奥歯が臭いときは虫歯・歯周病・磨き残しを疑いましょう
鏡を見ながら歯磨きをする場合、前歯は目で直接見ながら磨くことができるので、食べかすや着色などにすぐに気づくことができますが、奥歯となると暗いうえに、手前の歯との間がとても見えづらくなります。
異常があっても見えにくいことから、そのまま放置すると虫歯や歯周病が進み、口臭が発生してしまう場合もあります。「なんだか最近、奥歯が臭い…」と感じているは、その原因を探ってみましょう。
奥歯の臭いの原因は?
奥歯が臭いなと感じたときは、まず口腔内の異常を疑ってみましょう。奥歯が臭う原因としては、虫歯、歯周病、磨き残しなどが考えられます。
1.虫歯
虫歯で奥歯が臭くなる理由には、歯に穴が開いて歯垢汚れが溜まること、細菌が増殖すること、進行すると膿が溜まることなどが挙げられます。特に奥歯は虫歯になりやすいので、しっかりとケアする必要があります。
虫歯は進むほど臭くなる
虫歯には進行段階があり、進行すればするほど臭いを発するようになります。
虫歯のスタート地点は、歯垢(プラーク)という細菌の集まりが歯に蓄積するところから始まります。歯垢が溜まると、歯の表面のエナメル質が細菌の放出する酸によって溶かされます。エナメル質が溶かされると、最初に歯が白色や茶色に濁ってきますが、この段階では臭くなることはありません。
そのまま放置して治る場合もありますが、歯垢が一向に除去されないと、エナメル質の下の象牙質に虫歯が進行します。歯が黒くなり、穴が開いて、しみる・痛いなどの症状が少しずつ出てきます。穴の開いた部分は柔らかくボロボロに崩れ、虫歯菌が増殖しているため、嫌な臭いが発生します。
その後も放っておくと、細菌は歯の神経である歯髄に達します。菌に感染した歯髄はやがて腐り、ここでも口臭が発生する可能性が高くなります。
神経が死んだ歯を治療しないでいると、歯の中に細菌が繁殖して炎症を起こし、その結果として膿が出ます。膿は歯の上から出てくるわけではなく、歯肉にフィステルという穴を開けて排出されます。口の中に膿があれば、やはりその膿からニオイが発生してしまいます。
奥歯は虫歯になりやすい
成人では、親知らずを抜くと全部で28本の歯が生えています。歯には虫歯になりやすい歯となりにくい歯があり、国の統計によると、虫歯になりやすいのは大臼歯という奥歯2本の歯です。
なぜ奥歯は虫歯になりやすいのかというと、その理由は歯の形状にあります。奥歯は溝が複雑な形をしているので、溝に歯垢が溜まりやすく、虫歯が発生しやすいのです。また、奥歯の歯と歯の間も虫歯になりやすい場所の代表です。
詰め物の下の虫歯も臭くなる
奥歯は虫歯になりやすいので、歯を削って詰め物や被せ物で治療する確率が高くなりますが、一度削って金属などを被せた歯は、何もしていない歯に比べて圧倒的に虫歯になりやすくなります。
しかも、発生した虫歯は金属と歯に密閉されているため、唾液で洗い流されることもなく、ひたすら増殖します。
詰め物の下で歯がボロボロに溶かされていくと、ニオイが発生します。このような、一度治療した歯が再び虫歯になることを二次カリエス(二次う蝕)といいます。
2.歯周病
進行した重度の歯周病は、高確率で口臭を発生させます。歯周病は、歯と歯肉の境目にある歯周ポケットに住む歯周病菌が原因です。
虫歯と同じく、歯垢が溜まると歯周病菌は増加し、歯周ポケットの中にバイオフィルムというヌルヌルした隠れ家を作り始めます。バイオフィルムは歯磨きによって除去できますが、磨き残しによって残された部分では歯周病菌が増殖します。
増えた歯周病菌は毒素を放出して歯肉の炎症を引き起こし、歯周ポケットは深くなり、出血や痛みが生じます。腫れがひどいときは痛みで食事がとれないケースもあります。歯の土台となる歯槽骨が溶け、歯がグラグラしてきます。
また、歯垢を放っておくと、唾液中のカルシウム成分によって歯石という白く硬い物質へ変化し、歯にピッタリとくっつき続けます。歯石は歯磨きで除去できない上に細菌が繁殖しやすく、歯周病を進行させる悪因のひとつとなります。
揮発性硫黄化合物(VSC)がニオイの元凶
