鼻炎で口臭が発生する原因と対処法
風邪をひいた際や、季節の変わり目などに起こりやすい症状が鼻炎です。鼻炎による鼻づまりは大変辛く、経験をした方にしかわからないものではないでしょうか。「何回かんでも鼻水が止まらない」「鼻が詰まって眠れない」など、鼻炎は生活の質を大きく低下させます。
実は、鼻炎になると鼻づまりの症状だけではなく、口臭にも影響を及ぼす場合があります。今回は鼻炎で口臭が発生してしまう原因とその対処法について詳しく解説します。
鼻炎の種類は様々です
鼻炎とは、鼻の粘膜に起こる炎症症状を指します。炎症は細菌や花粉などの敵から身体を守るための反応なので、そんなに悪いことではありません。抗炎症剤で症状を抑えないことで治りが早くなる場合もあります。
しかし、アレルギーなどで過剰に反応しすぎると、鼻水が多く分泌されたり、鼻づまりが起きたり、クシャミが出たりと、症状の重さによっては生活に支障が出る場合もあります。
「鼻炎」と一言でいっても、様々な種類のものがあります。「急性鼻炎」と「慢性鼻炎」に分類して見てみましょう。
急性鼻炎
一時的に重い症状が現れるのが急性の鼻炎です。細菌やウイルスによるものが多く、風邪やインフルエンザにかかった際に現れます。
細菌やウイルスなどの敵と身体を守る免疫細胞の白血球などが闘うと、炎症が起こります。炎症の5つの特徴は「発赤」「発熱」「腫脹」「疼痛」「機能障害」です。
「身体を守らなきゃいけない」とシグナルを感じて、ヒスタミンやセロトニンなどの化学物質が放出されると、毛細血管が広がって血流がアップします。鼻の内側の粘膜が熱を帯びて赤くなり、ヒスタミンは分泌神経を刺激して、ばい菌を洗い流そうと鼻水の分泌量を増加させます。
毛細血管が広がると、血管の壁を作っている細胞と細胞の間に隙間ができるので、白血球や様々な細胞が集まってきてむくみが起こります。むくみが起こると鼻腔の粘膜が腫れ、空気の通り道を狭くしてしまい、時には塞がってしまうこともあります。このむくみが鼻づまりを引き起こしています。
さらに、ブラジキニンなどの発痛物質が分泌されることで痛みの神経が刺激され、ヒリヒリとした痛みを感じると、呼吸や嗅覚など鼻の本来の機能が損なわれます。
また、敵が細菌やウイルスの場合は、結果として細菌や白血球の死骸が生じます。これが膿の正体です。膿が鼻水に混じると、鼻水の色が黄色~緑色に変化します。
鼻をかんだ時にティッシュを見てみて、透明な鼻水ではなく、色がついている場合は膿んでいる可能性が高いため、抗菌薬を服用する必要があります。
慢性鼻炎(アレルギー性鼻炎など)
急性鼻炎に対して慢性鼻炎では、比較的症状が軽い一方、継続性があります。原因がアレルギーや、日常に潜んでいるものの場合は、慢性鼻炎というより過敏症と呼ぶこともあります。
慢性鼻炎には、以下のように様々な種類が挙げられます。
肥厚性鼻炎
「短期間に何度も風邪をひいてしまう」、「鼻の真ん中の鼻中隔が曲がっている(鼻中隔湾曲症)、「アレルギー性鼻炎がずっと治らない」といったケースでは、鼻炎が慢性化して鼻腔粘膜の腫れがとれないことがあります。これを肥厚性鼻炎といいます。
鼻水が喉に垂れてくる後鼻漏(こうびろう)が起こる場合もあります。後鼻漏が起こると、口の中がネバネバして口臭が生じることがあります。この場合、薬で治療をするか、外科手術で粘膜の一部を切除する必要があります。
委縮性鼻炎
花の粘膜が薄くなり、乾燥を感じるのが委縮性鼻炎です。「臭鼻症(鼻臭症)」とも呼ばれます。
萎縮性鼻炎では、鼻の中にかさぶたができるのが特徴です。発症原因は明確になっていませんが、ビタミンAやビタミンDの不足、鉄欠乏性貧血との関連性が疑われています。
乾燥性鼻炎(ドライノーズ)
乾燥性鼻炎は、エアコンの使用などで空気が乾燥することで、粘膜に湿潤性がなくなり、乾いて正常な機能が失われて鼻がムズムズ、ヒリヒリする症状です。加湿器の設置や蒸しタオルを鼻に当てる、マスクを着用するなどの方法で、症状が楽になります。
冷気吸入性鼻炎
冬に冷たい空気を吸い込むと、鼻がヒリヒリすることがあります。寒いところにずっといると、鼻の頭が赤くなり、鼻水が出てきます。これが冷気吸入性鼻炎です。冬アレルギー、スキーヤー鼻と呼ぶこともあります。
味覚性鼻炎
ラーメンや汁物など熱いものを食べると鼻水が出てきます。これは熱が刺激となって、味覚性鼻炎が起こっているためです。
薬剤性鼻炎
