歯石とは?付着による悪影響と5つの予防ポイント
「もう何年も歯医者に行ってない」
という人は多いと思います。痛くなったりする歯がなければ、歯医者に行かない人も多いかもしれません。
しかし、痛みなどの症状がなくても、歯石が付いていたり、汚れが蓄積していたりする可能性があるでしょう。
年齢によっても違ってくるかと思いますが、「歯石取りをしたことがない」「自分の口の中に歯石があるのかどうかわからない」という人も少なくありません。そもそも、歯石とはどのようなもので、どうして歯に付着してしまうのでしょうか。
歯石とは何?
歯石とは、「歯垢(プラーク:細菌のかたまり)」が石灰化し、石のように硬くなったものです。歯と歯茎の境目などに付着し、白っぽい色をしている場合が多いです。
歯石は、唾液中のカルシウムやリンなどのミネラル成分がプラークに付着し、石灰化することでつくられます。口の中に残ったプラークがもとで歯石ができてしまいますが、唾液も歯石の形成に影響しています。そのため、唾液腺に近い上の奥歯の外側や下の前歯の裏側などにできやすいと言われています。
また、プラークが歯石になるまでには時間がかかり、2週間程度かかります。プラークは歯ブラシで除去できますが、歯石は歯科医院で除去する必要がありますから、蓄積したプラークを放置せず早めに除去することが歯石を防ぐために大切だと言えるでしょう。
歯石の種類
歯石は、付着する場所によって2つの呼び名(種類)があり、歯茎より上の歯の表面にできるものを「歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)」、歯茎よりも下で歯と歯肉との間の溝(歯周ポケット)にできるものを「歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)」と言います。
歯肉縁上歯石
白っぽい色や黄色っぽい色をしていて、比較的柔らかい歯石です。歯肉縁上歯石の形成には、唾液中のリン酸カルシウムなどが関係しています。
歯肉縁下歯石
歯肉縁下歯石は、黒褐色でかなり硬く、除去しにくい特徴があります。歯肉縁上歯石とは異なり、歯周ポケットの中の歯肉溝からの浸出液や血液などが関係しているため、黒褐色になったりします。
歯肉の下でかたく付着しているために、通常の歯石除去(スケーリング)では除去できないケースも多くあります。
歯石がついているとどうなる?
歯石を放置しておくと、どのようなことが起こるのでしょうか。歯石が付着しているという自覚のない人でも、歯石がついているケースは少なくありません。セルフケアだけではプラークを完璧に除去することは困難なので、知らないうちに歯石がついてしまっている場合も多く、誰もが注意しなければなりません。
「歯石そのものが何か悪さをするようなことはない」というのが実状ですが、だからと言って歯石がついたままにしておいても大丈夫ということはないのです。
歯石と歯周病の関係
歯石の表面には凸凹があり、そこにプラークが付着しやすくなったり、細菌が住みついたりしてしまいます。歯石の穴の中の細菌や汚れは、歯ブラシで除去するのが困難であるため、歯周病のリスクを高めることにつながってしまいます。
歯石そのものは歯周病の原因となりませんが、歯石がついていることで、原因細菌の除去が困難となってしまうため、歯周病のリスクが高まるのです。
歯石と虫歯の関係
結論から言うと、歯石は虫歯の原因にはなりにくいです。プラークは虫歯の原因なのですが、石灰化して歯石になると、虫歯の直接の原因にはならないのです。
虫歯は、プラークが歯に付着し、その中に含まれている細菌が、歯の表面を溶かして穴を空けていきます。歯石が付着しやすい箇所は、唾液の分泌が多い箇所です。そこは、唾液の作用によって再石灰化しやすい箇所であり、虫歯リスクの低い箇所と言えるでしょう。
もちろん、「虫歯の原因にならないから歯石を取らなくても良い」ということにはなりません。口の中を清潔に維持し、歯石除去によって歯周病を予防することは、口の中の健康維持に欠かせないことです。
歯石と口臭の関係
普段から口臭を気にして、歯磨きをしたり、ガムを噛んだりしている人も少なくないでしょう。しかし、歯石が原因で口臭が強くなっているのなら、根本の原因である歯石を除去しなければ口臭を改善できないでしょう。
歯石は歯ブラシで除去できませんし、ガムを噛んでも除去できません。現在行っている口臭対策で、効果を得られていないのならば、歯石の付着を疑っても良いかもしれません。
プラークによる口臭
歯に付着した歯石の表面はザラザラしているため、歯石が付着していることで汚れが付きやすくなってしまいます。
プラーク内の細菌は、口臭の原因となるガスを放出しますから、歯石が付着していることで口臭が強くなりやすくなると言えるでしょう。
歯周病による口臭
歯石は歯周病の原因となりますが、歯周病も口臭の原因となります。歯周病の原因菌は、口臭の原因となる物質を作り出すためです。
歯周病は痛みがないまま進行していきますが、口臭が原因で歯周病に気付く人も多いです。
歯石は歯周病のリスクを高めます。口臭の予防だけでなく、口の中の健康維持のためにも、歯石を定期的に除去して、歯周病を防ぐことが大切です。
歯石が付きやすい場所とは?
