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    シェーグレン症候群の診断基準と検査内容/世界的基準は?

    シェーグレン症候群の診断基準と検査内容/世界的基準は?

    シェーグレン症候群の検査は、血液検査・生検・X線写真撮影などなかなか大変なものばかりです。これを読んで検査の前に心構えをしておきましょう。

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  • 更新日:2016年02月26日

シェーグレン症候群の診断基準は?検査は痛い?

ドライアイ(眼乾燥症)やドライマウス(口腔内乾燥症)など、身体の乾燥症状が主となるシェーグレン症候群ですが、その2つの症状だけでは他の病気と区別することはできません。
病院では、厚生省(現在の厚生労働省)により規格化された診断基準をもとに、様々な検査をしてシェーグレン症候群の診断を行います。

ただ、病院に行くときにシェーグレン症候群の詳しい検査内容がわからないと、痛みはあるのか、危険な検査はないのかどうかなど、少々不安になってしまう方も多いのではないでしょうか。
今回はシェーグレン症候群の診断基準とともに、シェーグレン症候群の具体的な検査方法についてご紹介します。

シェーグレン症候群の診断基準

診断をチェックする問診表

それでは、シェーグレン症候群ではどんな検査をするのかを詳しく探っていきながら、シェーグレン症候群の診断基準をチェックしてみましょう。

なお、以下に紹介する「口唇腺・涙腺の検査」「唾液腺の検査」「涙量の検査」「血液検査」といった、4つの検査における診断基準のうち、2つ以上が当てはまればシェーグレン症候群と診断されます。

口唇腺・涙腺の検査(生検病理組織検査)

口唇腺や涙腺のリンパ球

生検病理組織検査では、口唇腺組織や涙腺組織をごく少量だけ採取して、リンパ球という免疫に関する細胞が、ある区画の中でどれだけ浸潤(集合)しているかを顕微鏡で観察します。

診断基準として言い換えると、「口唇腺組織でリンパ球の浸潤が1/4m㎡あたり1focus(=50個)以上」、あるいは「涙腺組織でリンパ球の浸潤が1/4m㎡あたり1focus(=50個)以上」のどちらかが当てはまっているかどうかを確認します。

唾液腺の検査(分泌量・X線撮影・シンチグラフィー)

唾液腺の検査には3種類のものが挙げられます。

ガム試験・サクソンテスト

ガムで唾液量を測る

1種類目は、一定時間の唾液の分泌量を測定する検査です。味のしないガムを噛んで、唾液がどれだけ出るかを測るガム試験では、10分間で10ml以下だと少ないと判定されます。

また、サクソンテストといってガーゼを口の中に入れて唾液を吸収させる検査では、唾液を吸収したガーゼの重さを計測して分泌量をチェックします。こちらは2分間で2g以下だと少ないと判定されます。

唾液腺造影

2種類目は造影剤によるX線検査です。耳下腺の開口部(頬の内側)からヨード系の造影剤を注入し、耳下腺がどれだけ破壊されているかをX線像で確かめます。造影剤の注入時には少々痛みを感じることもあります。

唾液腺シンチグラフィー

唾液腺シンチグラフィーという放射線学的検査では、唾液腺に溜まる性質を持つ放射性同位元素(ラジオアイソトープ)を体内に注入し、唾液腺にどれくらい集まるか観察し、唾液腺の機能を調べます。
使用する放射性同位元素は人体への影響の少ないものです。

上記の検査を行い、「唾液分泌量が少ない、かつ、唾液腺シンチグラフィーで機能の低下が見られる」あるいは「唾液腺造影で直径1mm以上の陰影が見られる」のどちらかが満たされていれば、シェーグレン症候群の診断基準に近づきます。

涙量の検査

唾液の検査と同様に、涙量を測る検査にも大きく分けて3種類のものが挙げられます。

シルマー検査

涙の量を測る検査

Schirmer(シルマー)試験では、細長く目盛りのついたろ紙を下まぶたに引っ掛ける形で置き、5分間でどれだけ涙が出るか測定します。目の縁にろ紙を置く際、少々痛みを感じることがあります。
水分で濡れると色が変わる紙なので、色が変わる境目を目盛りから読み取ります。5mm以下だと少ないとされます。