鼻詰まりに対して薬を処方してもらうと、トラマゾリン点鼻薬などの血管収縮剤が出されることがあります。血管収縮剤は即効性があり、肥厚性鼻炎などを除けばすぐに効果が実感できるため、鼻が詰まるとすぐに使いたくなります。
しかし、この薬は長期間使い続けていると効果が薄くなってきます。また、薬がないと常時鼻が詰まるようになってしまいます。これを薬剤性鼻炎と呼びます。
薬剤性鼻炎が悪化した場合は、手術やレーザー治療を行わなければならなくなる場合もあります。
妊娠性鼻炎
妊娠性鼻炎は、主に出産前6週間から出産後2週間以内に起こる鼻炎です。女性ホルモンの変化が原因だと考えられていますが、発症するまでの詳しいメカニズムは明らかになっていません。
安定期であれば、点鼻薬などで対症療法的に治療を行いますが、産後から数週間経過すると落ち着くことが多いです。
アレルギー性鼻炎
慢性鼻炎の中で最も多いのが、このアレルギー性鼻炎です。急性鼻炎では細菌やウイルスが発症原因となりますが、アレルギー性鼻炎では稲やヒノキ、スギなどの花粉や埃・ダニなどのハウスダストが主な原因となります。
花粉の場合は20代以降に発現することが多く、春・夏・秋に一時的に起こります。片やハウスダストの場合は1年間を通して症状が出現し、10代から症状が見られます。
原因は異物を追い出そうとして、身体が反応しすぎてしまう炎症の過剰反応によるものです。ただしクシャミや鼻水、鼻詰まりの症状は急性鼻炎よりも軽い傾向があり、痛みではなく痒みを感じます。
なお、アレルギーは併発することが多く、アレルギー性鼻炎の方はアトピー持ちであることがよくあります。
鼻炎が口臭の原因に!?考えられる理由と対処法
口臭の原因は必ずしも口腔内にあるとは限りません。鼻と口は見た目では別々の器官に見えますが、体内ではひとつの腔でつながっており、鼻炎は口臭の原因に十分なり得るのです。
では、鼻炎のどういった症状で口臭が発生するのでしょうか。鼻炎による口臭の原因と対策方法を詳しく解説していきます。
口呼吸で口腔内が乾燥している
鼻炎により鼻づまりが起きていると、鼻呼吸がしづらくなるために、口呼吸をする癖がついてしまいます。長く口呼吸をしていると、口腔内の水分が蒸発してどんどん乾き、ドライマウスの状態に陥ります。
ドライマウスとなり唾液が減少すると、細菌を洗い流す水分が減り、細菌が増殖するとともに口臭の原因となる「揮発性硫黄化合物(VSC)」の産生が増えます。結果、舌の表面に舌苔(ぜったい)という汚れが溜まり、不快なニオイが強くなります。
対策は?
一番の対策は、鼻炎を改善して鼻呼吸を意識することです。口が乾いていると口臭の発生だけでなく、虫歯や歯周病にもなりやすくなり、症状が悪化すると、揮発性硫黄化合物が増えてますます口臭が強くなります。
また、唾液が少ないと、舌の表面にある味蕾という味を感じる器官に味物質が届けられず、食事も美味しく感じられなくなってしまいます。
セルフケアとしては、食事でよく噛む、日頃からガムを噛むなどして唾液の分泌量を増やすことも効果的です。
蓄膿症に悪化している
蓄膿症(副鼻腔炎)は、細菌感染などによって炎症が起こり、顔面の骨の空洞である副鼻腔に膿の混じった鼻水が溜まる病気です。膿んだ鼻水が喉の方に落ちてきて後鼻漏が起こると、膿のニオイが口臭として感じられるようになってしまいます。
対策は?
蓄膿症による口臭は、蓄膿症の治療が根本的な対策法となりますので、悪化する前に早めに治療を受けることが肝心です。
蓄膿症では主に鼻吸引や鼻洗浄、抗生物質を用いた薬物療法を行いますが、これらの処置で症状が改善されないようであれば、外科処置を行う場合もあります。
抗ヒスタミン薬の副作用(口渇)
アレルギーを抑制する目的として処方されるのが、アレロックなどの抗ヒスタミン剤です。抗ヒスタミン薬は副作用で眠気を引き起こすため、ドリエルなどの睡眠薬として使われる場合もあります。
抗ヒスタミンの副作用には眠気のほか、口腔内が乾燥してしまう口渇があります。抗ヒスタミン薬の副作用で口腔内が乾燥すると、唾液が減って口臭が発生しやすくなることがあるのです。
対策は?
抗ヒスタミン薬には様々な種類のものがあり、中には副作用が抑えられている薬剤も存在します。
また、副作用が強く出るか弱く出るかは個人差が大きいため、もし口が乾きやすくなるのであれば、薬を処方した先生にその旨を伝え、別の種類の薬がないか相談してみるのもよいでしょう。
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