磨き残しになりやすい箇所として、歯と歯の隙間・奥歯の噛み合わせ部分などが挙げられますが、磨き残しが全て歯石になるわけではありません。
先にもあるように、歯石が形成されるには唾液の影響も受けるため、歯石が付きやすい場所はプラークが付きやすい場所とは少し違っています。
歯石が付きやすい場所は次の通りです。効果的に歯石を防ぐため、次のような箇所に注意してケアを行うことも大切でしょう。
【歯石が付着しやすい箇所】
- 舌の前歯の裏側
- 上の奥歯の頬側
歯石の付着を防ぐ5つのポイント
歯石を防ぐには磨き残しをなくすことが第一ですが、次のようなポイントに気を付けることで効果的に歯石を防ぐことができるでしょう。
もちろん、セルフケアを行ったうえで、定期的に歯科医院でのチェック・歯石除去を受けることが大切でしょう。
1.歯みがきを丁寧に行う
どんなに丁寧に磨いても多少なりともプラークは残るものです。が、それでもやはり歯みがきは口の中の環境を守るための基本中の基本です。時間をかけて一本一本丁寧に磨いていくこと、これが最も大切なことです。
また、歯ブラシを長く使いすぎることは良くありません。1ヵ月に1回が交換の目安とされていますが、毛先が開いてきたら新しい歯ブラシに交換することが大切でしょう。毛先の開いた歯ブラシを使っていては、歯垢除去効果がダウンしてしまいます。
2.酵素入り歯みがき粉の使用
プラークを分解してくれる酵素入り歯みがき粉の使用も効果的です。プラークの分解、除去をサポートしてくれますし、プラークが付きにくくなる効果も期待できます。
歯磨き粉にはさまざまな成分が含まれていますが、自分の目的に合った成分を含むものを選ぶことが大切でしょう。
3.電動歯ブラシの使用
電動歯ブラシは、その細かい振動によってプラークを浮かしたうえで落とす効果があり、手で磨くより除去率を高めることも可能です。
といっても、電動歯ブラシを正しく使用することが必要になります。近年は、音波歯ブラシ・超音波歯ブラシなど、さまざまな効果が期待できる電動歯ブラシが販売されています。
音波歯ブラシと超音波歯ブラシで使用方法が異なりますし、商品によっても若干の違いがあると言えるでしょう。取扱説明書を十分に確認するなど、より効果的に使用するために正しい使い方を確認することが大切です。
4.デンタルフロス・歯間ブラシの使用
磨き残しになりやすい箇所として歯と歯の隙間があげられますが、歯と歯の隙間は歯ブラシだけでは汚れを落としにくいです。歯間部の汚れは、歯間部専用の清掃用具を使用すると良いでしょう。
デンタルフロス・歯間ブラシを使用することで、歯と歯の隙間の汚れを効果的に除去することができます。歯と歯の隙間はその人によって異なりますから、自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。
5.歯の磨き方を見直す
大人になると、歯磨きができて当たり前という感覚だと思います。しかし、正しく磨けているとは限らないというのが実状です。
磨き方にクセがついてしまっていたり、利き手側の歯を上手く磨けていなかったり、大人の中にも上手く磨けていない人が多いようです。
歯科医院では歯磨き指導を行っています。子供だけでなく大人に対しても、歯の磨き方を指導してくれます。
毎日行っている歯磨きの効果を高めるために、歯の磨き方を見直し、正しい磨き方習得に努めてみてはいかがでしょうか。
唾液の質が歯石のつきやすさに影響!?
歯石がつきやすい人もいれば、歯石がつきにくい人もいます。これは、歯磨きの質だけでなく、唾液の成分も影響しています。
唾液の質・量は、その人によって違います。唾液の組成によって、歯石が付着しやすい人もいると言えます。
そのため、普段から丁寧なケアをしているのに歯石が付きやすいという人もいるでしょう。歯石がつきやすいことで歯周病のリスクが高くなってしまう場合もあるため、定期検診を受けることが大切です。また、歯科医院では唾液検査により、唾液の量や質を調べることも可能です。
自分の口の中のことをよく知り、その状態に合ったケアが、効果的な歯石予防・歯周病予防につながると言えます。
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