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    歯石除去を自分で!リスク/使用器具/安全な取り方とは

    歯石除去を自分で!リスク/使用器具/安全な取り方とは

    歯石除去を自分で行うには、スケーリングの正しい知識が必要。エナメル質は、一度傷つけると元に戻らないのです。取り方やリスク、繰り返すことのデメリットなどをご紹介。

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  • 更新日:2016年01月27日

歯石除去は自分で行って大丈夫?リスクは?安全な取り方は?

歯に付いた頑固な歯石は、個人差はあるものの、誰の口腔内でも生じるものです。歯科医院で定期的に取ってもらうのが一般的ですが、「自分で除去できないか」と考える人も多いようです。
歯科受診を億劫に思う人は少なくないかもしれません。「歯石取りだけで歯医者に行くのは面倒くさい」と思っている人もいるでしょう。

しかし、歯石は自分で取っても大丈夫なのでしょうか。

歯石ってどうやって取るの?

通常は「スケーラー」という器具で除去(スケーリング)します。

歯石は文字通り石のように硬く、歯茎の下の歯の根にも付くため歯磨きで取り除くことは不可能です。通常は「スケーラー」という器具で除去(スケーリング)します。

スケーラーには刃で少しずつ歯石を削る「手用スケーラー」と、超音波で歯石を粉砕する「超音波スケーラー」があります。どちらも歯科医院に用意されている器具で、主に歯科衛生士さんがクリーニングの際に使用します。

歯石除去は自分でできるのか

歯科医院で歯石除去をしてもらった人の中には、「逆に歯が傷ついた気がする」「歯茎にスケーラーが当たって痛かった」などのネガティブな経験から、「自分でできるなら自分でやりたい」と考えた人も多いかもしれません。

実際に、ネット上では手用スケーラーなら2千円程度で購入することが可能です。しかし、本当に自分で自身の歯石を除去することができるのでしょうか?

自分で歯石を取っても大丈夫?リスクは?

結論からいいますと、自分で歯石を取ることはおすすめできません。大丈夫かそうでないかと言えば、大丈夫でない可能性が高いでしょう。

安全に行うのが困難です

安全に行うのが難しい

歯石は歯の裏に付着します。一般的に歯科医院では、歯科衛生士さんが口腔内用ミラーを用いて歯石の位置を確認しながら除去します。
しかし、自分では口腔内用ミラーを直視することができません。自分で歯の裏を見るには口腔内用ミラーをさらに鏡に映さなければならず、手の動かし方が複雑になります。

位置を確認せずに感覚だけで進めるのは、歯や歯茎を傷つける可能性が高くなるため危険です。

スケーラーを使う訓練やスケーラーの手入れが不十分

手用スケーラーは、刃が左右片方だけに付いているものもあります。この場合、先端がとても細いためどちら側に刃がついているのか見分けるのが初心者には困難です。
また、包丁と一緒で研いでいないと削りづらくなるので、その状態でスケーリングをしても歯をただ傷つけているだけ、という結果になりかねません。

歯科衛生士さんは歯石を除去する十分な訓練を受けています。しかし、自分で行う場合には、一発勝負というケースも多いのではないでしょうか。「いきなり自分の歯で歯石除去を行ってみる」ということは、とてもリスクが高いことです。

手用スケーラーと一言で言っても種類が多くあります。グリップの部分と刃の部分の間の「シャンク」という部分の角度の付き方などに違いがあり、歯科衛生士さんは歯石が付着している場所などに応じてスケーラーを使い分け、スケーリングを行っています。

超音波スケーラーなら自分で歯石を取っても大丈夫?

超音波スケーラーは水を出しながら、水を吸うバキュームも必要

「じゃあ、刃のついていない超音波スケーラーなら大丈夫かな?」と、思うかもしれませんが、やはり良くないでしょう。
超音波スケーラーは、仮の詰め物を除去する際のセメント除去に使用することもあります。独自の使い方をすると、補綴物などが外れてしまうリスクも考えられます。

また、通常はスケーラーの尖端からを同時に出しながら行いますが、水を吸うバキュームがないと位置がとても見えにくくなります。家庭でバキュームを購入するのは現実的な話ではありませんし、装置もとても高価です。歯科医院で行った方が明らかに安全で安いと言えるでしょう。

ちなみに、歯科衛生士や歯科医が自分で自分のスケーリングをすることはあります。それは正しい技術と経験を持っているから行えるのです。

どうしても自分で行いたい…歯石の取り方は?

