肺膿瘍とはどんな病気?原因/予防/治療法
皆さんは「肺膿瘍」という病気について聞いたことがあるでしょうか。肺膿瘍とは「肺化膿症」「化膿性肺炎」「肺壊疽(はいえそ)」とも呼ばれる呼吸器の病気です。
肺膿瘍になると肺が細菌感染して肺組織に炎症が起こり、膿が溜まってしまいます。その一症状として口臭が発生することも少なくありません。
今回は肺膿瘍の原因や症状、肺膿瘍で口臭が発生するメカニズム、予防・治療法について詳しくご紹介していきます。
肺膿瘍とは?
肺膿瘍(肺化膿症)とは、肺が細菌感染して増殖し、炎症を起こすことで肺組織の一部が破壊され、壊死して広がった空洞に膿が溜まってしまう状態のことを言います。
肺膿瘍の症状
肺膿瘍を発症すると、高熱が出たり、せきや痰が出たり、吐血したりといった症状が現れます。また、肺を包む胸膜にまで炎症がある場合は胸の痛みを感じることもあります。
さらに肺膿瘍が進み重症化すると、呼吸が苦しく感じられたり、体重が減ったり、チアノーゼ、意識障害などの重篤な症状を引き起こします。
なお、高齢者の方や寝たきりの方は症状の発現が緩やかなために、発見が遅れることもあるため注意が必要です。
肺膿瘍の診断方法
肺膿瘍に罹っているかどうかは、主に胸部エックス線や胸部CTによる画像検査によって診断されます。肺の中に空洞が認められ、さらに空洞の中に二ボーという鏡面形成像が認められると、肺膿瘍であると診断されます。
また、血液検査によって血液中の白血球や炎症反応の増加がないかを調べたり、吐き出される痰の中に肺膿瘍を引き起こす原因菌がいないかどうかを調べたりすることもあります。
肺膿瘍の原因
肺膿瘍は、肺に細菌が感染して炎症を起こすことが原因となります。原因菌には多くの種類がありますが、主なものとして大腸菌やクレブシエラ菌、嫌気性菌、緑膿菌、グラム陰性桿菌(かんきん)、黄色ブドウ球菌などが挙げられます。
中でも、肺膿瘍の原因菌がグラム陰性桿菌や黄色ブドウ球菌であった場合、急激に症状が出ることが多いです。
これらの菌は空気中のどこにでもいる細菌類ですが、免疫力の低下や誤嚥の繰り返し、糖尿病、大量の飲酒などの要因で細菌に感染しやすい状態になっていると、口から侵入した細菌が気管支炎や肺炎を引き起こし、さらに肺膿瘍へと進展することがあります。
なお、結核の場合でも肺に空洞が見られるため、結核菌かどうかの鑑別も行うこととなります。
また、膿瘍が肺ではなく別の部位で発生し、血液で運ばれて肺に到達する「血行性感染」と呼ばれるケースや、皮膚や尿路・胆道からの感染で発症する場合もあります。
肺膿瘍で口臭が起こることも…
口臭にはいくつかのタイプがありますが、「肉の腐ったようなニオイ」「生臭いニオイ」と形容される口臭を放っている場合、肺の病気が口臭の原因である可能性も考えられます。
肺膿瘍は肺の中で炎症が起こり、炎症によってできた空洞に膿が溜まっている状態です。膿は白血球や細菌の死骸が集まったもので悪臭を放ちます。その臭いが気管を通って口や鼻から放出されると、不快な臭いとして認識されます。
また、肺膿瘍では喀痰(かくたん)と呼ばれるネバネバとした膿性、あるいは血混じりの痰が症状のひとつとして挙げられますが、この痰自体も腐敗臭を放ちますので、口臭を悪化させる一因となることがあります。
一般的に口臭を自覚している方は、歯磨きやマウスウォッシュといった口腔ケアに目を向けがちですが、口腔内のケアに気を取られ、臭いを別の香りでカバーしているうちに、より大きな病気を見逃してしまうことのないよう注意が必要です。
一時的な口臭であれば、ストレスや体調、食べたものなどによって誰にでも起こり得ます。しかし、「長い期間にわたって独特の口臭がなくならない」「口腔ケアに気を配っているにも関わらず口臭が強くなっている」といった場合は、病気による口臭である可能性も考えられます。念のため医師の診断を受けることをおすすめします。
肺膿瘍の予防・治療法
