歯周病の原因と発症リスクを高める生活習慣・病気
歯周病を予防するには、なんとなく歯磨きをしているだけでは十分とは言えません。もちろん、歯磨きは歯周病予防に欠かせませんが、効果的に予防するならば、さまざまな角度からの予防が効果的です。
歯周病の発症には、さまざまな原因が関係しています。単に歯磨きをしただけでは、十分な予防効果を得られない場合もあるでしょう。歯周病は発症原因だけでなく、発症リスクを高める要因を取り除くことも必要なのです。
十分な知識を身に付けることが、歯周病の効果的な予防、全身の健康につながります。
歯周病とは?発症のメカニズム
口腔内の細菌が原因で発症する病気には、主に虫歯と歯周病があります。虫歯は細菌によって、歯が溶かされますが、歯周病は細菌によって歯茎や歯を支える骨が破壊されてしまう病気です。
歯周病は、虫歯と並んで歯を失う主な原因となっています。歯周病になっても歯自体にダメージはありませんが、歯を支える組織が破壊されてしまうため、歯を支えられなくなって歯がグラグラになってしまうのです。重度の歯周病になると、歯の脱落を招きます。
歯周病になる直接の原因は?
歯周病の原因は、プラークです。プラークの中に含まれている細菌によって引き起こされます。
歯と歯肉の境目にプラーク(歯石)が付着すると、その中の細菌が歯茎に炎症を起こします(歯肉炎)。
さらに歯周病が進行すると、歯と歯茎の隙間に細菌が入り込み、歯茎の奥へ奥へと炎症が進んでいきます。
歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)は深くなり、歯を支える骨(歯槽骨)をも溶かしてしまいます。
そもそもプラークとは?
プラークとは、歯の表面に付着している白くてネバネバした細菌の塊です。また、歯とプラークの接触面にはペリクルと呼ばれる被膜が覆っています。この皮膜は、唾液中のタンパク質からできていて、細菌繁殖の足がかりとなります。
口腔内にはさまざまな細菌が存在し、700種類以上の細菌が口腔内で共棲しています。この細菌の中には病気を引き起こす原因となる細菌もありますが、有害な細菌が感染するのを防いでくれる細菌もいます。
虫歯や歯周病の原因菌がプラーク内で繁殖することにより、虫歯や歯周炎が発生してしまうのです。
歯周病を引き起こす細菌はさまざま
先にもありましたが、口の中にはさまざまな細菌が存在しています。プラーク1ミリグラム中に含まれる細菌の数は、1億個とも言われています。
歯周病の発症に関与するとされている細菌は、主にP.g.菌・A.a.菌・P.i.菌・B.f.菌・T.d.菌がよく知られていますが、これらの他に数十種の細菌が、歯周病と関係していると考えられています。他の疾患とは異なり、歯周病はさまざまな細菌が、発症に関連しているとされています。
細菌には、酸素があるところで繁殖しやすい好気性細菌と、酸素がないところで繁殖しやすい嫌気性細菌がありますが、歯周病の原因となる細菌は嫌気性細菌です。空気の少ない歯周ポケット内で繁殖し、歯周病をどんどん進行させてしまいます。
歯周病と虫歯の原因細菌は違います
歯周病も虫歯も、プラーク内の細菌が原因となって発症します。虫歯の原因となる細菌に、ミュータンス菌がよく知られていますが、ミュータンス菌は歯周病の原因にはなりません。
唾液検査で口の中の細菌の数を調べることができますが、どの細菌が口の中に多いかによって、虫歯や歯周病のリスクがわかるのです。
そのため、「虫歯になりにくいから歯周病にもなりにくい」ということはありません。虫歯が全くなかったという人も、歯周病を発症します。また、「虫歯になりやすくても歯周病になりにくい」など、逆のことも言えるでしょう。
歯石も歯周病の原因になる?
