シェーグレン症候群の治療にはセルフケアが有効!
原因や根本的な治療方法が見つかっていない、指定難病である「シェーグレン症候群」と診断された場合、完治を目指すのは難しいところではありますが、シェーグレン症候群特有の目や口腔内の乾燥などの辛い症状を和らげる方法はあります。
今回はシェーグレン症候群の治療方法について、ドライマウスやドライアイの症状を緩和させる対症療法を中心にご紹介します。
シェーグレン症候群ではどんな治療を行う?
シェーグレン症候群は、通常は異物を攻撃するはずの免疫系が、自身の正常な組織・細胞にまで誤って攻撃してしまう自己免疫疾患(膠原病)の一種です。
身体の中の免疫システムは非常に繊細かつ複雑で、シェーグレン症候群の発症原因や、シェーグレン症候群そのものを治療する方法は未だ確立されていません。そのため、薬の服用や日頃から行うセルフケアなどの対症療法を行うこととなります。
シェーグレン症候群の対症療法は発症部位によって異なります。目や口の乾燥、皮膚の異常(環状紅斑や凍瘡様紅斑)など現れる症状は様々ですが、今回は最も多い症状であるドライマウスとドライアイの症状を和らげる治療法についてご紹介します。
ドライマウスへの対処法
唾液の分泌量が低下してしまうドライマウスの治療法には、以下の方法が挙げられます。
1.薬を飲む
唾液の分泌を促す薬である「サラジェン(塩酸ピロカルピン)」「サリグレン、エボザック(塩酸セビメリン塩)」などを服用するのが一般的です。これらを服用すると、副交感神経が刺激されてサラサラの唾液が出るようになります。
副作用としては汗が出やすくなったり、尿量が増えたり、頭痛やめまいがすることがあります。サラジェンは多汗の副作用が出る場合があるため、脱水症状に陥ることのないよう、こまめな水分補給が必要となります。
病状が進んで活発化している場合には、免疫抑制薬や副腎皮質ステロイド薬などを使用しますが、これらは症状が軽度である場合にはあまり用いられません。
また、漢方薬の場合は、口渇症状に効果があるとされる白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)、麦門冬湯(ばくもんどうとう)などが処方される場合もあります。
2.人口唾液を使う
人口唾液というのは、その名の通り唾液に似た透明な潤滑剤のことです。「スプレー状のものを口の中に吹き付ける」「ジェル状のものを指で塗る」「シートを口の中に貼る」などの利用方法があります。
人工唾液で最も代表的な商品は、サリベートという噴射して使用するスプレータイプの薬です。サリベートはシェーグレン症候群の治療のほか、放射線の照射による唾液腺障害の治療においても用いられています。舌の上や頬の内側、舌下など、まんべんなく噴射することで効果が長持ちします。
サリベートには副作用はまずないとされていますが、皮膚症状や喉の違和感などのアレルギー症状が現れた場合には医師との相談が必要です。
3.セルフケア
唾液の分泌量は、食事や生活習慣の改善によってある程度自分でコントロールすることが可能です。唾液量を増やすためには、以下のような方法を実践してみましょう。
- シュガーレスガムを噛む
- 食事の際にできるだけ多く噛んでから飲み込む
- クッキーなどパサパサしているものは避ける
- アルコール飲料を避ける
- タバコを控える
- 唾液腺マッサージをする
- 睡眠をしっかりとり規則正しい生活を心がける
- 歯磨きの際はフロスや歯間ブラシも使う
- 殺菌作用のあるうがい剤(イソジンやアズノールなど)でうがいをする
- 入れ歯はしっかり洗浄する
4.歯科医院での定期検診
歯磨きをしっかりと行っていたとしても、見えない場所の汚れや歯石は自分で除去することはなかなか困難なものです。特に、ドライマウスの方は唾液量が少ないことから、口臭や虫歯・歯周病などの口腔トラブルが発生しやすい状態ですので、健康な人以上に歯医者さんに通う必要があります。
定期的に歯科検診を受けることで、口腔内の衛生管理をしっかりと行いましょう。
ドライアイへの対処法
目の痛みやかすみ、充血、ゴロゴロ感など、シェーグレン症候群による眼の渇きに対しては、主に3つの対処法があります。
1.点眼液を使う
ドライアイ対策としては、最も手軽で簡単な方法が目薬です。水分を維持するために最適なヒアルロン酸が成分に含まれているものを選びましょう。
また、ドライアイの場合は一日3回以上と、頻繁に使うこととなります。点眼薬には防腐剤が含まれているものがありますが、ドライアイの方は涙の量が少ないため、防腐剤が角膜の表面に残留しやすい状態です。点眼薬には防腐剤が含まれていない使い捨てタイプのものを選ぶとよいでしょう。
2.涙点プラグ挿入術
点眼液の使用だけでは症状が改善されないような重度のドライアイに対しては、涙が出てくる涙点に、シリコンでできた小さなプラグ(栓)を挿入することで涙の排出を防ぐ「涙点プラグ挿入術」という保険適用の手術があります。
ただし、涙点を塞いでしまうため、プラグの挿入に違和感を覚える方も多く、慣れない場合は取り外すというケースも少なくありません。
また、通常は涙で洗い流されるはずの老廃物や異物が溜まりやすい状態となります。その結果、目の炎症や感染症を引き起こしたり、自然に取れてしまったりする可能性も考えられますので、治療を受ける際には十分な検討が必要とされます。
3.セルフケア
「部屋の湿度を保ち乾燥させない」「テレビ・パソコンを長時間見る時はこまめに休憩をとる」など、日頃から目に負担を掛けないような生活習慣を心掛けることも大切です。
また、最近ではフレームのサイドに水のタンクが付いた保湿メガネ(ドライアイ眼鏡)という商品が販売されています。デザインもシンプルで違和感なく掛けられるものが多く、ドライアイ対策としてはもちろんのこと、花粉症やハウスダスト対策としてもおすすめです。
シェーグレン症候群の治療費は?医療費助成はある?
シェーグレン症候群の治療費用については、その患者の病状に対して行う治療内容によっても大きく異なります。
現在、多くの病気の中で指定されている難病は300以上ありますが、シェーグレン症候群はそのうちのひとつであり、厚生労働大臣が指定する「指定難病」として認定されています。
シェーグレン症候群の診断基準を満たし、シェーグレン症候群であると判断された場合、重症度分類における病状の程度によっては、国から医療費を援助してもらうことができます。
具体的には、収入に応じて毎月一定額以上の治療費を援助してもらうことが可能となり、さらに健康保険の負担が2割となります。
シェーグレン症候群の医療費助成を受けるには?
医療費の助成を受けるには、都道府県あるいは指定難病審査会での申請手続きが必要となります。
また、指定難病の医療助成が受けられるのは、指定された医療機関でのみとなります。
シェーグレン症候群治療には生活習慣の改善も必要です
シェーグレン症候群の治療効果を高めるためには、生活習慣の改善も必要です。バランスのよい食生活や適度な運動、ストレスを軽減してリラックスすることなど、当たり前のことと思われることがとても重要となります。
定期的に病院に行って診察を受け、長い気持ちで病気と付き合っていくことも大切です。もし病気に関する悩み事や不安があれば、担当の医師に相談しましょう。
また、大学病院が東京や京都で定期的に開催する患者会「日本シェーグレン症候群患者の会」では、シェーグレン症候群患者同士が交流を行っています。情報交換や病気への理解を深める目的として参加してみるのもよいでしょう。
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