歯列矯正中に口臭が発生する原因と予防方法
歯列矯正治療は、歯並びを良くするために行われる治療です。主な治療方法にワイヤー矯正がありますが、歯の表面に「ブラケット」という装置を装着し、そこに通したワイヤーを少しずつ締めて歯の位置を動かしていきます。
症例によって異なりますが、ワイヤー矯正の場合、2~3年程度の期間を要するケースも多く、治療期間は長くなりやすいです。この間、口の中に矯正器具を入れたまま過ごすことになるわけですが、「治療を始めてから口臭が気になり出した」という人も少なくありません。
矯正治療中に、なぜ口臭が起こるのか、その原因を知るとともに、どうすれば効果的に口臭を防ぐことができるのかを見ていきましょう。
歯列矯正をすると口臭が強くなる原因は?
使用している矯正器具がマウスピース型なら、そのつど取り出してきれいにすればいいのですが、ワイヤー矯正の場合は基本的に歯の表面に装着したままの状態になります。ワイヤー矯正を行うことによって、口内環境にどのような影響があるのでしょうか。また、そのことがなぜ口臭の原因になるのでしょうか。原因としては、主に次の3つが挙げられます。
1.歯の磨き残しが発生しやすい
ワイヤー矯正器具を装着した口内は、装着していないときに比べて凹凸が増え、複雑な形状になります。形状が複雑になるということは、それだけ歯垢や食べかすが残りやすくなるということです。つまり、矯正器具を装着したら、それまで以上に丁寧な歯磨きを心がける必要があるのです。
歯磨きは習慣的に行いますので、いつも同じような場所に磨き残しができるものです。磨き残しはプラーク(歯垢)となって口臭の発生源になります。
歯の磨き残しを防ぐには
プラークがたまるのを防ぐには、まずは磨き残しをできるだけなくし、汚れをしっかりと落とすこと必要です。ただし、矯正器具を装着していない口内に比べると、どうしても歯ブラシが届きにくい箇所が多くなりがちですので、細かいところまで磨きやすい歯ブラシを使うといった工夫も必要になります。
2.口腔内が傷つきやすい
矯正器具を装着するということは、言ってみれば異物を常に口の中に入れていることになるわけですから、何も付けていないときに比べると、歯茎をはじめ、頬の内側や唇などを傷つけやすくなります。
器具が常に当たっている箇所が炎症を起こし、患部から出た膿が臭いの発生源となる場合もあります。
3.口が閉じにくい状態になりやすい
矯正によって歯並びを改善するということは、噛み合わせも変化することが多くなります。また、噛み合わせに問題があるために、矯正が必要になったというケースも多いでしょう。そのような場合、あえて噛み合わせを緩くするために口がやや開いている状態を作ることがあります。
このような場合に、口が完全に閉じていない時間が長く続いて、口腔内が乾燥しやすくなる可能性があります。口の中が乾くということは、唾液が口の中に行きわたっていないということですから、唾液のもつ殺菌作用が効果を十分に発揮できず、細菌が増えやすい口内環境になります。
口の中に細菌が繁殖すると、細菌がニオイの原因となるガスを発生させ、口のニオイを強くしてしまいます。
口腔内が乾燥しやすい時間帯
口腔内の乾燥が最も顕著なのは、舌などの運動が少なくなる睡眠中です。歯列矯正中であることに加えて、眠っている間に口呼吸になりがちだと、口臭が発生しやすくなる可能性が高くなります。
歯列矯正中の口臭を改善したい!効果的な対策方法は?
