十二指腸潰瘍の症状/口臭との関係性は?
皆さんは「十二指腸潰瘍」という病名を聞いたことがあるでしょうか。中には「病名だけは聞いたことはあるけれど、具体的にどのような症状が引き起こされるのかは理解していない」という方も多いことでしょう。
今回は十二指腸潰瘍の症状について、原因や予防・治療法、一症状である口臭にも触れながら詳しく解説していきます。「もしかしたら十二指腸潰瘍かも?」という方はぜひセルフチェックしてみてください。
十二指腸潰瘍とは?
十二指腸は胃と腸をつなぐ消化管のことです。十二指腸潰瘍とは、その胃と腸をつなぐ消化管の粘膜が傷つけられ、粘膜や組織の一部が失われてしまう病気のことを言います。
十二指腸潰瘍のほか、食堂潰瘍や胃潰瘍など胃酸によって引き起こされる潰瘍は消化性潰瘍と呼ばれています。
胃や腸と同様、十二指腸は胃酸や消化酵素によって傷つけられるのを防ぐため、内側が粘膜で保護されています。しかし、何らかの原因によってこの粘膜の働きが弱くなり、消化器そのものが傷つけられると潰瘍が引き起こされてしまいます。
十二指腸潰瘍の発症原因
十二指腸潰瘍の原因には、主に3つの要因が考えられます。
1.ピロリ菌
十二指腸潰瘍を引き起こす大きな原因となるのがピロリ菌です。胃酸の分泌が多いと、十二指腸までピロリ菌が流れ出てくることがあります。ピロリ菌は消化器の粘膜を弱らせますので、もともと胃に比べて胃酸への抵抗力が弱い十二指腸は傷ついてしまうのです。
2.非ステロイド性抗炎症薬
炎症を抑えたり解熱・鎮痛に用いられたりする非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)により、十二指腸潰瘍が引き起こされることがあります。
非ステロイド性抗炎症薬を継続的に飲み続けることで発症する消化性潰瘍を「NSAID潰瘍」と言います。
3.ストレス
肉体的・精神的ストレスが強くかかることによって自律神経の働きが乱れると、消化器の粘膜の血流が悪くなり、十二指腸潰瘍を発症することがあります。粘膜の血流が悪くなると、粘膜の防御機能が弱まり傷つきやすくなります。その結果、胃酸によって十二指腸の内側に潰瘍が形成されてしまうというわけです。
ストレスだけが十二指腸潰瘍の発症原因につながるということは少ないのですが、ピロリ菌感染者はストレスにより十二指腸潰瘍の発症リスクがより高まるとされており、このことからもストレスと十二指腸潰瘍の関連性は深いと考えられています。
十二指腸潰瘍の症状
十二指腸潰瘍の症状は人によって異なりますが、消化器の内側が傷つけられている状態ですので、痛みや胸やけなどの自覚症状が現れることがあります。
1.食欲の減退
十二指腸潰瘍に罹ると、食べ物が腸へと送り出されるまでに時間がかかり、食べ物が胃に長時間留まってしまうことがあります。この場合、なかなかお腹が空かなかったり、吐き気や嘔吐といった症状が現れたりして食欲が減退します。
もちろん、食欲減退の原因の全てが十二指腸潰瘍というわけではありませんが、十二指腸潰瘍の症状のひとつとして食欲の減退があることは覚えておくとよいでしょう。
2.上腹部が痛む
上腹部とは、へそと胸の間の部分のことを言います。お腹が空いているときに上腹部がキリキリと激しく痛み、ものを食べると痛みが和らぐのが十二指腸潰瘍の特徴です。これは、空腹時には胃酸過多になりやすく、十二指腸に胃酸が流れ出て痛みやすいために引き起こされるものです。
ただし、十二指腸潰瘍に罹っていても特に痛みを感じないという方も少なくありません。そのため、痛みの有無や度合いにより潰瘍の状態を自己判断することは難しく、痛みが気になるようであれば、早めの病院受診が必要となります。
3.胸焼けがする
十二指腸潰瘍に罹ると、胃酸が逆流しやすくなり、胸が焼けるような不快感を覚えることがあります。これは、食べたものが胃から腸へとスムーズに送られず、長時間にわたって留まると、食道に胃酸が逆流してしまうためです。
