抜歯後の口臭がキツくなる原因と対処法
抜歯する(歯を抜く)ということは、人間にとって大きなストレスです。「痛みは少ないか、血はちゃんと止まるのか」など、歯を抜く日は誰もがドキドキします。歯を抜く前も抜いた後も、何かと不安なことが多いですよね。無事に歯が抜けても抜いた場所が気になってしまって、落ち着かない日が続くこともあるでしょう。
歯科医院では抜いたその日に注意すべきことは説明してくれますが、抜歯後しばらくは口臭に悩むことが少なくありません。今回は抜歯後の口臭について、その原因と対処法を解説します。
抜歯後に口臭がきつくなる主な3つの原因とその対策
歯科医院で歯を抜いた直後は、ようやく処置が終わったということでホッと一息安心するという方が多いでしょう。治療が完了したあとは、歯科医師の先生や歯科衛生士から注意事項を聞き、説明が書かれた紙をもらって帰宅します。帰る頃はまだ麻酔が効いているので感覚がありません。
しかし、麻酔が切れてくると徐々に痛みを感じたり、口臭がキツくなってきたりと、不安になってくることも多いものです。注意事項は何となく聞いていたものの、ポッカリと開いた穴(抜歯窩)にどう対処していいかわからないという方も少なくありません。
では、なぜ抜歯後に口臭が生じるのか、その原因について深く掘り下げていきましょう。
1.膿(傷口の化膿)
抜歯後に口臭が強くなる原因のひとつに、歯を抜いた穴、つまり傷口の化膿が挙げられます。化膿する主な原因は不潔な手で傷口に触れてしまうことです。歯肉の一部が飛び出ていたり治る過程でかゆみが生じると、舌で触ったり指や爪で引っ掻いてしまいがちです。
歯を抜いた後はその場所がどうなっているか気になってしまうものですが、傷口が指や爪に付いたばい菌に感染してしまうと、炎症が起こり、化膿して膿が排出されるようになります。
膿は、身体の免疫細胞とばい菌が戦った結果、生成される物質です。細菌や白血球の死骸などから構成されていますので、臭いニオイを放ちます。この膿のニオイが抜歯後の口臭の一因となるのです。
膿はいつまで続く?
抜歯をしても細菌感染しなければ膿が生じることはありませんが、「抜歯から4日以上経っても痛みが続いている」「腫れている」「膿んでいて口が開かない」といった場合は、細菌感染を起こしている可能性があります。
放置すると炎症が広がる可能性もありますので、傷口が膿んでいたらすぐに歯科医院に行き、洗浄や抗菌薬の処方など適切なケアを受けましょう。
膿による口臭はいつまで続く?
膿が排出され続ける限り、膿による口臭はなくなりません。診察を受け、医師の指示を仰ぎましょう。場合によっては、もう一度傷口を器具で掻き出すこともあります。
口臭を改善するための対策方法は?
傷口の治癒を正常な方向へ導く必要があります。用法・用量通りに抗菌薬を服用して、傷口をいじらないようにしましょう。
なお、膿が気持ち悪く吐き出したいからといって、激しいうがいを何度も繰り返すと、いつまでも血が固まらないためにかさぶたができなくなり、骨が露出するドライソケットの状態になってしまうことがあります。
ドライソケットになると、食事をする際に傷口に直接刺激が加わるために大変な激痛を伴います。治るまでとても辛いので、うがいのし過ぎにはくれぐれも気をつけてください。
2.抜歯後の穴に溜まった汚れ
穴に白い汚れが溜まっていると不衛生な感じがして気になりますよね。抜歯後の穴に食べかすなどの汚れが溜まると、それが腐敗して臭いを発するようになることがあります。
穴は抜歯後どれくらいでふさがる?
抜歯後の穴の治癒期間には個人差がありますが、だいたい1ヶ月くらいです。長い方では6ヶ月~1年以上かかる場合もあります。
抜歯直後から、抜歯窩には24時間以内に血餅(けっぺい)というプルプルとした血の塊が形成され、1週間くらい経つと傷口がお肉で徐々に覆われ始めます。2週間くらい経つとだんだん骨ができてきて、1ヶ月くらいでキレイな歯肉に戻ります。
口臭はいつまで続く?