歯列矯正中の口臭を予防・改善するには、第一に歯磨き時の磨き残しをなるべく減らすことが重要です。ニオイの原因のプラークを防ぐためには、口の中の衛生管理がとても大切なのです。
また、口腔内が乾燥するのを防ぐため、唾液を増やすといった対策も必要になるでしょう。
歯列矯正中の日常的なケアを助ける便利アイテム5選
歯列矯正中、口臭を効果的に予防・改善するために役立つアイテムを5つ紹介します。
1.インターブレイス/OralCare
オーラルケアから販売されている「インターブレイス」は、矯正器具の隙間を磨きやすいよう、コンパクトな山型ヘッドとしなやかな毛先を採用。矯正治療中の人向けに開発された専用歯ブラシです。
ワイヤーの下など、汚れがたまりやすい部分を磨きやすいよう、さまざまな工夫が凝らされています。
2.オーソワン/ OralCare
オーラルケアより販売されている「オーソワン」は、矯正患者用に開発されたワンタフトブラシ。一般的なワンタフトブラシよりもヘッドをスリムな形状にし、矯正器具を装着した複雑な形の口腔内でも、しっかりと毛先が届くように考慮されています。
3.ジェットウォッシャー ドルツ EW-DJ61/パナソニック
パナソニックの「ジェットウォッシャー ドルツ」は、水流で歯と歯の間にこびりついた汚れを落とす口腔洗浄器。歯列矯正器具を装着した口腔内でも、隙間の汚れを強力な水流で洗い流します。さらに、水流だから歯周ポケットのケアや歯茎の引き締め効果も期待できます。
4.モンダミン アクア/アース製薬
アース製薬の「モンダミン アクア」は、ノンアルコールタイプのデンタルリンス。後味が残りにくく、低刺激なので、歯列矯正中で傷つきやすくなっている口腔内にも最適です。
どんなに気をつけてケアしていてもやはり口臭が気になってしまうという人は、口の中がさっぱりするデンタルリンスがおすすめです。
5.薩摩刀豆 なたまめ茶/マイケア
刀豆は江戸時代から民間薬として親しまれており、排膿効果から歯周病予防に効果が期待できると言われています。この刀豆の成分と、ハトムギや黒豆をブレンドして作られているのが、「薩摩刀豆 なたまめ茶」です。歯磨き以外のところでも、ちょっとした口臭対策に役立ちます。
歯並びチェック時のクリーニングも重要です
矯正治療の期間中、自分で歯磨きなどのケアを行うことはもちろん大切ですが、プロによる定期的なメンテナンスを欠かすことはできません。
定期的に歯科で行われるチェック(メンテナンス)時に、奥歯や歯の裏側といった、普段自分ではなかなか見ることができない箇所をデンタルミラーを使って見てもらい、プラークが蓄積していないか、きちんと磨けているかをチェックしてもらいましょう。
もしプラークがたまっている箇所や磨き残しが見つかった際は、どのような磨き方をすれば汚れをきれいに落とすことができるか、歯科衛生士によるブラッシング指導を受け、歯磨きを改善していきます。
歯列矯正治療中に行うケアの方法は、歯科医院によって異なりますので、これから矯正治療を受ける予定がある人は、治療中のケアの内容についても確認しておくと安心でしょう。
口臭だけじゃない!?矯正治療中に起こる主なトラブル
矯正中は、口の中が不衛生になりやすかったり、乾燥しやすかったり…トラブル発生のリスクが高くなっていると言えます。
口臭はもちろん、次に紹介するようなトラブルも予防しながら、キレイな歯並びを目指すことが大切でしょう。
虫歯・歯周病のリスクが高くなる
装置の装着によって、口の中が不衛生になりやすくなることによって、口臭だけでなく虫歯や歯周病のリスクも高まります。装置によって歯ブラシが届きにくい場所に、虫歯ができたり、歯肉炎・歯周病になってしまったりする場合もあります。
定期的にメンテナンスを受けていれば、ブラッシング指導を受けたり、クリーニングを受けたりすることで、リスクを低減することが可能です。もちろん、セルフケアをしっかり行うことも重要になります。
口内炎ができやすくなる
先に、矯正装置によって傷つきやすくなると紹介しましたが、矯正装置を付けてから口内炎ができやすくなったと感じる人も少なくありません。
矯正装置が接触することによって起こる口内炎「カタル性口内炎」は、口内炎の中でも痛みが強い特徴があります。
リテーナー装着中の口臭について
リテーナーとは、歯を動かした後に後戻りを防ぐ目的で使用する装置のことですが、リテーナーによる口臭が気になる人も少なくありません。
リテーナーは、主に取り外し可能な装置が使用されていますが、症例によっては取り外しができない装置を使用する場合もあります。
リテーナーの清掃の重要性
取り外しが可能なリテーナーは、口の中の衛生管理が行いやすく、装置の清掃も行いやすいような気がしますが、リテーナーを清潔にしておかないと、細菌が繁殖して口臭の原因になってしまうのです。
また、口臭の原因になるだけでなく、虫歯など口の中のトラブルの原因となるため、リテーナーの清掃もしっかり行うことが必要になります。
リテーナーの洗浄方法は?
水で洗ったり、歯ブラシを当てたりしてリテーナーに付着した汚れを除去することはできますが、定期的に洗浄して目に見えない細菌を除去することが必要でしょう。
リテーナー専用の洗浄剤などが販売されているので、それを使用すると良いですが、使用前に医師に確認すると安心でしょう。治療を行っている歯医者で販売している場合が多いので、相談してみても良いでしょう。
また、マウスピース矯正の場合も同様で、細菌が繁殖して口臭の原因になる場合もあるため、定期的に洗浄することが必要でしょう。
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