よく噛むメリット/よく噛む習慣を身に付けるには?
子供の頃に「食べるときはよく噛んだほうがいい」「一口30回を目安に噛みましょう」などと言われたことがあるという方は多いのではないでしょうか。
意識しないとなかなか難しいことではありますが、よく噛むことは胃腸が食べ物を消化・吸収しやすくなるだけでなく、口臭予防や虫歯・歯周病予防などたくさんのメリットがあります。
今回はよく噛むことによって身体にどんなメリットがあるのか、詳しく解説していきます。
よく噛むと唾液の分泌が良くなります
人の体は、噛むことで唾液腺から唾液が分泌されるようにできています。最近は軟らかい食べ物を食べることが多くなっていますので、それほど噛まなくても消化・吸収に支障がないように思えるかもしれません。
しかし、よく噛んで唾液を分泌することで得られる効果は多岐にわたります。具体的に唾液がどんな効果をもたらすのかを解説します。
1.口臭を予防する
唾液には、口の中の衛生状態を清潔に保つための自浄作用や抗菌効果があり、口腔内の細菌の繁殖を抑制して口臭を予防してくれます。
また、口の中がカラカラに乾いてしまう「ドライマウス」という症状は、口臭を悪化させる原因のひとつです。そのため、よく噛むことで唾液の分泌を促し、口腔内を適度に潤しておくことはドライマウスの予防、つまり口臭の予防にもつながります。
2.虫歯や歯肉炎・歯周病を予防する
食事中の口腔内は酸性に近づくため、歯は少しずつ溶けていき、食事が終わると溶けたところを修復していきます。これらの現象をそれぞれ「脱灰(だっかい)」、「再石灰化」と呼びます。間食が多いと虫歯になりやすいのは、十分に再石灰化が進まないところへ次の脱灰が生じるためです。
唾液は再石灰化を促します
虫歯を防ぐには歯の再石灰化が重要となりますが、この再石灰化を促すのが唾液の役割です。唾液には再石灰化を促す成分が含まれています。
また、唾液には口腔内の細菌の繁殖を抑制する効果があるため、歯周炎や歯周病の予防にも欠かせません。
虫歯や歯周病といった口腔トラブルを予防するには、よく噛んで唾液を増やすことがとても重要なのです。
3.癌を予防する
食品には微量の発癌性物質(正常な細胞組織を悪性腫瘍に変異させる成分)が含まれていることが少なくありません。もともと発癌性のない食品でも、魚や肉が焦げてしまうことで発癌性物質に変化する場合もあります。
唾液に含まれる「ペルオキシダーセ」という酵素には、食品の発癌性を抑える効果がありますので、よく噛んで唾液を分泌することでガン予防の効果が期待できます。
4.食べ物の消化を助ける
唾液に含まれるアミラーゼという酵素には、炭水化物を糖に変える働きがあり、胃腸での消化・吸収を助けるための重要な役割を担っています。唾液がたくさん分泌されることで、消化不良を予防してくれます。
よく噛むことは唾液の分泌を促す以外にもメリットが!
よく噛むことは唾液の分泌を促し、様々な効果をもたらすことがわかっています。しかし、よく噛むことのメリットは唾液の分泌だけではなく、全身の健康にも大きく関わっています。
1.脳の働きを活性化する
よく噛む動作は脳神経を刺激し、血流を良くして脳を活性化させます。実際に、よく噛むことによって記憶力が向上したり、認知症の予防に役立ったりすることが分かっています。
自分の歯で噛むことができる方と、自分の歯がないために噛むことができない方とでは、認知症にかかるリスクが大きく異なるのです。
2.顎の骨を鍛えて骨を発達させる
昔の人は食事にかなりの時間をかけ、よく噛んでものを食べていました。しかし、現代人はファストフードやレトルト食品などのやわらかい食べ物を食べる機会が増えており、その影響で現代人の顎は充分に発達せず、徐々に細くとがった形へと変化していると言われています。
顎が発達しないと歯並びにも影響が!