肺膿瘍の初期症状は肺炎と似ており、発汗や食欲不振、発熱、疲労感、痰の絡む咳が出るといった症状が見られます。
患者が衰弱していたり、別の病気が原因で免疫機能が極端に低下していたりする場合には治療法を考慮する必要がありますが、ほとんどの患者は治癒します。肺膿瘍の可能性が疑われる場合には、悪化する前に早期に適切な治療を受けることが大切です。
ここでは、日頃から肺膿瘍を予防する方法、肺膿瘍の治療法を解説していきます。
予防法
肺膿瘍は様々な要因が複雑に絡み合って発症することがある病気です。予防するには、以下のことに注意する必要があります。
1.免疫力の向上
肺膿瘍は特定の原因菌によって発症するのではなく、炎症を引き起こす可能性のある複数の細菌が引き金となって発症します。身体の免疫力が十分であれば、これらの細菌の感染力にも負けることはないのですが、免疫力が低下していると肺膿瘍を引き起こしやすくなります。
バランスの取れた食事や十分な睡眠、適度な運動は、免疫力を高めて病気に罹りにくい身体づくりにつながります。
反対に、喫煙や過度な飲酒習慣などは免疫力を低下させる原因となります。日常生活における危険因子はできるだけ取り除き、身体の免疫力を保ちながら肺膿瘍を予防しましょう。
2.口腔ケア
肺炎や肺膿瘍の原因となる細菌は、口から侵入して上気道に付着・増殖します。細菌が下気道へ落下して肺胞腔へ入り、増殖することで肺炎や肺膿瘍を引き起こします。
口腔内が不衛生な状態が続くと、口の中で細菌が増殖しやすい環境ができてしまうため、毎日の歯磨きなどのセルフケアを入念に行い、口腔内を清潔に保つことが大切です。
また、虫歯や歯周病も細菌感染によって引き起こされる病気です。長く放置していると、歯根部や顎を通る血管に細菌が侵入し、全身へ広がることで全身の臓器に炎症を起こす可能性があります。
虫歯や歯周病など、細菌が関わる症状にかかっている方は歯科医院を受診し、それらの病気の治療を進めていくことも重要です。
3.基礎疾患の治療
糖尿病に罹患している方は血糖値が上昇しやすく、白血球の働きや免疫反応が低下し、感染防御機構が破綻しやすい状態になっています。同時に肺膿瘍の原因となる細菌を防御するための免疫力も低下し、糖尿病との合併症として肺膿瘍を併発する可能性があるのです。
基礎疾患の治療を行うことが、結果的に肺膿瘍など別の病気を予防することへつながります。糖尿病のような基礎疾患のある方は、まずは基礎疾患の治療を行い、医師の指導に適宜従いましょう。
治療法
肺膿瘍の治療には、抗生物質を用いることがほとんどです。多くの場合、静脈注射によって原因菌に対応する抗生物質を長期にわたり投与します。症状が落ち着いたら、点滴から経口服用に切り替えることになります。
症状が落ち着いたかどうかは、胸部エックス線検査で膿瘍が消えたかどうかを確認することで診断されます。そのため、抗生物質の投与は数週間から数ヶ月にわたることもあり、通常の肺炎よりも長い治療期間が必要となります。
患者の経過がよくない場合や、膿が大量に溜まってしまっている場合などは、胸から管を入れて膿を吸い出す治療(体位ドレナージ)や、外科手術を行って感染した肺組織を切除したりすることもあります。
なお、肺膿瘍で病院を受診する際は、呼吸器の専門医のいる呼吸器内科を受診するとよいでしょう。
この記事に関連する記事
-
尿毒症の症状11/アンモニアのような口臭が発生することも!
2016年08月12日 尿毒症による症状とは? -
【尿毒症の治療方法】薬は効果ある?食事療法/人工透析
2016年08月24日 尿毒症の治療方法とは? -
魚臭症|魚くさい口臭になる病気の原因/病院/治療法
2016年02月26日 魚臭症/トリメチルアミン尿症 -
シェーグレン症候群の治療は対症療法!乾燥症状への対処法
2016年08月12日 シェーグレン症候群の治療 -
腎臓の不調が口臭の原因に!?腎疾患による症状と改善策
2016年10月03日 腎臓と口臭の関連性は?