歯石が黒い原因は?治療法と予防策
「歯の根元が黒いけど、これって虫歯じゃなさそう…」そんな経験はありませんか?もしかすると歯石汚れが溜まっているサインかもしれません。一般的に、歯石は白く硬いものだというイメージが定着しがちなのですが、中には茶色や黒色をした歯石も存在します。
今回は歯石が黒い原因をはじめ、歯医者での黒い歯石の除去・治療法や黒い歯石の沈着を予防する方法について解説していきます。
そもそも歯石とは?
歯石とは、歯垢(プラーク)が結晶のように石灰化した物質です。食べカスを栄養源として細菌が歯垢を形成すると、歯にベットリと白い歯垢が付着します。歯垢は歯磨きで落とすことができますが、磨き残しがあると、唾液中に含まれるカルシウムやリン酸と混ざり合い、石にように硬くなります。そのため、歯石ができる箇所は唾液腺の開口部の近くが多く、下顎の前歯の裏側や上顎の奥歯の頬側はどちらも歯石が沈着しやすい場所です。
歯石の成分・形状
歯石自体はリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど主にカルシウム成分で構成されているので、病原性はありませんが、歯石の表面はザラザラとしており、軽石のように小さな孔(あな)がたくさん存在するため、細菌が住みつきやすく、歯垢が形成されやすい環境です。
また、常に歯肉に硬い物質が当たることになりますから、歯茎に刺激を与えて炎症を起こりやすくしてしまいます。
歯石が黒いのはなぜ?どんなところにできる?
歯石は歯に付着してできるというイメージがあると思いますが、実際は歯肉の下にもできます。歯肉の下とは、歯と歯肉の境目にある歯肉溝や歯周ポケットのことです。(歯肉溝は歯周病によって3mm以上深くなると、歯周ポケットと呼ばれます)
歯に沈着する白色~黄色の歯石を「歯肉縁上歯石」、歯肉溝(歯周ポケット)にできる茶色や黒色をした歯石を「歯肉縁下歯石」といいます。
歯石が黒くなる理由
白や黒など、なぜ色の違う歯石が形成されるのかというと、これは歯石に触れる成分がそれぞれ異なるためです。
唾液ではなく、歯肉溝滲出液(しにくこうしんしゅつえき)という歯肉溝から出てくる組織液にさらされると、歯石は黒くなります。
歯肉溝滲出液には唾液と同様にカルシウムやリン酸が含まれているので、唾液と触れたときと同様に硬化します。歯肉溝滲出液には毛細血管から滲みだした血液や鉄分が含まれているため、プラークが硬化する際に黒く変色するのです。
なお、歯肉溝滲出液は、歯肉炎や歯周炎など炎症が進行しているほど多く分泌されます。
黒い歯石ができやすい場所
歯肉溝滲出液は歯肉溝や歯周ポケットならどこでも分泌されますから、白い歯石とは異なり、黒い歯石の沈着部位と唾液腺の開口部は関係ありません。口腔内で歯肉縁下歯石ができやすい場所は人によって異なりますが、歯周病が進行している歯周ポケットほど多くの歯肉縁下歯石が生じます。
また、歯周病で歯茎が下がって歯根が露出している場合には、歯根部に黒い歯石が沈着しているケースが多く見られます。歯根部に黒褐色の物質が付着していたら、歯肉縁下歯石か虫歯である可能性が高いです。
黒い歯石を放置すると…
黒い歯石を放置していると、ただでさえ歯周病の進行した状態からさらに症状が悪化しかねません。
歯周ポケット内の歯石は細菌を呼び寄せ、歯垢を形成して増殖し、歯周組織に炎症を起こして破壊していきます。歯周病は歯を支えている歯槽骨を溶かしてしまいますので、虫歯のない歯だとしても、重度の歯周病であればグラグラに動揺し、最終的には抜けてしまいます。
歯周病の口臭はメチルメルカプタンが高濃度で発生
歯周病を起こす歯周病菌は、口臭の原因物質である揮発性硫黄化合(VSC)のうち、悪臭を放つメチルメルカプタンを多く発生させます。そのため、高確率で強烈な口臭を引き起こします。
また、歯槽膿漏になれば細菌や白血球の死骸から構成される不潔な膿が排出され、生ゴミのような嫌なニオイが生じる場合もあります。
黒い歯石を除去するには?