歯と歯茎の境目に歯石が付着すると、そこに付着したプラーク内の細菌が歯周ポケット内に侵入しやすくなります。歯石を足場として、歯周ポケット内に細菌が入り込んでしまうのです。
歯石が付着すると、歯の表面が凸凹になるため汚れが付着しやすくなってしまいます。また、歯石は密度が軽石のように低いため、スカスカしていて内部に細菌を含んでいます。歯石が付着したままにすることは、歯石の表面や内部に細菌が存在するため、歯周病の発症・進行を招いてしまうのです。
歯石除去は歯周病の予防・治療において不可欠です
歯周病の治療・予防の基本は、プラークコントロールです。毎日の歯磨きを正しく行うことも大切ですが、自分では除去できない歯石を、歯科医院で取ってもらうことも大切です。
歯石は歯周病の原因となりますから、定期的に歯石を除去してもらうことが大切です。
歯周病の発症・進行のリスクを高める主な5つの原因
口の中に原因菌が存在するだけで、歯周病の発症につながるわけではありません。さまざまな要因が複雑に関係して、歯周病は発症します。
歯周病の発症リスクを高めたり、進行しやすくしたりする原因には、主に次のようなものがあります。
疲労・ストレス
疲労やストレスが蓄積されると、免疫力が低下してしまいます。そのため、歯周病発症のリスクが高まってしまうのです。
日頃から疲れやストレスを蓄積しないよう、心がけることが大切です。
糖尿病
糖尿病の人に歯周病を発症しているケースが多く、重症化しやすい傾向があります。特に血糖値のコントロールができていない人ほど、重症化・進行しやすいとされています。
糖尿病の人は、適切な血糖値コントロールを行い、歯周病の発症・進行を予防することが大切です。
ホルモンバランス
男性よりも女性の方が、歯周病のリスクが高いとされています。それは、女性ホルモンによって、歯周病の原因細菌の繁殖が促進されることなどが要因となっていまいす。妊娠中に発症する歯周病を、特に妊娠性歯周炎と呼ばれますが、妊娠中の女性ホルモンの変化が原因となります。
ホルモンバランスを乱さないことも大切ですが、日常的な歯周病予防が女性には大切なのです。
喫煙習慣
喫煙者は、非喫煙者よりも歯周病にかかりやすいことがわかっています。これは、タバコに含まれている成分(ニコチン)によって、歯肉の血流が悪くなり、免疫力が低下してしまうことが原因です。また、喫煙習慣があると、歯周病が発症しやすいだけでなく、歯周病が治りにくいため重症化しやすい傾向があります。
ドライマウス
ストレスも原因の一つであり、近年ドライマウスの人が増えているとされています。口の中が乾燥すると、口内細菌が繁殖しやすくなり、歯周病の発症リスクを高めてしまいます。
ドライマウスの原因はさまざまですから、自分の原因に合ったケアを行い、唾液の分泌促進に努めることが大切でしょう。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりが、直接的に歯周病の発症につながるわけではありませんが、歯周病の進行を促進する原因となります。
歯ぎしりや食いしばりによって、特定の歯・歯周組織に過剰に力をかけることは、歯周病の重症化を招いてしまいます。歯ぎしりや食いしばりの原因はストレスなどさまざまですが、噛み合わせが正しくないことも影響します。
歯周病が病気を招くことも!?全身疾患への影響とは
歯周病は糖尿病と深く関係していて、糖尿病の合併症の一つとも言われています。しかし、歯周病が関係する全身疾患はそれだけではありません。歯周病と糖尿病は相互に影響を及ぼしますが、歯周病が影響する全身疾患は他にもあるのです。
歯周病の全身疾患への影響は、明確になっていない部分も多いのですが、歯周病の予防・改善が全身の健康につながると言えるでしょう。
心臓病
歯周病にかかっている人は、心臓病を発症するリスクが高いとされています。
歯周病の原因となる細菌が、歯肉から血管に侵入すると、血液に乗って心臓まで運ばれることが影響するとも考えられていますし、歯周病の炎症によって作られる「サイトカイン」が心臓病発症に関与しているとも考えられています。
動脈硬化
歯周病とアテローム性動脈硬化症の関係が注目されています。アテローム性の動脈硬化が起こった部分から、歯周病の原因細菌が見つかっているのです。
炎症が起こっている細胞で産生される「サイトカイン」が、血液を通して血管や心臓に運ばれ、異常を引き起こすのではないかと考えられています。
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎が起きた肺から、歯周病の原因細菌が発見されています。
高齢になり、うまく食べ物を飲み込めなくなると、誤って食べ物(食べかす)や口の中に存在している細菌が肺に侵入してしまうことがあります。これによって起こる肺炎が「誤嚥性肺炎」です。高齢者では、命に関わる病気です。
誤嚥性肺炎を防ぐには、口腔ケアによって口の中を清潔に維持すること、歯周病を予防することが必要だと言えるでしょう。
歯周病は妊娠にも影響する!?
女性ホルモンは歯周病のリスクを高める要因の一つであり、ホルモンバランスが変化しやすい妊娠中は、特に歯周病に注意が必要な時期です。
しかし、口の中の健康に影響するだけでなく、歯周病は妊娠にも大きく影響すると考えられています。歯周病の原因細菌やサイトカインが血液に乗って子宮に運ばれると、子宮の収縮を招くとされているのです。
早産や低体重児出産となる可能性が高まるとして、妊娠中の歯周病予防、検診受診が勧められています。
定期的に歯科を受診しないことが歯周病の原因にも…
歯周病は、「サイレントキラー」とも呼ばれ、痛みなどの自覚しやすい初期症状なく静かに進行していく病気です。
そのため、症状に気付いた頃には、ある程度歯周病が進行してしまっているケースが多いようです。
定期的に歯科を受診することは、歯石除去など効果的な歯周病予防が可能になるだけでなく、歯周病を初期の段階で発見でき、適切な治療を早期に開始することにつながります。
歯周病の発症には、さまざまな要因が複雑に関係していますから、完璧な予防は簡単なことではないでしょう。定期的に歯科を受診し、早期発見・効果的予防につなげることが大切だと言えるでしょう。
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