口臭にも関係する!唾液腺炎ってどんな病気?
普段、意識することは少ない場所ではありますが、健康に必要不可欠な唾液を分泌する唾液腺は、私達にとってとても大切な器官です。あることが原因で唾液腺に炎症が起きると、唾液の分泌が妨げられます。口腔内が乾燥してドライマウスになり、唾液がネバついて口臭が発生するといったことも少なくありません。
痛みを伴うこともある唾液腺炎は、日常生活を妨げる要因のひとつです。今回は、唾液腺炎とはどんな病気なのか、症状・原因・治療法について詳しくご紹介します。
そもそも唾液腺って?
唾液腺はその名の通り、唾液を分泌する器官のことです。唾液腺が唾液を分泌することによって、私達の口腔内は衛生が保たれています。
唾液腺には、主に「大唾液腺」という耳下腺・顎下腺・舌下腺の3種類が存在します。これらの唾液腺は頬から顎の下にかけて位置しており、唾液はそれぞれの唾液腺から出ている唾液腺管というホースのようなものを通って口の中に分泌されます。
最もわかりやすいのが、耳下腺から出ているステノン管です。鏡で頬の内側を確認すると、小さな膨らみのようなステノン管の出口が確認できます。唾液分泌が豊富な方は、歯磨きをしているとここから唾液がピュッと水鉄砲のように飛び出してくることもあります。
また、舌や唇には口唇腺・口蓋腺・臼後腺・頬腺・ブランディンヌーン腺などの「小唾液腺」という小さな唾液腺がたくさんあります。
唾液腺炎とは?
唾液腺炎とは唾液腺に炎症が起こる病気のことです。
唾液の分泌量には個人差がありますが、1日におよそ1~1.5リットルの唾液を分泌するとされています。
唾液には、リゾチームやラクトフェリンによる抗菌作用、虫歯菌が排出する酸を中和させてpHを安定させる緩衝作用、噛み砕いた食物を喉に送り込む消化作用、食事を美味しく感じるための味覚作用、口臭を発生させる細菌を洗い流す洗浄作用など、様々な役割があります。
唾液が分泌されないとこれらの作用が発揮されなくなりますので、水分がなくなって口腔内はカラカラに乾燥し、細菌が増殖して口臭が強くなります。細菌が増えるということは、虫歯や歯周病にもなりやすくなってしまいます。
さらに、舌が乾くことで味覚異常が起き、食べ物の味がわかりづらくなります。
唾液腺炎の種類別の症状・原因・治療法
唾液腺炎を発症する原因は様々で、その原因によって「ウイルス性」「細菌性」「アレルギー性」などに分類されます。代表的な唾液腺炎は「おたふくかぜ(流行性耳下腺)」や「シェーグレン症候群」、その他には細菌による細菌性唾液腺炎や唾石症などが挙げられます。
1.ウイルス性唾液腺炎(おたふくかぜ)
ウイルス性の唾液腺炎である流行性耳下腺炎、通称おたふくかぜは感染しても数週間は症状が出ませんが、次第に発熱・頭痛・口臭などが起こり、片側もしくは両側の耳下腺が腫れてくる病気です。稀に顎下腺が腫れることもあります。
通常は1~2週間程度で回復しますが、膵炎(すいえん)、髄膜炎、難聴などの神経症状が出ることがあり、難聴については15歳以下の子供に発症しやすいので注意が必要です。
原因
おたふくかぜの原因はムンプスウイルスというウイルスによる感染症です。ムンプスウイルスは咳やくしゃみなど、感染者の唾液を介した飛沫感染、ウイルスが付着した手などでします。ただし、ワクチンによる予防接種が可能です。
治療法
治療薬はないため、感染した場合は対症療法となります。水分をとって、安静にしておくことが一番です。
また、大事なのは他人への感染予防です。おたふくかぜは学校保健安全法で第2種感染症に指定されており、唾液腺の腫れが始まってから少なくとも5日間は治療に専念し、全身の症状が治るまで登校することを控えなければいけません。勤め先でも有給休暇をとって感染拡大を防ぐことが必要となります。
2.細菌性唾液腺炎
