料理に医薬品にアロマに…いろいろ使えるナツメグの効能
ナツメグというハーブはご存知の方も多いですが、その効能や使い方についてはあまり知らないという方も多いのではないでしょうか。
ナツメグはインドのアーユルヴェーダと関わりが深く、エジプトのミイラの防腐剤として使われていたことが明らかになっています。中国では肉豆蔲(にくずく)という名前の漢方薬として親しまれており、頭痛薬や胃腸薬として、また口臭を消す薬としても活躍しています。
ムスクのようなよい芳香を持つナツメグは、エッセンシャルオイルとしてアロマテラピーにも用いられています。今回はナツメグの効能について詳しく解説します。
ナツメグってどんなハーブ?
ナツメグはニクズク科の木になる木の実です。おしりのような丸く可愛らしい果実の中に、種子として黒い実が含まれており、さらにこの黒い種子を割ると出てくる核の部分(仁)がナツメグです。
ナツメグは料理のスパイスに使われることが多いハーブで、エッセンシャルオイル(精油)としてアロマテラピーの場でも使用されています。
また、種子を包んでいる真っ赤な種皮はメースといい、こちらも香辛料として使われています。
ナツメグの原産地は東インドのモルッカ諸島、ジャワ島、バンダ島などです。モルッカ諸島は昔から香料諸島とも呼ばれ、ナツメグの他にもクローブなどの香辛料を栽培する地としても有名です。西インド諸島でも栽培されていますが、東インド産のものに比べると香りがマイルドです。
ナツメグの歴史
ナツメグが人間に使用された最古の歴史は、紀元前1000年頃と言われています。紀元前1000年といえば日本では縄文時代ですから、気の遠くなるようなお話ですが、インドのバラモン教という宗教で、ヴェーダという教典に口臭抑制薬や整腸剤、解熱鎮痛薬として使われていたと記録されています。
その後、10世紀頃から文献でナツメグの存在が確認されるようになり、14世紀頃から貿易の場で活躍し始め、貴重なスパイスとしてポルトガル、オランダなどの間で取り引きされました。
なお、国内でナツメグという語句が登場したのは15世紀の室町時代、「撮壌集(さつじょうしゅう)」という日本の古い国語辞典で掲載されたのが最初ですが、実際に持ち込まれたのは1848年と伝えられています。
ナツメグはどんな料理に使われているの?
ナツメグを使う料理で最もポピュラーなのは、やはりカレーでしょう。インドカレーに使われるホットでスパイシーなガラムマサラには、ナツメグ・クローブ・シナモンなどの香辛料が配合されています。
また、臭みを消すためにハンバーグやミートソースなどのひき肉料理に使われています。パウダー状のナツメグはふりかけるだけなので便利ですが、自分で原形のホールをすりおろして加えると、よりフレッシュで本格的な香りが広がります。
フランスではナツメグとホウレンソウを一緒に茹でた料理やキッシュ、じゃがいも料理にもスパイスとして使われているほか、その甘い香りを生かして、フランス菓子のパン・デピスというパウンドケーキや、クッキーなどお菓子にも用いられています。なお、マレーシアでは砂糖漬け、ジャムとしてお土産で売られています。
ナツメグの効能とは
各国で薬効が認められているナツメグですが、ナツメグの様々な効能について詳しくご紹介していきます。
1.胃腸の消化機能をサポートする
ナツメグに含まれているピネンという成分には、胃の消化を助け、胃粘膜を保護する効果があります。
有名な胃腸薬の太田胃散には、ケイヒ、ゲンチアナ、ニガキ、チョウジ、オレンジピール、フェンネルといった生薬と一緒にナツメグが加えられています。
また、タイでは胃がんの原因となるヘリコバクター・ピロリの感染率が高い一方、胃がんの発症率は低い傾向にあります。これはタイの食生活に起因しており、香辛料として使われているナツメグが、ピロリ菌の発育を妨害していることが関連していると考えられています。
さらに、ナツメグ中のミリスチンという成分は、整腸作用をアップさせ、消化吸収を助けるので下痢症状にも効果的です。その他、ガスが溜まったときの腹部膨満感を解消する効果や、抗炎症作用、血圧低下作用もあると言われています。
胃腸に効くおすすめの摂取方法
胃腸への効果を期待するなら、ハーブティーの形で使用するのがおすすめです。ナツメグだけでなく、カルダモン、ジンジャー、クミンなどが一緒に含まれていると、より効果が期待できます。
2.気持ちを落ち着かせる
ナツメグは英語でもNutmeg(ナツメグ)と言います。ナッツ(豆)とメグ(ムスク)が合体した名称で、ジャコウジカから得られるムスクのような良い香りがその名の由来となっています。独特な香りで、刺激的、甘い、スッキリ、シャープなど、その形容詞は様々です。
ナツメグの香り成分であるα-ピネンにはリラックス効果があります。森林浴の香りはこのα-ピネンから来ています。ナツメグはストレスを抱えている時、心が疲れている時には最適です。エッセンシャルオイルをアロマポットに数敵垂らしてディフューザーとして用いたり、足湯に混ぜたりするとよいでしょう。月桂樹、ローレル、ラベンダー、イランイランなどとよくブレンドされます。
記憶力・集中力アップにも効果が!
インドの薬物に関する研究では、マウスにナツメグを投与したところ、記憶を保持する能力や学習能力が向上したという結果が出ています。特にシナモンやフェンネルといったスパイス系との相性は抜群で、頭をスッキリさせる効果も期待できます。
3.身体を温める
ナツメグには血流をアップして身体を温める効果があるので、冷え性の人にはピッタリです。肩こりにも血行を促進して筋肉をほぐす作用があります。ホルモンバランスを整える効果もあるので、身体を温めて生理痛を和らげる効果も期待できるでしょう。
ナツメグのハーブティーにミルク、お砂糖やハチミツを加えたナツメグミルクティーは、身体を温めて、発汗を促進する効果があります。ナツメグには催眠作用もあるので、ナツメグミルクティーは就寝前に飲むのがおすすめです。
ナツメグには口臭を予防する効果も!
ナツメグやクローブに含まれるオイゲノールという成分には、抗菌作用があると言われています。
口臭の大きな原因のひとつは、舌苔(ぜったい)から発生する揮発性硫黄化合物(VSC)です。ナツメグの抗菌作用により揮発性硫黄化合物を産生する細菌の働きを抑えることで、口臭を抑制する効果が期待できます。
なお、ドクタータッフィ(DR.TAFFI) という化粧品会社から販売されている、イタリア産のマウスウォッシュ「AT エチケットウォッシュ」には、このオイゲノールが配合されています。アロエやミント、セージなど、ほぼ天然由来の成分で構成されている身体に優しいマウスウォッシュです。
ナツメグの副作用・摂取時の注意点
様々な効果があるナツメグですが、その使用方法には注意が必要です。というのも、ナツメグは多量に摂取すると動悸や口渇、頭痛、嘔吐、めまい、痙攣などの症状を引き起こす恐れがあり、重い場合は肝障害を引き起こす可能性もあるのです。
特に、生のナツメグには向精神作用を持つミリスチシンという成分と、抗うつ剤に含まれるモノアミン酸化酵素阻害薬が含まれており、ナツメグを5g以上摂取すると幻覚作用やパニックを生じる恐れが指摘されています。ナツメグを誤って大量に摂取してしまった場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。
また、子宮収縮の作用もあるため、妊娠中の女性はナツメグの摂取を控えてください。
エッセンシャルオイルにはアロマバスなどの使い方もありますが、ナツメグのオイルは皮膚への刺激が強いため避けましょう。
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