ローズベンガル試験

2つ目はローズベンガル試験です。ローズベンガルという赤色の点眼液を垂らし、眼の傷を発色させて、ドライアイでどれだけ結膜が傷ついているか確認します。

蛍光色素試験

3つ目は蛍光色素試験です。方法はローズベンガルと同じで、眼にフルオレセインという蛍光色素を点眼し、角膜の傷を見ます。

診断基準は、「シルマー試験が5分間で5mm以下」で、かつ「ローズベンガル試験」か「蛍光色素試験」のどちらかが陽性であるかどうかとします。

血液検査(免疫の検査)

血液検査

シェーグレン症候群で多く出現する、抗SS-A抗体ないし抗SS-B抗体という自己抗体があるかどうかを、血液検査で調べます。

採血を行い、どちらか1つだけでも陽性なら診断基準を満たしていることになりますが、これらは他の自己免疫疾患でも現れる抗体で、さらに常に陽性になるとも限らないので、この2つの抗体が出たからといって、必ずしもシェーグレン症候群であると判断することはできません。

シェーグレン症候群の診断に多くの検査が必要なのはどうして?

中にはシェーグレン症候群の検査項目の多さに驚いたという方も多いかもしれませんね。

シェーグレン症候群の症状は、ドライマウスやドライアイだけに限らず、皮膚や関節、消化器、リンパ節など全身に渡って現れることもあり、さらに、シェーグレン症候群のみに現れる特異的症状は今のところ認められていません。そのため、他の疾患と区別しづらく診断が難しい病気です。

また、シェーグレン症候群は免疫システムに異常が生じる自己免疫疾患(膠原病)のひとつですが、上記の検査結果は他の自己免疫疾患でも当てはまる場合があり、シェーグレン症候群固有の検査の手法が確立されていません。したがって、シェーグレン症候群であるかどうかを正確に判断するには、より多くの検査でデータを集めることが求められるのです。

世界的な診断基準は?

現在、日本国内では1999年に厚生省が発表したシェーグレン症候群の診断基準が最新のものとして使われています。

一方、他国ではまた別の診断基準を用いています。その病態の複雑さから、今のところは世界各国で共通する診断基準はありません。
しかし、今後、国際的にシェーグレン症候群に関する研究を進めているSICCAプロジェクトの結果がまとまることで、世界的なシェーグレン症候群の診断基準ができる予定です。

シェーグレン症候群を診断できる病院は?

病院施設

もし、「当てはまる症状が多く、自分は明らかにシェーグレン症候群である」と判断した場合は、リウマチ科などの膠原病専門外来のある病院に行くことをおすすめします。

また、「眼が乾く」「口が乾く」「関節が痛い」などの部分的な症状であれば、それぞれ症状のある部位に合わせて眼科や歯科、耳鼻咽喉科、内科、整形外科などを受診しても構いません。
様々な検査を行う可能性がありますので、診療科目の多い総合病院を選ぶと安心ですね。

診断を受けていない人が多いのが実情です

1993年に厚生労働省が行った特定疾患自己免疫疾患調査研究班の調査結果によると、日本におけるシェーグレン症候群の患者数は年間で約15,000~20,000人と言われています。
しかし、診断を受けない未受診の潜在的な患者数が多いため、実際は100,000~300,000人いるのではないかと予測されています。

また、男女比では圧倒的に女性が多く、その数は実に男性の14倍です。特に40歳~60歳代の中高年に多く発症しており、この点は他の自己免疫疾患とも共通しています。

シェーグレン症候群の発症原因は未だ謎が多く、はっきり解明されてないのですが、免疫異常や遺伝的要因、環境的要因(ウイルスなど)のほか、女性の患者数が多いことから女性ホルモンの濃度が深く関わっていのではないかと考えられています。実際はひとつの原因だけでなく、いくつもの原因が重なって発症するようです。

その症状の多様性ゆえに、シェーグレン症候群には類似した疾患も多く、自己判断して診断を受けずにいる方も少なくありません。
口腔内の乾燥症状などは日々の生活を送る上でも支障になりかねませんので、シェーグレン症候群の症状に心当たりがある方は、迷わず病院を受診しましょう。

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