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    【歯髄炎の症状】進行度別の種類と痛みの出方/放置の危険性

    【歯髄炎の症状】進行度別の種類と痛みの出方/放置の危険性

    「温かいものでしみる」「冷たいもので痛みが出る」という人は要注意!普段痛くなくても、神経に炎症が起きていることも…。意外と知らない歯髄炎についてご紹介します。

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  • 更新日:2016年09月30日

進行度で異なる歯髄炎の種類と主な症状

冷たいもので歯がしみる場合、「虫歯かもしれない」と予想する人も多いでしょう。軽い虫歯であれば、虫歯の部分だけを削って詰め物をします。でも、熱いものがしみる場合は要注意です。虫歯が進行した「歯髄炎」になっている可能性が高くなります。
歯髄炎になると、歯を削って詰め物をするだけでは治りませんし、ひどくなると激痛が走る場合もあるため要注意です。

歯髄炎とは?

歯科医院で歯をチェックしてもらった時に、「虫歯が深いので、神経をとらないといけないかもしれない」という診断を下された経験はありませんか?虫歯が進行して、神経の近く、あるいは神経に虫歯が達している状態を「歯髄炎」といいます。

歯髄とは?

そもそも、歯髄とは何でしょうか?歯髄とは、歯に通っている神経のことです。歯の根の中には根管という神経の通り道があり、その中に歯髄が通っています。

歯髄は白色やピンク色をしていて、歯の種類によっては通っている本数が違います。前歯や犬歯(糸切り歯)は1本であることが多いですが、奥歯の大臼歯になると上顎で3本程度、下顎で4本程度と、個人差があります。
また、人によっては1本の歯髄から細く小さな神経がたくさん分かれています。これを側枝(そくし)と言いますが、側枝が多いほど、複雑な形態の根管になります。

歯髄炎は歯髄に起こる炎症であり、虫歯が歯髄にまで達している状態です。

【歯髄炎の主な5つの症状】種類・進行段階別

虫歯のイメージといえば「痛み」ですが、歯髄炎は最も典型的な歯の痛みを引き起こす病気といえるでしょう。「歯が痛い」と言って歯科医院を訪れる人の多くは、歯髄炎を抱えています。歯髄炎の主な症状は、基本的には「痛み」ですが、病状の進行具合によって少しずつ異なります。段階を追って症状別に詳しく見ていきましょう。

1.冷たいもので痛い・しみるが、普段は症状がない

比較的軽度の歯髄炎(歯髄充血)の状態です。冷たい水やアイスクリームで歯がしみたり、痛みを感じます。痛みは数秒~長くても数分以内にすぐに消え、何もしなければ痛みを感じない場合が多いです。

2.何もしなくても痛みが起こるが自然に治まる

歯髄充血の次の段階である急性単純性歯髄炎の状態です。急性単純性歯髄炎の初期(一部性)であれば、普段は痛みを感じません。しかし、後期(全部性)になると何もしていなくても痛みを感じます。
冷たいもので感じた痛みがすぐに消えず、数時間持続したりします。

3.温かいものがしみる・ズキズキ痛い

痛みはピークに達し、温かいものですら痛みを感じます。何もしていなくても、血管の脈拍に合わせるようなズキズキとした拍動性の痛みが生じます。夜、お風呂に入ってベッドに入ると体温が上昇するため、痛みが増すことがあります。これを夜間疼痛といいます。
このような症状が起こっている場合、急性化膿性歯髄炎の状態になっている可能性が高いでしょう。

4.虫歯の穴に食べ物が詰まるとズキズキと痛む

食べカスが虫歯の箇所に詰まることによって強く痛みが生じるのは、急性歯髄炎が慢性化した、慢性潰瘍性歯髄炎という状態になっている可能性が高いです。
虫歯の穴があることで歯髄腔の内圧が上がらず、普段は症状が出ないのですが、食べカスなどによって穴が塞がると内圧が高まると、急性発作により激痛が現れるのです。

5.虫歯の穴から歯茎が見える・ポリープができる

虫歯の穴の中から歯茎が盛り上がっている、ポリープ状のものが歯茎の中から見えるのは、慢性増殖性歯髄炎の状態になっている可能性が高いでしょう。慢性増殖性歯髄炎は、歯髄が肉芽(にくげ)というピンク色のポリープ状に変化します。痛みはあまり感じません。若い人に多く、子供だと乳歯の奥歯(乳臼歯)に見られることがあります。

虫歯の進行~歯髄炎に進行するまで~

激痛が生じる場合もある歯髄炎ですが、「あっという間に歯髄炎にまで進行してしまった…」という人も少なくないようです。しかし、そうなる前に気付くチャンスがあったはずです。
虫歯が歯髄炎に達するまでの進行を確認してみましょう。気になる虫歯がある場合には、どの段階であっても早めに受診することが大切です。

初期う蝕

エナメル質の段階の虫歯であれば、まだ十分に治る余地があります。「初期う蝕」と呼ばれる状態なら、削る必要さえありません。歯磨きなどでプラークコントロールを安定させることによって、唾液の力によって歯が再生されます。