リスクがあったとしても、「どうしても自分でやりたい」という人は、自分で責任を負う覚悟でやる必要があります。本来は歯科医院で行うことなのだと認識して、慎重に行うことが大切です。

鏡を使って歯石の場所を確認し、確実に進める必要があるでしょう。決して手探りで行うことは良くありません。歯石が取れず、歯を傷つけるだけになってしまう場合もあるでしょう。

どうしてもやるならば、難度の高い箇所は避けて

どうしてもやるならば、舌前歯の裏

歯石は、唾液中のカルシウムで歯垢が石灰化された物質であり、唾液腺の開口部が近い下の前歯の裏側が最も歯石が付きやすい場所です。

この箇所の歯石除去は、比較的難度が低いと言えますので、自分で行うことも可能かもしれません。ただし、虫歯になっている・詰め物があるという場合には、自分で除去せず歯科医院で取ってもらいましょう。

スケーラーの消毒は必須!

歯科医院ではスケーラーなどの治療器具には、滅菌処理を行っています。消毒が、「細菌の働きを抑える、有害な物質を除去・無害化する」というレベルであるのに対し、滅菌とは「全ての菌を死滅・除去する」というレベルです。
自宅で滅菌処理は行えないですが、エタノールなどを用いてスケーラーをしっかり消毒してから使用することも欠かせません。

歯石はなぜ取らなければいけないの?

歯石の周りは細菌が溜まりやすい

そもそも、歯石はなぜ取らなければいけないのでしょうか?

歯石は食べカスや細菌でできた歯垢(プラーク)が結晶化したものです。歯にくっ付く「歯肉縁上歯石」と、歯茎の下に埋まっている歯の根にくっ付く「歯肉縁下歯石」があります。歯肉縁上歯石は、白色で目視できます。縁下は黒色で歯茎の中の根の周りに付くので見えず、麻酔をして(時にはメスで歯茎を切開して)スケーリングを行います。

歯石の蓄積は歯周病につながります

歯石自体は悪さを起こしません。しかし表面が凸凹していて細菌が溜りやすく歯周病の原因になります。歯周病が進行すると、歯茎が腫れ出血を起こし、口臭が発生します。
朝起きた時の口臭やニンニク料理を食べた時に生じる口臭は生理的、外的なものですが、歯周病による口臭は「病的口臭」といって治療しなければ治りません。重度の人は、会話をしただけでも相手に口臭が伝わってしまうくらい不快な臭いを生じます。

歯石を防ぐためには歯磨きが大切

沈着してしまった歯石は、自分で取り除くことが難しいです。しかし、歯垢ならば歯磨きで大部分を除去することが可能です。歯石が付かないようにするために、まずは歯垢除去を行うことが大切なのです。

自分で歯石を取って、それで解決しないことが大切でしょう。歯石ができてしまうということは、「その箇所が磨き残しになっている」ということになります。
歯垢は、歯磨きで除去されないまま長時間経過すると、歯石になります。歯垢が歯石になるまでには、2週間程度かかるとされています。歯石が付着しやすい箇所の、ブラッシング方法を見直すことも大切でしょう。

歯石を自分で取り続けることは、良いこととは言えません。歯石が付着してしまう、根本の原因を解決することも大切なことなのです。

歯医者での歯石除去は病気の早期発見につながる

「歯石を取るためだけに歯医者に行くのは…」と思っている人も少なくないと思います。しかし、痛みが出れば、歯医者に駆け込む人は多いでしょう。

痛くなってから歯科を受診するのでは遅いです。歯石除去で歯医者を受診することによって、病気の早期発見につながるでしょう。虫歯も歯周病も、進行しなければ自覚できるような症状が現れません。そのため、痛くなる前の受診が必要になります。

「歯石取りのためだけに」と思っている人も、医師に口の中をチェックしてもらえる、病気を初期段階で見つけてもらえる、というメリットを知れば、歯石取りに歯科を受診することが大切なことだと理解できるのではないでしょうか。

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