舌が黒いのは病気の予兆?考えられる原因とは
皆さんは、舌の色から身体の健康状態を把握できることをご存知でしょうか。
舌の表面は白・黄・茶・黒色など、体調によって様々な色に変化します。朝起きたときなどには、舌が白・黄色くなっていることがありますが、これは舌苔(ぜったい)という舌の汚れが蓄積している可能性が高いです。
しかし、長期間舌が黒い状態が続いている場合は要注意です。舌に関わらず、黒色変化はがんなどの重い病気のサインであることがあります。
今回は、舌が黒い場合に考えられる9つの原因についてご紹介します。
正常な舌とは?
舌の異常に気づくには、まず正常な舌の状態を知る必要があります。
正常で健康な舌は綺麗なピンク色をしています。表面はツルツルではなく、少しザラザラとしているのが普通です。このザラザラは舌乳頭(ぜつにゅうとう)によるもので、舌乳頭には尖端の方に多い茸状乳頭、糸状乳頭、脇にある葉状乳頭、後ろの方に並ぶ有郭乳頭の4種類が存在します。
糸状乳頭を除く舌乳頭の中には、味蕾(みらい)という味覚を感じる器官があります。私たちは、食事をした際、唾液の中に味物質が混ざって味蕾に到達することで、味を感じています。
舌が黒い!黒・茶色っぽくなる原因は?
舌表面の糸状乳頭が伸び、角化が進行して毛が生えたように舌の左右に黒色が広がった状態を、医学的には黒毛舌(こくもうぜつ)といいます。
では、日常生活で何が起こると舌が黒くなるのでしょうか。舌が黒くなる原因について詳しく解説していきます。
1.抗生剤の長期的服用
風邪や歯が痛い時などに処方される抗生物質は、細菌を殺す薬です。抗生剤は1種類の細菌だけを殺すのではなく、ある一定の種類の細菌を全て殺します。殺せる菌種の範囲のことをスペクトルといいます。
抗生物質の使い方には注意点があります。抗生物質を長期的に使い続けると常在菌が減り、本来であれば少数しか存在しない菌が増殖する「菌交代現象」が起こります。
例えば、テトラサイクリン系の抗生物質の場合は殺せる細菌の種類が多いので、何日も服用していると、薬に弱い菌は殺せる一方、薬に強い菌が増殖していきます。
薬に強い菌種には真菌(カビ)が多く、口腔内で増えやすい真菌の代表としてはカンジダやアスペルギルスが挙げられます。
カンジダもアスペルギルスも、抗生剤の長期投与や、お年寄りなど免疫力が弱っている方が起こす日和見感染で増える真菌です。つまり、舌が黒くなっているということは、免疫力の低下や体力の衰えを示している可能性があります。
また、抗生剤ではありませんが、ステロイド剤の長期的な服用によって菌交代現象が発生し、黒毛舌を引き起こすこともあります。
2.喫煙
タバコを吸うと歯や舌が茶~黒色になりますが、これはいわゆる「ヤニ汚れ」によるものです。ヤニ汚れの原因は、タバコに含まれるタールです。頑固な着色ですので、落とすには歯科医院でのクリーニングが必要となります。
タールは色素沈着を起こすだけでなく、ニコチンなどの有害物質や発がん性物質を多く含んでいます。口腔内では舌癌を引き起こす可能性が高く、危険な物質です。
3.食べ物・飲み物の着色料
ブルーベリーやイカスミ、かき氷のシロップなど、色が濃いものを飲食することで、舌に黒っぽい着色が起こることがあります。しかし、飲食や歯磨きなどによって除去される一時的な着色ですので、全く問題はありません。
4.サプリメントの服用
葉酸タブレットや鉄剤など鉄分を含むサプリメントを服用していると、舌が黒っぽくなることがあります。これは、サプリメント中の鉄分とお茶などに含まれるタンニンが結合してタンニン鉄が生成されるためです。こちらも特に問題はなく、ブラッシング等で除去することができます。
5.唾液の減少
唾液が少ないドライマウスの状態になると、汚れが唾液の水分で洗い流されず、口腔内に細菌が増殖します。中でもカンジダ菌が増えると、黒毛舌を引き起こすことがあります。
ドライマウスの原因は様々です。原因を突き止めた上で、こまめな水分補給やガムを噛むなどして唾液の分泌を促進する必要があります。
6.外傷による血豆
血豆は、黒毛舌とは異なり一目ですぐに見分けがつきます。舌の表面にプックリと隆起した濃紫色のおできがあったら、それは血豆である可能性が高いでしょう。大きさは0.5~2cmくらいで、粘膜との境目がハッキリしています。
血豆の中は血で満たされています。歯で誤って舌を噛んでしまったときに起こりやすいので、舌の脇(歯の近く)に生じることが多く、頬の粘膜にもできることがあります。ほとんどが一時的なものですぐに治癒するケースですが、頻繁に発生するようであれば病院を受診し、相談することをおすすめします。
7.血管腫
血管腫は、血管が異常に増えてしまう血管の奇形です。舌の表面が盛り上がっていたり、裏側の血管がどす黒く強調されたように見えたりします。指で押すと色が消えるので、他の病気と見分けがつけやすいです。
赤ちゃんに生じることもありますが、自然に消えることがほとんどです。進行性の病気ではないため問題になることは少なく、経過観察の対象となりますが、大きなものの場合は口腔外科でレーザーなどを用いて除去することもあります。
8.メラニン色素
メラニン色素が通常より多く産生されると、色素の沈着を起こします。原因には副腎皮質機能低下によるアジソン病などが考えられます。メラニン色素の沈着は、舌のほかに頬の粘膜や口蓋に多くみられます。
また、舌にも黒子(ほくろ)が出現することがあります。医学的には色素性母斑(しきそせいぼはん)と呼びます。細胞というものは、通常は臓器や神経など何らかの役に立つ細胞に分化していくものですが、何の細胞にも分化することができなかった母斑細胞が集まると、メラニン色素を産生することがあります。
黒~灰色でやや膨らみがあり、年齢を経ると大きくなりますが、ピークを迎えると色が淡く変化してきます。
9.悪性黒色腫
メラニン色素と似ていますが、見過ごしてはいけないのが悪性黒色腫(メラノーマ)です。口の中では歯茎や口蓋にできることが多いのですが、舌の後方表面や脇にも現れることがあります。
見た目はメラニン色素を含んでいるため炭のような黒い色を呈していて、凸凹があります。しかし、黒色化せず、ただ腫瘍のように膨らんでいる場合もあるため、自分の目で見分けるのはとても困難です。
悪性黒色腫は放置すると硬くなったり血が出てきたりします。他の異常と見分けるためには、粘膜の一部を切り取って、顕微鏡で観察して診断する必要があります。
予後が非常に悪いので、このような症状が出た場合には、すぐに口腔外科などで診察を受けてください。
舌が黒いのは重大な病気のサインかも
黒毛舌は抗生物質の副作用、タバコ、着色料、サプリメント、唾液の減少などの原因によって生じます。この中では抗生物質による菌抗体現象のケースが多いです。薬を処方してもらっている先生に相談して、薬の使い方を考え直す必要があります。
一方、黒毛舌ではありませんが、舌が黒くなる異常としては血豆、メラニン色素沈着、色素性母斑、悪性黒色腫が挙げられます。この中でも悪性黒色腫は絶対に見逃してはいけない病変です。舌の症状は口腔外科・皮膚科・歯科医院などが特に専門としています。
良性か悪性かを自分で見分けることは難しいので、不安な症状があったらすぐに病院で相談するようにしましょう。
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