マウスピースを歯ブラシで洗浄するのはNG?正しいお手入れ方法
夜間の歯ぎしりや食いしばり防止のためのナイトガードやホワイトニング、矯正治療、スポーツをしている方ならスポーツスプリントとしてマウスピースを使用している方は多いでしょう。
マウスピースは、顎関節症の予防や歯へのダメージを最小限にするためにも大切なツールです。しかし、最初はピカピカのマウスピースでも、使っているうちに徐々に黄ばんできたり、不快な臭いがついてしまったりすることがあります。
歯科医院では、入れ歯のお手入れ方法については丁寧に教えてくれますが、マウスピースのケア方法についてはあまり詳しく説明されないこともあります。
今回は、マウスピースの洗浄・保管方法や臭い対策、口臭への影響について詳しくご紹介します。
マウスピースの臭いが悪化する原因
マウスピースの臭いが強くなってしまう一番の原因は細菌です。
口腔内には、350~700種類の常在菌が何千億個も存在しています。これだけ細菌がうじゃうじゃいる口の中にマウスピースを入れていたら、もちろんマウスピースにも細菌がたくさん付着してしまいます。この細菌たちがマウスピースを臭くしているのです。
そのため、マウスピースはきちんと洗ってお手入れする必要があります。マウスピースを入れる口腔内も同様で、マウスピースによる臭いを予防するには、マウスピースと口腔内の両方の衛生管理が重要となります。
汚れたマウスピースを使い続けると…
口腔内にはたくさんの細菌が常に共生しており、これらの細菌たちの中には、もちろん虫歯菌や歯周病菌も存在しています。汚れたマウスピースをきちんと洗浄せずに使っていたり、プラークコントロールができていない口腔内でマウスピースを使用していたりすると、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。虫歯や歯周病になると、やはり細菌によって口臭が発生します。
誤嚥性肺炎や義歯性口内炎の危険性も!
なお、マウスピースは主に若い方が使用するのでそれほど問題にはなりませんが、汚れた入れ歯による虫歯や、カンジダ菌というカビによるカンジダ症が問題となるのは珍しいことではありません。
特に、免疫力が低下しているお年寄りの場合は、汚い入れ歯に溜まった細菌が誤って肺に入り込み、誤嚥性肺炎になってしまうケースや、粘膜に当たる部分に汚れが溜まることでカンジダ菌が増殖し、義歯性口内炎を引き起こすケースもあります。
入れ歯と同様、マウスピースを長期的に使用する場合も、適切な洗浄によって徹底した衛生管理を行うことが大切なのです。
マウスピースにも歯石が付く?
マウスピースを長期に渡り使用していると、だんだんとマウスピースの表面が白くカピカピになってきます。これは唾液の成分によって歯石が付着しているためです。
口腔内の歯垢(プラーク)を放置していると、唾液のカルシウムやリンといったミネラル成分によって歯石が形成されます。マウスピースはプラスチック製のものが主流です。プラスチックは金属の入れ歯と違って表面に汚れが付きやすく、歯石が形成されやすいのです。
マウスピースの臭い対策
ここでは、マウスピースの具体的な洗浄方法や臭い対策について解説します。
ハードタイプとソフトタイプの違い
マウスピースは、その素材によってお手入れの方法が異なります。マウスピースの素材には主に2種類あり、ハードタイプとソフトタイプがあります。
ハードタイプ
ハードタイプはとても硬く、手で曲げようとしても曲がりません。寝ている間にクレンチング(食いしばり)、グラインディング(歯ぎしり)、タッピング(歯をカチカチさせる)などの激しいブラキシズムを起こしやすい方に適用されます。
ソフトタイプ
ソフトタイプは手で触るとグニグニとしており、ハードタイプに慣れない人や違和感のある人に対して使用されます。
また、スポーツスプリントではソフトタイプが多いです。自分で既成のソフトタイプを熱湯で熱し、自分の歯型に合わせるといった商品が多く販売されています。
洗浄方法
洗浄方法はハードタイプでもソフトタイプでも一緒です。朝起きてマウスピースを外したら、水かぬるま湯でよく洗いましょう。
このとき、消毒のためにと熱湯で洗浄する方は多いのですが、変形の大きな原因となるため絶対に避けてください。
入れ歯用洗浄剤を用いて、柔らかめでヘッドの小さな歯ブラシで細かい部分まで磨くと、マウスピースの表面を傷つけて、細菌が繁殖する場となってしまう恐れがあります。臭い対策の観点からみると、ブラシでゴシゴシ磨くことは避けた方がよいでしょう。特に、研磨剤の含まれている歯磨き粉は表面を傷つけてしまうので、使用を控えるべきです。やはりブラシを使わず、指で汚れを落とした方がよいでしょう。
代わりに、どんなタイプのマウスピースにも使えて、簡単に除菌が行えるマウスガード洗浄スプレーを購入して洗浄するのがベストです。
自分のマウスピースがハードタイプなのかソフトタイプなのか判断がつかない場合は、マウスピースを製作した主治医に確認してみてください。
マウスピースは保管も大切
ハードタイプとソフトタイプでは硬さも違いますが、吸水性にも違いがあります。
マウスピースの保管方法は、その吸水性の違いによって注意すべき点がいくつかあります。
ハードタイプ
ハードタイプは吸水率が高いので、乾燥させてしまうと破損しやすくなる恐れがあります。そのため、使わないときは水に漬けておき、乾燥を防ぐ必要があります。専用の容器や持ち運び用の容器、コップなどに水を入れて保存してください。
ただし、見た目が透明なマウスピースの場合、水に漬けていると見えにくくなるため、誤ってシンクに流してしまう可能性も考えられます。できるだけ定位置で保存するようにしましょう。
ソフトタイプ
ハードタイプとは反対に、ソフトタイプは吸水すると変形する恐れがあります。洗浄した後は水を切り、風通しの良いところで十分に乾燥させましょう。持ち運ぶ際も、細かい穴が開いているような、湿気のこもらない通気性に優れた容器を選ぶのが望ましいです。
また、ソフトタイプのマウスピースは、装着しながら色の付いているお茶やジュース、ワインなどを飲むと、マウスピースに飲料の色素が沈着してしまう恐れがあります。着色を防ぐためにも、マウスピースを装着しながらの飲食は控えるようにしましょう。
漂白剤でキレイにできるって本当?
汚れたマウスピースを漂白剤で一気に綺麗にすることができたら、気持ちがいいですよね。
漂白剤は、マウスピースの素材によっては使用可能です。キッチンブリーチなどの台所用漂白剤の原液にしばらくの間漬けておきましょう。あるいは、デンタルマウスピース洗浄剤といった漂白剤が含まれているマウスピース洗浄剤を使いましょう。
コップの中にマウスピースを置き、水を注いで洗浄剤を入れて放置するだけなので、とても便利です。マウスピースが除菌され、歯石の付着を防ぐことができ、臭いも発生しなくなります。
「自分でマウスピースの素材がわからない」「どの洗浄剤を使用していいか不安だ」という方は、気軽に歯科医院で相談し、適切な処置方法を教えてもらいましょう。
また、マウスピースは消耗品なので、長く使用することですり減りによって穴が開いてきたり、合わなくなってきたりします。調整や新しく作りかえる必要が生じてきますので、定期的に歯科医院でチェックしてもらいましょう。
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