膿が溜まります。この状態を根尖性歯周炎といいます。
膿の行き場所がなくなると、歯肉を突き破って口腔内に出てきますが、この膿によって口臭が発生することがあります。
歯周病になるとなぜ口臭が発生するの?
まず、歯周病は歯肉炎から始まります。歯垢がキチンと除去できてないと、歯肉に炎症が起こる歯肉炎という状態になり、歯茎が腫れるので、歯周ポケットが一時的に深くなります。
歯周ポケット(歯肉溝)は、健康な方であれば1~2mmの深さを維持していますが、歯肉炎になると3mm以上の深さになります。歯肉炎ならまだ元の深さに戻ることができるのですが、この状態を放置して歯周病まで進行させてしまうと、歯を支える歯槽骨という上顎と下顎の骨の一部が溶け、歯がグラグラになってしまいます。
歯周病になると腐ったタマネギ臭が発生
歯周病で口臭が発生する一番の原因は、歯周ポケットに住む嫌気性細菌です。特に歯周病では揮発性硫黄化合物のうちメチルメルカプタンが高濃度で発生し、腐ったタマネギのような強烈なニオイを放ちます。
また、炎症に対する身体の防御反応の結果として膿が出てくるため、生臭いニオイが漂うようになります。
歯垢による臭い対策5つのポイント
歯垢による臭いを減らすには口腔ケア、すなわちプラークコントロールが大きな役割を果たします。口臭予防に効果的なプラークコントロールのポイントを見ていきましょう。
1.歯垢が付着しやすい場所を把握して丁寧に磨く
全体をしっかり磨くことはもちろん重要ですが、自分の歯の中でも特に歯垢が付着しやすい場所を把握して磨くことも大切です。
磨き残しやすい部分は?
- 生えかけの親知らず
- 上下でキチンと噛み合っていない歯
- 歯並びが凸凹している部分
- 奥歯の裏側 など
また、上の奥歯の外側部分(ほほ側)や下の前歯の裏側部分(舌の先端と接している面)には唾液腺があるため、分泌された唾液中のカルシウムが歯垢に作用して歯石を形成しやすくなります。ここも重点的に磨くようにしましょう。
舌で歯をなぞってザラザラしているようなら、まだプラークがしっかりと落ちていない証拠です。ツルツルするまで磨きましょう。
2.デンタルフロス・歯間ブラシの併用
歯ブラシだけでは歯垢の除去ケアは完璧に行うことはできません。デンタルフロスや歯間ブラシなどの清掃補助器具を使って、取りきれない歯垢を落としましょう。
一般的に、子供~若年者にはデンタルフロス、歯茎の下がってくる中年以降には歯間ブラシがおすすめです。
デンタルフロス・歯間ブラシの種類
デンタルフロスには糸状タイプとホルダータイプがあり、糸の種類も様々です。初心者はホルダータイプでワックス付きのほつれにくい糸を選びましょう。
歯間ブラシはサイズ選びが難しいですが、実際の歯間の隙間より小さめのものを買うことで、組織を傷つけずに済みます。
タフトブラシの使用もおすすめです
デンタルフロスや歯間ブラシのほか、タフトブラシという細く小さな歯ブラシも売られています。ブリッジや矯正装置を装着している方は、タフトブラシの使用が必須です。
3.バス法による歯磨きで歯周病予防
歯周ポケット中の細菌を排除するには、バス法による歯磨きが効果的です。
バス法では、歯の生えている方向に対して歯ブラシを約45°に傾け、歯ブラシの毛先が歯周ポケットに入るように当て、左右に小刻みに動かして歯垢を落とします。歯茎に対するマッサージ効果もあるので、血流が良くなり炎症の予防にもなります。
ブラッシング時の力加減に注意しましょう
ただし、力を入れ過ぎると歯が削れて歯茎が下がってしまいます。指の爪を押した時に爪が白くなるくらいの力で磨きましょう。歯ブラシの毛先が開く期間が1ヶ月程度であれば、その力加減で大丈夫です。1~2週間で毛先が開いてしまうのであれば、歯を磨くときの力が強すぎる可能性があります。
4.フッ素で虫歯予防
虫歯が酸によって歯を溶かすことを脱灰(だっかい)というのですが、フッ素は初期段階のごく浅い虫歯であれば、再石灰化を促して健康な歯に戻してくれる働きがあります。
現在、WHO(世界保健機関)では、あらゆる年代に虫歯予防としてフッ素の使用を奨励しており、多くの歯科医院でもフッ素塗布を行っています。市販の歯磨き粉やマウスウォッシュに含まれているフッ素はごく少ない量ですが、再石灰化には十分効き目を発揮します。濃度や使用する人の年齢に合わせて使用し、虫歯を予防しましょう。
5.歯科医院での定期検診
プラークコントロールは、自宅で行うセルフケアと病院で行うプロフェッショナルケアの両方で成り立ちます。虫歯・歯周病のチェックを行い、自分が正しく歯磨きができているか判断してもらうことはとても有効な手段です。
歯磨きでは落とせない歯石や着色汚れを除去するためにも、定期検診は必要不可欠です。その他、デンタルフロスや歯間ブラシの選び方など、わからないことや不安があればその都度担当の医師に相談しましょう。
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