抜歯した穴がある程度塞がってくるまで、食べカスが溜まってしまい口臭が出ることは避けられません。
しかし、口臭が気になるからとあまりに神経質にケアを行ってしまうと、傷口の治癒が遅れ、却って口臭を悪化させかねませんので、気にし過ぎないようにしましょう。
食べカスが溜まるのを防ぐには?
抜歯をした当日は化膿する恐れがあるため、傷口に対し歯ブラシを当てないでください。抜歯した隣の歯を磨くことは問題ありませんが、ゴシゴシと強い力で磨くことや、激しいうがいはドライソケットを引き起こす可能性があるため避けましょう。
2日目からは普通に歯磨きをして大丈夫です。食べかすは軽く水でゆすいで落とすようにしましょう。
3.歯性上顎洞炎
上顎洞というのは、顔面の骨の中にある副鼻腔というスペースのひとつです。副鼻腔には前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞、上顎洞の4種類があります。
上顎の奥歯の歯根はこの上顎洞に近いところに生えているため、上顎の奥歯である第一大臼歯や第二大臼歯を抜く際に歯根だけが残ってしまったり、細菌が入り込んでしまったりすることがあります。
上顎洞に迷入した歯や歯根はそのまま悪さをしない場合もありますが、そのまま放置していると歯性上顎洞炎を引き起こす恐れがあります。歯性上顎洞炎は根尖性歯周炎やインプラントの迷入でも生じます。
歯性上顎洞炎を発症すると、鼻詰まりによる口呼吸や鼻水が喉に垂れてきてネバネバする後鼻漏などの症状を引き起こし、口臭の大きな原因となります。
もし抜歯後に歯性上顎洞炎を発症してしまったら、主治医を含め、口腔外科や耳鼻咽喉科に相談し、抗菌薬の処方や迷入した歯・歯根の除去など、適切な処置を受けましょう。
口臭を防ぐための抜歯後の過ごし方・ケア方法
抜歯後は口臭が発生しやすいとわかっていても、人と会話する際に口臭があるとやはり気になりますよね。ここでは、口臭を予防する抜歯後の過ごし方について注意点を列挙しました。正しいケア方法で抜歯後の口臭を防ぎましょう。
1.激しいうがい・強いブクブクうがいをしない
抜歯直後の激しいブクブクうがいは絶対に避けてください。刺激的なマウスウォッシュの使用も避けましょう。数日~1週間くらい経ったら、穴に溜まった汚れを除去するためにもうがいをしても大丈夫です。
2.傷口に触れない
膿による口臭は、細菌感染を起こさなければ防ぐことができます。清潔な手だと思っても、傷口を触ったりいじったりしないようにしてください。
傷口が化膿して膿が出ると口臭が発生します。特に子供の場合は触らないように注意して見ていてあげましょう。
3.薬は指示通りに飲む
通常、痛み止めは傷が痛むときで構いませんが、あらかじめ痛みが起こると先生が判断した場合は、飲むタイミングを決められる場合もあります。
抗菌薬は化膿止めと同じです。ルール通りに飲まないと、薬剤耐性菌が発生して、逆に傷が治らなくなってしまう場合がありますので、必ず全て飲み切りましょう。
抜歯後の口臭の応急処置
抜歯窩があるとどうしても口臭が発生してしまいがちですが、うがいをし過ぎるわけにもいかず、自分で食べカスを取り除くこともなかなか難しいものです。
職場や学校などで抜歯後の口臭が気になるときは、「穴が塞がるまではマスクをする」「細菌バランスを整えるために、乳酸菌タブレットなどの口臭予防タブレットを舐める」「歯を抜いていない方でガムを噛む」「唾液腺マッサージで唾液分泌量を増やして細菌を殺菌・洗浄する」など、うがい以外の刺激を与えない方法で、一時的な応急処置を行いましょう。
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