シェーグレン症候群の症状はどんなものがある?
「全身が乾く病気」としてテレビで取り上げられることも増えていることから、名前を聞いたことがあるという方も多いかもしれませんが、皆さんは「シェーグレン症候群」という病気をご存じでしょうか。
シェーグレン症候群はドライマウスになる代表的な疾患としてとても有名です。
「最近どうも目が乾く」「口がパサパサする」などの症状がある人は、ぜひこのページでシェーグレン症候群の症状を詳しくチェックしてみてください。
シェーグレン症候群とは?
スウェーデンの眼科医であるヘンリック・シェーグレン博士によって名付けられたシェーグレン症候群は、「自己免疫疾患」の代表的疾患です。
自己免疫疾患というのは、自分の免疫がバイ菌などの敵ではなく、間違って自分を攻撃してしまう病気で、その他の身近な自己免疫疾患には関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)などがあります。
関節リウマチは関節の内側にある滑膜と呼ばれる部分に腫れや痛みが起こり、こわばりを感じます。全身性エリテマトーデスは全身の臓器が侵される疾患です。
二次性と一次性の分類
シェーグレン症候群は、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどを合併して起こす二次性シェーグレン症候群と、シェーグレン症候群特有の乾燥症状のみで、合併症を伴わない一次性(原発性)シェーグレン症候群の2種類に分類されます。
なお、二次性シェーグレン症候群として最も合併しやすいのは関節リウマチで、次に全身性エリテマトーデス、次いでその他の疾患(内臓や皮膚が硬くなってしまう強皮症など)と続きます。
シェーグレン症候群の患者数はどれくらい?男女比は?
1993年に厚生労働省が発表した調査結果によると、年間の受療患者数は17,000人で、発症率は圧倒的に女性の方が高く、その男女比は約1:14と言われています。
また、年齢別では40〜60代に多く見られ、特に50代にピークを迎えやすいです。
患者数は年々増加傾向にあります
日本での患者数は年々増加し、2002年の時点では年間78,000人と言われています。
しかし、この数字は他国と比較すると明らかに低いことから、未受診の潜在的患者を含めると、さらに患者数は増加するものと考えられています。
シェーグレン症候群の症状8つ
では、全身にわたるシェーグレン症候群の症状について、どんなものがあるのか詳しく確認していきましょう。
1.口や喉の乾燥
自己免疫現象によって口腔内の唾液の分泌が低下することで、口が乾き食事がしづらくなり、特にパンやクラッカー、おせんべいなど水分の少ないものが食べづらくなってしまいます。この乾燥症状は喉にも及ぶことから、声がかすれて出にくくなることもあります。
また、唾液の減少により虫歯ができやすくなるといった問題も懸念されます。
2.舌がツルツルになる
舌表面にある舌乳頭(ぜつにゅうとう)という突起が萎縮してしまい、舌が赤くツルツルと平坦になる平滑舌という状態になることがあります。
3.耳下腺が腫れる
シェーグレン症候群により耳下腺などの唾液腺が腫れると、頬がパンパンに膨らんだように見え、時に痛みを伴うこともあります。
耳下腺の腫れはおたふく風邪でも同様の症状が見られますが、シェーグレン症候群は腫れを繰り返すのが特徴的です。
4.リンパ節が腫れる
首などをはじめとする全身のリンパ節がポッコリと腫れることがあります。稀に悪性のリンパ腫を合併しているケースがありますので、症状が落ち着かない場合には早めに専門医を受診しましょう。
5.目の乾燥
涙腺からの分泌には、副涙腺から生じる基礎分泌と種類腺から生じる反射性分泌の2種類があります。
基礎分泌は眼が乾かないように常に眼球を潤すための涙、反射性分泌は痛みを感じたり、感情的になったり、異物が眼に入ったりしたときに反射的に出る涙のことです。
軽度のシェーグレン症候群の場合には反射性分泌は保たれますが、基礎分泌が減少して眼が乾きやすくなります。
さらに重度の場合には反射性分泌も減り、目にゴミや汚れが入ったときに涙でスムーズに洗い流すことができないことから、目の結膜や角膜に傷がつきやすく、視力の低下にまで及んでしまいます。
また、コンタクトの方はコンタクトをつける際にゴロゴロして着けづらくなってしまいます。
6.胃炎
シェーグレン症候群は、唾液腺や涙腺だけでなく、外分泌腺という汗や消化液を出す器官全体に影響を与えることもあります。そのため、胃酸が出にくくなり胃炎を引き起こしてしまうこともあります。
7.鼻の乾燥
鼻の中の乾燥が加速することで鼻粘膜が弱り、鼻血が出やすくなってしまうことがあります。
8.皮膚に紅斑が出る
シェーグレン症候群の皮膚症状として、環状紅斑という顔に堤防のような赤く丸い模様や、しもやけのような凍瘡様紅斑がまだらに出たり消えたりします。これらの紅斑はSLEでもよく見られる症状です。
シェーグレン症候群と口臭の関係/唾液量の減少で何が起こる?