細菌性唾液腺炎では発熱、唾液腺の痛み・腫れなどが起こり、口を開けづらくなります。唾液腺の導管から膿が出てくることもあるため、化膿性唾液腺炎とも呼ばれます。急性耳下腺炎であれば、炎症が起きている片側の耳下腺が腫れ、片側から膿が排出されます。
原因
細菌性唾液腺炎の発症原因は細菌感染です。加齢やストレスなどで唾液の分泌が少なくなった結果、口腔内で細菌が増殖して導管に侵入し、最近が唾液腺に入ってきてしまうことにより引き起こされます。唾石症で併発することもあります。
治療法
感染症なので、抗生物質を飲んで安静にしていることが必要です。膿を出すために唾液腺管から洗浄を行うこともあります。
3.唾石症 (だせきしょう)
唾液腺炎の中でも、顕著に痛みが出るのが唾石症です。唾液腺内や唾液腺管の中に唾石(だせき)という硬い石ができるので、唾石がある側の唾液腺が腫れ、唾液腺の開口部が赤くなり、膿が出てくることもあります。この場合は細菌性唾液腺炎を併発しているということになります。
食事をする際も唾液腺が刺激され痛みを感じます。唾液腺の中でも、顎下腺由来のものが8割を占め、子供よりも大人が発症するケースが多いです。稀に耳下腺に起こる場合もあります。
原因
唾石症の発症原因は明確にはなっていませんが、唾液腺管の炎症や、唾液中のカルシウム成分の変化によるものと考えられています。
治療法
唾石症では、手術で唾液腺の近くの皮膚を切開し、唾石を取り除くというのが主な治療方法です。唾液腺管の中にある場合は、小さければ勝手に出てくることもあります。
4.自己免疫性唾液腺炎(シェーグレン症候群)
シェーグレン症候群は自己免疫疾患というアレルギーの一種で、免疫を司るリンパ球の免疫システムが狂い、正常な細胞にまで攻撃してしまう病気です。
シェーグレン症候群になると、ドライマウスになって口の中の粘膜がシワシワに委縮してしまったり、舌がツルツルになって痛みを感じたり、熱を帯びているような感覚になったり、耳下腺が腫脹します。
乾燥症状は口の中だけでなく、鼻や胃、涙腺にも影響を与えます。眼も乾きやすくなるため、乾燥性結膜炎を発症することもあります。
また、同じ自己免疫疾患である関節リウマチが合併症として起こるケースもあります。
原因
シェーグレン症候群の原因は未だに明らかにされていません。しかし、遺伝や環境、免疫異常などの様々な要因が重なり合うことで発症すると考えられています。また、女性の患者が大半を占めることから、女性ホルモンとの関連性も疑われています。
治療法
残念ながらシェーグレン症候群の治療法はなく、対症療法として唾液分泌が促進される塩酸ピロカルピンという薬が投与されます。
また、麦門冬湯(ばくもんどうとう)や白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)といった唾液分泌量を増やす漢方薬が保険適用で処方されます。
唾液腺炎になったら何科を受診すべき?
「熱が出て唾液腺が腫れている」「唾液腺付近が痛い」という場合は唾液腺炎の可能性があります。「唾液腺炎かも?」と感じたら、自分1人で悩んだり決めつけたりするのではなく、適切な検査を受けて、正しい診断をしてもらい治療を進めていきましょう。
受診すべき科としては耳鼻咽喉科か口腔外科です。おたふくかぜは全身に影響があるので、歯科系よりは医科系である耳鼻咽喉科に行くことをおすすめします。細菌性唾液腺炎も同様です。
逆に、唾石症は歯科のエックス線写真で判明することが多いので、歯科系である口腔外科に行く方がよいでしょう。
シェーグレン症候群の場合は症状が様々なので、自分で最初からシェーグレン症候群だと判断するのは困難です。口が乾く場合は歯科医院や口腔外科へ、眼が乾く場合は眼科へ、リウマチ症状が気になるのであれば膠原病科と、まずは症状に合わせて受診することをおすすめします。
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