顎の骨が十分に発達しなくなるということは、歯が生えることができる面積が小さくなるということです。そのため、歯並びが悪くなる原因につながります。
歯並びが悪いと食べかすなどの汚れが溜まりやすく、歯ブラシが届きにくい部分が増えるため、歯垢(プラーク)が落ちにくくなり、その歯の汚れは虫歯や口臭の原因となります。
また、顎の力が弱いと口を開いたままの状態になりやすく、ドライマウスとなる危険性も考えられます。よく噛むことは歯並びの悪化を予防し、口の中を清潔に保つことにつながるのです。
3.小顔になる
顔の大きさは骨格で決まると思われがちですが、よく噛んで顔の筋肉が引き締まると、小顔になる効果も期待できます。
人の顔の表情は大変複雑で、表情を作り出す筋肉も複雑な構造になっています。口輪筋、咬筋、表情筋といった顔の筋肉が噛むことによって鍛えられると、顔全体が引き締まります。
反対に、よく噛まずに食事をすることが増えると、顔の筋肉が緩んでむくみやすくなり、シワが増える原因にもなります。あごや頬のたるみが気になる方は、日頃からよく噛む習慣を身に付けて顔の筋肉を鍛えることが大切です。
4.ダイエットにつながる
よく噛まずに食べると満腹と感じる前に食べ物が胃へ送り込まれることになるため、肥満の原因になります。反対に、ゆっくりよく噛んで食事をすることで、食べ物の味がよく分かり、食事による満足感が得やすくなります。
満足感が得られないと、次々と食べ物を口にしたくなるために太りやすくなります。このように、よく噛むことが結果的にダイエット効果につながるのです。
日頃からよく噛む習慣を身に付けるには?
よく噛むことには口臭予防や虫歯・歯周病予防、ダイエット効果などたくさんのメリットがあります。では、日頃からよく噛んで食べる習慣を身に付けるには、具体的にどのようなことをしたらよいのでしょうか。
「よく噛んだほうがよいと分かっていても、なかなか実践できない…」という方は、以下のことに注意してみましょう。
1.食事の時間を多めにとる
時間がない中で慌ただしく食事をしていると、どうしても噛む回数が減ってしまいがちです。食事はできるだけ時間に余裕を持って取るようにし、1口につき30回を目安として、意識的に噛む回数を増やすことが大切です。
また、食材のおいしさは噛めば噛むほど感じられ、自然と噛む回数も増えていくものです。テレビやスマートフォンを見ながら食事をしていると、気が散ってしまい食べ物の味に集中できなくなりがちですので、食べ物の味を意識しながら食べることも大切です。
2.噛み応えのある食品を取り入れる
軟らかいものを食べる場合、わざわざたくさん噛む必要がありませんので、どうしても噛む回数が少なくなってしまいがちです。
噛み応えのある硬めの食品をメニューに取り入れるのも、噛む回数を増やすためには効果的です。食物繊維の豊富なイモ類や根菜類、スルメなどの乾物、雑穀といった、よく噛まないと飲み込めないものを意識的に食べるようにするとよいでしょう。
3.間食としてキシリトールガムを食べる
間食にガムを噛むと自然と噛む回数が増えますので、噛む習慣を身に付けるにはよい方法と言えます。ただし、砂糖が入ったガムを噛むと歯の再石灰化を妨げ、むしろ虫歯の原因となりますので、ガムを噛むのであればキシリトールガムがおすすめです。
キシリトールとは?
キシリトールは、虫歯菌が食べても虫歯の原因となる酸を作ることができません。また、ガムを噛むことで殺菌作用のある唾液が大量に分泌されますので、虫歯になりにくい口内環境を作ることができます。
さらに、キシリトールは歯垢を落ちやすい状態に変え、歯の再石灰化も促してくれるので、虫歯予防にはピッタリなのです。
キシリトールガムの選び方
キシリトールガムを選ぶ際には、キシリトールの配合率が50%以上のものを選ぶようにしましょう。これより低い配合率のものは、キシリトールではない別の甘味料が入っている場合があり、却って虫歯のリスクを高めてしまう可能性があります。
最も確実なのは、歯科医院でキシリトールガムを購入することです。歯科医院ではキシリトールの配合率が100%のガムを販売していますので、歯科医師や歯科衛生士におすすめの商品を尋ねてみるとよいでしょう。
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