私達の口の中で分泌される唾液には抗菌作用や洗浄作用が備わっていて、常に口腔内を清潔に保つ役目を果たしています。
また、口腔内の衛生保持だけではなく、味を感じやすくしたり、食べ物を飲み込みやすくしたりといった働きも担っていることから、唾液の分泌をスムーズに保つことはとても重要なことなのです。
しかし、シェーグレン症候群になるとドライマウスやドライアイなどの乾燥症状が起こり、唾液や涙の分泌量が減少します。
唾液の分泌が障害されてしまうと、口の中に残った汚れや細菌などを洗い流すことができませんので、舌や歯に汚れが蓄積してしまいます。
1.舌苔の発生
唾液が洗い流せず舌に残った汚れは、舌苔(ぜったい)と呼ばれる苔状のものとなり、揮発性硫黄化合物(きはつせいいおうかごうぶつ)と呼ばれる硫化水素やメチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどの悪臭を放つガスを生成してしまいます。
2.歯周病の発生
唾液が減少すると歯周病にもかかりやすくなり、これらもイヤな口臭の原因となります。ひどい歯周病になると歯肉が腫れ、歯周ポケットが深くなり、口からドブや硫黄のようなニオイが漂うようになるのです。
また、歯周病患者の口臭からは、特に悪臭の強いメチルメルカプタンが高濃度で検出されることが分かっています。
3.虫歯の発生
ドライマウスになると、歯周病だけではなく、虫歯も発生しやすくなります。
虫歯の場合は、歯や歯根の表面が少し黒いぐらいならすぐ削って詰めものをすれば良いのですが、放置しておくと虫歯は歯根まで進行し、根の先に膿を溜めてしまいます。行き場がなくなった膿は歯茎を突き破ってしまい、口臭が生じます。
なお、虫歯の穴に食べかすが詰まることで、虫歯の穴の中で発酵した食べかすから臭いが発生するケースもあります。
「シェーグレン症候群かな?」と思ったら…
シェーグレン症候群の症状は、その他の疾患にも共通して見られるものが多く、自己判断できるものではありません。
しかし、紹介したシェーグレン症候群の症状に当てはまるものがあるのであれば、シェーグレン症候群の可能性も疑って、早めに病院を受診することをおすすめします。
シェーグレン病では何科を受診すべき?
「シェーグレン症候群かもしれない」と思ったら、自己免疫疾患・膠原病の専門である膠原病内科やリウマチ科、あるいは内科を受診しましょう。
ドライアイなら眼科、環状紅斑なら皮膚科、唾液分泌の低下なら歯科・口腔外科に行ってみましょう。必要に応じて他の科を紹介されることがあります。
「様々な症状が現れており、どの科を受診すべきか迷ってしまう…」という方の場合、唾液量や唾液腺の状態を確認するガムテストや唾液腺造影、血液検査のほか、組織を一部切り取って標本にし、顕微鏡で観察して診断する生検病理組織検査など、複数の検査を組み合わせて行うことあります。
そのため、症状が重ければ、あらかじめ大きな総合病院に行った方がよいでしょう。
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