歯周病を悪化させて口臭を引き起こす黒い歯石を除去するには、セルフケアだけでは不可能です。歯垢は歯磨きで除去することができますが、歯石は特別な器具を使わないと除去できないのです。
歯石が黒い状態で見つけたら、歯科医院でスケーリング・ルートプレーニング(SRP)という処置を受ける必要があります。
スケーリング・ルートプレーニング(SRP)とは?
スケーリングは、スケーラーという器具を使って歯石を除去する方法です。スケーラーには手用スケーラーと超音波スケーラーがあり、手用は刃の付いた器具で歯石を削り取り、超音波は振動で歯石を破壊して取り除きます。
ルートプレーニングでもスケーラーを使いますが、スケーリングとは除去する場所が異なります。
ルートプレーニングでは、歯根の表面のセメント質という組織のうち、歯石などが付着した病的なセメント質を丸ごと削り取り、表面をツルツルにして歯垢を付着しにくくします。治療には痛みを伴うので、通常はあらかじめ麻酔をしてから行います。
白い歯石よりも黒い歯石の方が硬く、奥深い歯周ポケットの中でしっかりとくっついているため、まずはスケーリングで可能な限り除去し、その後は歯肉の状態が落ち着いてからルートプレーニングに移行するケースが多いです。
重度の場合は手術による除去も
スケーリングやルートプレーニング、プラークコントロールなどの基本的な治療では症状が改善されないと判断された場合、歯周外科手術を行います。
歯周ポケット掻爬(そうは)術
比較的浅い歯周ポケットであれば、歯周ポケット掻爬術によって歯周ポケットの底から根こそぎスケーラーで歯石や病原菌を削り取ります。
炎症を起こした歯肉の一部も削ってしまうので歯茎は下がってしまいますが、歯周ポケットが浅くなるので歯垢や歯石が付着しにくくなります。
フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)
深い(4mm以上)歯周ポケットであれば、一般的に「フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)」という手術を行います。歯周ポケットが深くてスケーラーが届かない場合や、操作がしづらい場合に行われます。
メスを用いて歯肉を切開し、スケーリング・ルートプレーニングを行って歯石や病的セメント質を除去します。
黒い歯石を予防する方法
黒い歯石を放置したばっかりに、外科手術までしなければならない状況になるのは嫌ですよね。黒い歯石の沈着を予防するには、早めの対策が効果的です。
歯肉からの出血チェック
出血は炎症を起こしているサインです。歯磨きをしていて血が出る、デンタルフロスや歯間ブラシを正しく使っているのに血が出る場合は、歯肉炎や歯周炎を引き起こしている可能性が高く、歯石ができやすくなってしまいます。
そのまま放置すると歯周ポケット内に黒い歯石が増え、歯周病が進行しますので、必ず歯科医院で治療を受けることが大切です。
歯医者での定期的なクリーニング
自分で完璧に歯垢を除去し、プラークコントロールをしっかり行って歯周病を予防することができれば、歯石はほとんどできないのですが、それはなかなか難しいことです。磨き残しはどうしても出てきてしまいますし、加齢によって口腔内の状態も変化します。
口腔内の状態を常に清潔に保つには、歯科医院で定期的なメンテナンスやクリーニングをしてもらい、歯周組織の状態や正しいブラッシング方法ができているかどうかをチェックしてもらう必要があります。3ヶ月~半年に1度は定期検診を受診するのが望ましいでしょう。
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