口臭の主要原因「硫化水素」の臭い・対策とは?
「硫化水素」という気体についてご存知でしょうか。実は、口臭の原因となっている気体の一つです。もしかしたら、自分の口臭の原因が硫化水素であることも…。臭いやその原因・対策について見ていきましょう。
口臭の三大原因ガスの一つ「硫化水素」はどんな臭い?
ひどい口臭のほとんどは、口腔内で発生した気体に由来するものです。口臭の三大ガスと呼ばれる気体には、硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)、ジメチルサルファイド((CH3)2S)がありますが、このうち、硫化水素とメチルメルカプタンが約90%を占める口臭の主な原因となっています。
硫化水素は「卵が腐ったような臭い」と形容される、強烈な刺激臭を発します。
硫化水素はおならにも含まれます
おならが臭いのは、腸内バクテリアが発したガスが原因です。おならの臭いの原因の1つとして、硫化水素も含まれています。他にも、下水処理場やごみ処理場では嫌気性細菌が硫黄を還元し、硫化水素が発生します。
おならや下水処理場、ごみ処理場の臭いとなると、かなり強烈な悪臭ですので、硫化水素がいかに強い悪臭として感じられる気体なのか分かります。硫化水素の臭気は、悪臭防止法に基づく特定悪臭物質に指定されているほどです。
硫化水素による口臭の原因は?
口臭の原因となる三大ガスの原因は、主に次のこととされます。
- 硫化水素…舌の汚れ(舌苔)、歯や歯肉の汚れ(プラーク)
- メチルメルカプタン…歯周病
- ジメチルサルファイド…消化器系の病気や服用している薬
硫化水素は、食べかすや上皮かすが細菌の働きで腐敗していくときに発生します。舌苔やプラークには細菌が億単位で集まっていますので、口臭の原因となる硫化水素を発生させる大きな原因となるのです。
硫化水素を作り出す細菌をゼロにするには?
「口臭を発生させないためには、硫化水素を発生させる原因となる細菌をゼロにすればいい」と思うかもしれませんが、人間の口の中には誰でも必ず一定数以上の細菌がいます。特に口臭が気にならない人の口の中にも、細菌はたくさん存在しています。
結論から言うと、口の中の細菌をゼロにするのは不可能です。口の中には悪さをする細菌だけでなく、良い働きをしてくれる細菌も存在し、それらが共存しています。特定の細菌が極端に増えたりすることがないようにすることで、口の中の病気や口臭を防ぐことができるでしょう。
緊張しているときやストレスを感じたとき、寝起きなどは、唾液が不足して口の中が乾燥しやすいため、細菌が繁殖しやすく、誰でも口臭が発生しやすくなります。口の中の衛生管理を行うことはもちろん、唾液を十分に分泌させるなど、細菌が繁殖しにくい口内環境を作ることが大切でしょう。
硫化水素の濃度はどのくらいで口臭として感じられる?
臭いの感覚というのは人によってまちまちで、臭いに敏感な人もいれば、あまり気にならない人もいます。臭うかどうかは、主観的による部分がかなりあるでしょう。
このため、「臭うかどうか」を判定する場合には、専用の機器でその臭いを検知できる最低濃度である検知閾値と、その臭いの質やどのような臭いなのかが認識できるようになる濃度である認知閾値の2種類の閾値が用いられます。
成分 |
検知閾値(ppm) |
アンモニア |
1.5 |
硫化水素 |
0.00041 |
メチルメルカプタン |
0.00007 |
たとえば、硫化水素の検知閾値は0.00041ppm(v/v)と非常に低く、数値上はごくわずかな臭いであっても嗅覚が感じ取るように見えます。
表の数値からもわかるように、硫化水素の検知閾値はアンモニアの約1/3600です。アンモニアの約1/3600の濃度で、硫化水素は検知できるということになります。
会話中で臭いを感じるのは、臭気ガスの濃度が非常に高いということ
日常生活で他人の口臭を感じる場面として多いのは、会話をしているときなどです。しかし、こうした場面で相手の口に鼻を近づけて嗅ぐようなことはまずありません。実際に口臭として感じられるのは、閾値よりもずっと高い数値を示す強い臭気の場合が多いです。
さらに、日常生活では自然風や空調の影響を受けますので、会話をしている相手の呼気の臭いを直接嗅ぐことはめったにありません。反対に、日常会話で明らかに分かるレベルの口臭があるようなら、硫化水素をはじめとする呼気中の臭気ガスの濃度が非常に高いことになります。
呼気中の硫化水素を測定するには?