歯周病での口臭の原因は、細菌の排出する揮発性硫黄化合物(VSC)という臭いガスです。細菌は、食べかすや剥がれた口腔粘膜からエネルギーを得る際に、タンパク質を分解します。この代謝産物としてガスが発生するのです。
揮発性硫黄化合物には硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドの3種類が存在し、口腔内ではその多くが舌の表面の舌苔(ぜったい)から発生します。舌苔の次に揮発性硫黄化合物が多く検出されるのが歯周病です。
歯周病では、特にメチルメルカプタンが高濃度で検出されるのが特徴で、口臭物質を測定するメーターによって、この物質が多く検出された場合は、口臭が歯周病によるものだと判断することができます。
揮発性硫黄化合物は硫黄を含んでいるので、温泉のような、卵の腐ったような臭いがします。人によっては、腐った玉ネギのような臭いだったり、ドブのような臭いだったりもします。
歯槽膿漏では膿で臭くなる
重度の歯周病で歯茎がブヨブヨになり、膿が出る状態を、俗に歯槽膿漏と呼びます。身体が細菌と闘う過程で炎症が起こり、その結果として膿が生じるのです。
膿の正体は、免疫細胞である白血球の死骸や細菌の残骸などです。膿が歯周ポケットから出されると、生臭いような不快な臭いがします。
3.歯垢や食べかす
奥歯の歯と歯の間に食べかすが詰まったままの状態を放置すれば、当然奥歯は臭くなります。また、歯垢は細菌が90%を占めているので、多く取り残されていればいるほど臭いを感じます。
歯垢や食べかすをそのままにしていると、虫歯や歯周病の原因になり、さらに口臭が悪化する恐れがあります。
奥歯の臭いを解消するには?
奥歯からの臭いを消すためには、臭いの元と考えられる虫歯・歯周病を治すこと、また予防するためにしっかりと歯磨きをすることが大事です。
1.虫歯や歯周病は早めに治療する
- 奥歯の溝が黒くなっている
- 黒い点状の穴がある
- デンタルフロスが歯と歯の間にひっかかる
上記のような症状がある場合、虫歯ができている可能性が高いです。進行する前に早めに歯科医院を受診し、適切な治療を受けましょう。
また、歯周病は軽度の状態では自覚症状がない場合も多いのですが、悪化すると歯肉を悪くするだけでなく、全身疾患にも関連する怖い病気です。歯周病菌は心臓病や骨粗しょう症、糖尿病、肺炎、早産などと関連性があると指摘されており、治療せずに放置していると、細菌が血液中に入り込み、全身に影響を及ぼす可能性があります。
「虫歯・歯周病にならないために定期的に歯科医院に通う」という予防に基づいた考え方が、全身の健康を守る上で重要となります。
2.奥歯の磨き方を見直す
奥歯は歯ブラシが届きづらく、磨き残しが多くなってしまう場所です。特に大臼歯の溝は歯垢が溜まりやすいため、溝の中の汚れを掻き出すように歯ブラシを小刻みに動かしましょう。歯ブラシを奥歯に当てるときは、口を開き過ぎず、身体の軸に対し45°の角度で入れるとスムーズです。
また、奥歯をよりキレイにするには、「デンタルフロス」や「ワンタフトブラシ」など、歯ブラシ以外のグッズを活用することも重要です。
デンタルフロス
歯ブラシだけでは、歯と歯の間を十分に磨くことができません。そのため、歯間ケアを行うデンタルフロスは、歯ブラシと同じくらい大切なツールです。
奥歯の臭いをとるためには、必ず歯磨きの後にデンタルフロスで歯と歯の間を掃除するようにしましょう。奥歯だけでなく、全ての歯間に通すことで、さらに口臭を予防する効果につながります。
ワンタフトブラシ
ワンタフトブラシは、ヘッドが歯ブラシの1/3くらいの大きさになった歯ブラシです。狭い奥歯にもしっかりフィットするため、細かい溝の汚れを除去するのに最適で、顎の小さい子供や女性にはより適しています。
小さな歯ブラシを使ってみると、普段使っている歯ブラシがいかに奥歯に当たっていないかを実感することができます。もし、ワンタフトブラシが薬局に売っていなければ、赤ちゃん用の小さな歯ブラシを代用品として使用するのもよいでしょう。
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