C1(う蝕第1度)

C1(う蝕第1度)

初期う蝕よりも少しだけ進んでいたら「C1(う蝕第1度)」という状態になります。この場合は経過観察か、虫歯に感染した歯の部分だけを削って、詰め物をすることもあります。

エナメル質が虫歯になると、歯の表面が白色~茶色に着色します。しかし、エナメル質は痛みを感じないので、よく観察しないと虫歯の発見が難しいです。この段階で虫歯が放置されてしまうと、その下の象牙質という場所へと進行してしまいます。

C2(う蝕第2度)

C1(う蝕第2度)

C2(う蝕第2度)の段階になると、虫歯は象牙質に達します。象牙質は痛みを感じるので、ここでやっと虫歯に気付く人も多いでしょう。歯の表面に穴があく場合もありますが、穴の大きさで虫歯の進行度を判断することは良くありません。小さな穴でも、穴の奥で虫歯が大きく広がっている場合もあるからです。
象牙質の痛みを放置してしまうと、いよいよその下の歯髄に進行します。C3(う蝕第3度)の段階です。

C3(う蝕第3度)

C1(う蝕第3度)

歯髄に直接虫歯菌が感染するので、強い痛みが出てきます。歯髄は神経ですから、今までの虫歯のように削って治すことができません。痛みを除去するため、そして感染源を絶つため、神経を抜く治療(抜髄)が必要になります。

痛みがあっても、歯医者に行くのが嫌で我慢してしまう人も多くいます。C3の状態を放置すると、いずれ歯髄が死に、あまり痛みを感じなくなります。さらにそのまま放っておくと、根尖性歯周炎という病名が付きます。

C4(う蝕第4度)

C1(う蝕第4度)

進行した虫歯は自然治癒することはありません。虫歯菌は無くならないので歯をどんどんむしばんでいくのです。
歯が溶かされてボロボロになった状態をC4(う蝕第4度)といい、抜歯するしか手がなくなります。

可逆性歯髄炎と不可逆性歯髄炎

歯髄炎を大きく分類すると、可逆性歯髄炎不可逆性歯髄炎に分けられます。

可逆性歯髄炎はその名の通り、神経を抜かなくてもまだ回復する余地のある歯髄炎のことです。歯髄炎のうちの「歯髄充血」という段階で、炎症によって歯髄内の毛細血管が拡張しています。症状としては冷たいものがしみるくらいで、何もしなければ痛みを感じることは少ないです。

可逆性歯髄炎が治らないと、不可逆性歯髄炎に移行します。ハッキリとした痛みが現れ、何もしていなくても痛みを感じます。神経を抜かないと治らないので、不可逆性といいます。

歯髄炎を放置するとどうなる?

残念ながら歯髄炎を放置してしまうと、「歯髄壊死」といって歯髄が死にます。知覚を司る神経が死んでしまうので、全ての痛みが鎮まり、一見治ったかのように感じます
一度死んだ歯髄は、回復・再生することはないので、痛みなどの症状は出ません。しかし、感染菌はそのまま居座り続けているので病状は進行する一方です。

歯髄が腐る!?歯髄壊疽とは?

歯髄壊死の後は、歯髄は腐敗する「歯髄壊疽」の状態になります。虫歯による穴が大きい場合、強い腐敗臭が口臭として現れます。また、歯の色が白色から黄色~灰色に変化します。

歯を支える骨が溶かされてしまいます

その後は根尖性歯周炎に移行します。根尖性歯周炎が進むと、歯以外に炎症が広がるので、再び痛みや違和感が現れます。歯を支える顎の骨(歯槽骨)が溶けてしまうなど、さまざまな悪影響が及ぶため、抜歯が必要になる場合もあります。噛むと痛みが生じる、歯茎が腫れるといった症状も起こります。

歯根の先端にが溜まり、進行すると歯肉の中から口腔内に膿が出てくる(おできのようなフィステルができる)ようになります。口の中に膿が出るようになるため、口臭の原因にもなり得ます。

虫歯でないのに歯髄炎になることも!

虫歯が全くないという人でも、歯髄炎になることがあります。硬いボールが歯に当たって外傷が起きたり、薬剤で歯髄が間接的に刺激されたりした場合です。

歯を強くぶつけた場合、破折などがなく見た目に影響はなくても、歯の奥で歯髄にダメージが加わっている場合もあります。見た目だけで判断せず、何らかの症状・違和感がある場合には歯科医院で相談しましょう。

歯髄炎によって頭痛が生じることも?

歯髄炎によって頭痛が起きたり、歯髄炎の治療後に頭痛が起きたりするケースも稀にあります。

もし、歯髄炎の治療中や治療後に頭痛が生じたら、歯科医師に相談してみてください。歯髄炎に限らず、その他の歯や顎の病気でも頭痛が生じることがあるため、鑑別診断が必要になってきます。

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