胸やけが頻繁に起きるときや、長期間にわたって続いているようなときは、念のため医療機関を受診するようにしましょう。
4.腹部が張る
胃潰瘍と十二指腸潰瘍の合併症を起こした場合、潰瘍の再発を繰り返すことで狭窄を引き起こし、腹部が張ることがあります。これは、物理的に消化管が狭くなってしまっているために、食物が通過しにくくなったことで起きる症状です。
お腹が張ること自体は十二指腸潰瘍以外の原因でも起こり得ますが、病気のサインのひとつとして見過ごさないようにすることが大切です。
5.吐血・下血
十二指腸潰瘍や胃潰瘍は、消化管の内側が消化液によって傷つけられている状態です。潰瘍が大きなものになってくると、それだけ出血量も多くなります。
潰瘍からの出血が多い場合、吐血や下血といった症状を引き起こすことがあります。吐血の症状が重い場合には、頻脈や低血圧によるめまいなどの症状が現れます。
また、酷い出血がある場合、潰瘍が深くなって穿孔(せんこう)という十二指腸の壁に穴が空いた状態となっている可能性があります。穿孔は胃潰瘍よりも十二指腸潰瘍の方が起こりやすく、早期に治療を行わなければ腹膜炎を起こしますので、手術を必要とします。
十二指腸潰瘍で口臭が発生することも…
健康な胃腸であれば、食べたものは順次胃から腸へと送られ、その過程で消化・吸収されていきます。ところが、十二指腸潰瘍に罹ると、正常に消化が進まず消化不良を引き起こしたり、胃から腸へスムーズに食べた物が送られなくなったりすることがあります。
胃から腸へと正常に食べた物が運ばれず胃に長く留まっていると、それらは胃の中で発酵し、イヤなニオイを発生させます。臭いの物質は血液中に取り込まれ、全身を巡って肺に達すると、呼気に混ざって口や鼻から排出され、口臭となってしまうのです。
また、ピロリ菌感染が十二指腸潰瘍の原因である場合、ピロリ菌によって口臭が悪化している可能性も考えられます。
十二指腸潰瘍の口臭ってどんなニオイ?
口臭にも様々なタイプがありますが、十二指腸潰瘍が原因の口臭は卵が腐ったような臭い(腐卵臭)に形容されます。
病気が原因の口臭は、その病気を完治させなければ改善できません。日頃から胃腸の調子が悪く、口臭を感じるという方は、十二指腸潰瘍の可能性も考慮して病院を受診することをおすすめします。
十二指腸潰瘍の治療・予防法
十二指腸潰瘍で最も多い原因はピロリ菌、次いで非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。現在では体内にピロリ菌がいるかどうかは内視鏡検査などにより診断されます。ピロリ菌が存在する場合は、除菌療法を進めていきます。
非ステロイド性抗炎症薬の副作用による十二指腸潰瘍では、自覚症状がないまま病気が進行することが少なくありません。非ステロイド性抗炎症薬を服用している方は、主治医に相談の上、定期的に胃や十二指腸の検査を受けるようにしましょう。
また、日々の生活習慣においても、過度なストレス、アルコールの過剰摂取、香辛料など刺激が強い食べ物・コーヒーや紅茶に含まれるカフェインの摂り過ぎなどには注意が必要です。暴飲暴食を控えて胃腸をいたわり、十二指腸潰瘍を予防しましょう。
原因が分からない口臭が続く場合は、十二指腸潰瘍をはじめとする内臓系の病気の可能性が考えられます。口臭が気になると、つい口腔ケアにばかり注意を向けてしまいがちですが、その原因は口の中だけとは限りません。丁寧に歯を磨いているにも関わらず口臭がなくならないときや、却って口臭がひどくなっているようなときは、念のため医療機関を受診するようにしましょう。
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