呼気中にどれだけの硫化水素が含まれているかは、口臭測定器で調べることができます。口臭測定器は、呼気中に含まれる臭気ガスを三大ガス(硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイド)に分離し、それぞれの濃度を数値化します。口臭測定器には種類がありますが、オーラルクロマやブレストロンが一般的でしょう。
測定方法は機器により異なりますが、オーラルクロマでは、シリンジ(注射器)を使って採取した呼気を口臭測定器に注入することで、自動的に測定される仕組みとなっています。
硫化水素による口臭を改善するための3つの方法
硫化水素による口臭を防ぐには、口の中を清潔に保つことが最大の予防になります。具体的にどのようなことに注意すればいいのか、対策方法を見ていきましょう。
毎日の歯磨きが基本
口腔内で硫化水素が発生する主な原因はプラークです。プラークは細菌が大量に集まってできていますので、プラークが溜まるのを防ぐには丁寧に歯磨きをするのが基本になります。
口臭が気になる人がマウスウォッシュで口をゆすいだり、ガムを噛んだりすることがありますが、ブラッシングによってプラークを除去しないことには、根本的な解決策にはなりません。
洗口剤などを使用すると、口の中がスッキリするので汚れが落ちたような感覚になるかもしれませんが、プラークはブラッシングにより機械的に除去する必要があり、うがいで除去することはできません。
1本1本の歯をていねいに磨くようにして、磨き残しがないように心がけましょう。また、歯ブラシが届きにくい奥歯にワンタフトブラシを使用したり、歯と歯の間に歯間ブラシやデンタルフロスを使用したり、歯ブラシの他に補助清掃器具を使用することが有効です。
舌苔を掃除してきれいにする
舌の表面はざらざらしているので、汚れがつきやすいです。鏡で舌を見たときに、表面が白くなっている場合には、舌苔(ぜったい)とよばれる舌の汚れが付着している可能性があります。
舌苔には細菌が無数に住みつき、口臭の原因となります。定期的に掃除をして、汚れを除去する必要があります。舌の汚れを除去して口の中の細菌数を減らすことで、口臭を改善できるでしょう。
しかし、舌苔を取るために普通の歯ブラシを使わないようにしましょう。歯ブラシの毛は舌の表面を磨くには固すぎるため、舌の表面を傷つけてしまう恐れがあるからです。
舌の粘膜はとてもデリケートなので、舌専用ブラシを使い、舌の表面を軽く撫でるようにして掃除します。舌に負担をかけずに汚れを除去することが大切です。
歯科医院で定期的に歯石を取ってもらう
普段から丁寧に歯を磨いているつもりでも、口の中の汚れを完全に除去することはなかなかできないものです。だれでも磨き残しはありますし、それが元となって細菌が繁殖してしまいます。
プラークが付着したまま時間が経過すると、石灰化されて歯石となり、歯にこびり付いてしまいます。歯石になってしまうと、歯ブラシでは除去できません。専用の器具で除去してもらう必要があります。
特に、歯ブラシの使い方によって磨き残しやすい部分があると、集中的に歯石が付いてしまうことがあるため注意が必要です。歯石の表面はざらざらしているため、さらにプラークが付きやすい状態をつくってしまいます。
自分で除去できない汚れを取ってもらうことはもちろん、病気の早期発見のために、定期的に歯科を受診することは大切なことです。病気の予防や将来に歯を残すことにもつながります。口臭を予防・改善しながら、口の中の健康を維持していくことが大切でしょう。
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