活性酸素とは?発生する原因と対処法
「老化を促進する物質」として、活性酸素は多くのメディアで取り上げられていますね。
「キャベツで抗酸化作用アップ」「トマトで活性酸素を除去」などと耳にする機会は多いものですが、実際のところ、なぜ活性酸素が発生するのか、身体にどんな悪影響があるのかを理解していない方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、活性酸素とはなんなのか、発生するメカニズムや身体に及ぼす影響について詳しく説明します。さらに、あまり知られていない活性酸素と歯周病の関係についても触れていきます。
活性酸素とは?
活性酸素とは、一重項酸素、過酸化水素、スーパーオキサイド(スーパーオキシドアニオン)、ヒドロキシラジカルといった物質の総称で、酸化力の強い酸素のことを指します。
人間は、生きていくのに必ず酸素を必要とする生き物です。健康な成人であれば、1日におよそ500Lの酸素を取り込んでいます。酸素は細胞の中のミトコンドリアという器官でエネルギーに変換され、生命活動のために使われます。細胞が酸素を消費する一方で、その一部(およそ2%)が活性酸素に変化します。
活性酸素の働き
なぜ、エネルギーを生み出す過程で、身体に悪い活性酸素が産生されてしまうのでしょうか。
実は、活性酸素には細菌やウイルスに対抗する殺菌作用があり、健康を維持する役割を担っています。
通常、スカベンジャーと呼ばれる抗酸化作用を持つ物質によって、活性酸素は産生量を上手くコントロールされています。
しかし、加齢や生活習慣の乱れ、ストレスなど様々な理由によって抗酸化力が低下すると、活性酸素が増え過ぎてしまい、健康な細胞や組織までを酸化させてしまいます。その結果、身体に様々な悪影響を及ぼすのです。
活性酸素が増え過ぎると…
酸化力の強い活性酸素が増え過ぎると、全身で酸化現象が引き起こされます。
活性酸素が起こす酸化とは、いわば金属の酸化現象である「サビ」のようなものです。動脈硬化・糖尿病・高血圧、がんといった生活習慣病の悪化や、お肌の衰え(シミ・シワの増加)などを引き起こします。
その他、活性酸素は目が白く濁ってしまう白内障の発症リスクを高める要因のひとつであることも明らかとなっています。
活性酸素と歯周病の関連性
実は、活性酸素は歯周病とも深く関わりがあります。
そもそも歯周病とは?
歯周病は、細菌の作り出す歯垢(プラーク)の蓄積によって引き起こされます。
虫歯も歯垢によって発生しますが、歯垢中の菌種や付着する部位は異なります。虫歯を引き起こす歯垢は歯に付着し、歯周病を起こす歯垢は歯肉に付着するのです。
歯肉の中でも、歯と歯肉の境目にある狭い歯肉溝(歯周ポケット)には多くの歯周病菌が住み着き、歯垢を作って増殖して、歯周組織を破壊していきます。
歯周病でも活性酸素が増える
歯周病は歯周病菌が起こす感染症です。歯周病菌をやっつけるために、好中球や白血球などの殺菌作用を持つ免疫細胞が活性化すると、免疫細胞は活性酸素やプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)などを産生して歯周病菌を殺そうとします。
歯周病菌をやっつけた時点で終了すればよいのですが、活性酸素が増えすぎてしまうと、歯周病菌だけではなく歯周組織まで破壊してしまいます。その結果、身体の防御反応として炎症が起こり、役割を果たした免疫細胞は死んで膿の一部となり、排出されます。いわゆる歯槽膿漏の状態です。
つまり、歯周病になると、「歯周病になる→免疫細胞が歯周病菌をやっつける→活性酸素が放出される→歯周病が進む→免疫細胞が…」という悪循環に陥り、活性酸素が増加してしまうのです。
活性酸素が発生してしまう原因とは?
活性酸素は、普段から常に身体の中で産生されています。私たちの身体が持つ抗酸化力は年齢を重ねるとともに衰えていきますが、特に活性酸素が産生されやすくなる要因として、以下のようなことが挙げられます。
1.紫外線
強い紫外線を浴びると、身体を守ろうとして、活性酸素のひとつである一重項酸素が増えてしまいます。一重項酸素はエラスチンやコラーゲンを破壊して、皮膚の弾力を低下させてシワを形成します。
また、活性酸素のひとつであるヒドロキシラジカルは、紫外線を浴びると増えて脂質を酸化し、過酸化脂質を生み出します。過酸化脂質が溜まっていくと、リポフスチンという老化色素が作られ、シミの原因になります。
2.偏った食生活
「いつも同じものを食べている」「食品添加物がたくさん入ったお弁当やお惣菜をよく食べる」「ビタミン摂取量が不足している」といった食生活の乱れは、様々な形で身体にダメージを与えます。
その際の防御システムとして活性酸素が増え、酸化ストレスが高まった結果、身体の細胞や組織を傷つけてしまいます。
3.ストレス
精神的・肉体的に強いストレスがかかると、脳下垂体の前葉からコルチゾールという副腎皮質ホルモンが分泌されます。コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれ、分解される際に活性酸素を生じます。
4.過度な運動
ランニングや水泳など、激しい有酸素運動をすると、大量に酸素が必要になります。身体に取り込まれる酸素量が増えると、活性酸素に置換される酸素も多くなり、結果的に活性酸素が増えます。
5.喫煙
百害あって一利なしのタバコは、タールやニコチン、一酸化炭素などといった多くの有害物質を含んでいます。煙草に含まれる毒物に抵抗するため、活性酸素が増えると、その増えた活性酸素もまた、身体に悪影響を与えるという悪循環につながります。
6.口臭
実は、口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物(VSC)という悪臭を放つガスも、活性酸素を増やすことが分かっています。
揮発性硫黄化合物は、口腔粘膜から剥がれ落ちた垢や白血球などのタンパク質を、口の中の細菌が分解した結果、発生するものです。また、歯周病菌によっても産生されます。
硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどが主要で、特に大きな割合を占めるのが硫化水素とメチルメルカプタンです。中でも硫化水素は人体に有害な毒ガスで、高濃度のものを吸い込むと命に関わるケースもあります。
活性酸素を除去する方法
増えすぎた活性酸素を除去するには、まず、生活習慣や食生活の見直しから始める必要があります。
生活習慣の見直し
過剰なストレス下にある方は、ゼロにする必要はありませんが、負荷を減らすことが大切です。運動も同様で、やり過ぎず、不足しないよう、適度な運動を継続的に行いましょう。
また、紫外線もビタミンDを作るのにある程度は必要なものですので、全く浴びないことは身体によくありません。
一方、完全に止めた方がいいものはタバコです。活性酸素を増やすだけでなく、全身に様々な害を与えますので、禁煙することをおすすめします。
また、身体には、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)という酵素が備わっており、活性酸素を除去する働きがあります。生活リズムを整えることによって、SODのように身体に備わっている防御機構をうまく活性化させることが重要となります。
食生活の見直し
活性酸素に対してはビタミンが有効です。ビタミンを多く含む野菜や果物を毎日食べましょう。特に、ピーマンや苺、キウイなどに豊富に含まれるビタミンC、ナッツ類や豆類に多いビタミンEは、細胞が酸化するのを防いでくれます。
ビタミン以外にも、牛や豚のレバー、ホウレンソウなどに含まれるα-リポ酸や、トマトに含まれているリコピン、紅鮭や蟹など赤い魚介類に多いアスタキサンチンは、抗酸化作用に優れた成分です。活性酸素を除去するためにも、これらの食品を積極的に取り入れましょう。
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