歯磨き後にも口臭が…どこに問題がある?
歯磨き後にも口臭がしてしまうのは一体何が原因なのでしょうか。
恐らく、最も多いのは「私の歯磨き方法が間違っているのかも?」という疑問でしょう。もちろん、歯磨きの方法や口腔内のトラブルも口臭の一因ではありますが、歯磨で消えない口臭の原因は口腔内に限らず、全身疾患が関わっているケースも珍しくありません。さらに、口臭は心の病気とも深く関係しています。
今回は、歯磨き後の口臭の原因について詳しく紹介します。自身の状態と照らし合わせて、歯磨きで消えない口臭の原因を確認してみましょう。
歯磨き後の口臭が気になるときのチェックポイント
歯磨き後も口臭がする場合、「歯磨きがきちんとできていない」、「口腔内に異常や病気がある」、「全身疾患が口臭と関与している」などの可能性が挙げられます。それぞれの原因について詳しくご紹介します。
1.歯磨きの方法
「習慣だから」ということで毎日何となく行ってしまいがちな歯磨きですが、正しいやり方を知っている方は意外と少ないのではないのでしょうか。ここでは、歯磨き後の口臭が気になる方へ、歯磨きで注意すべきポイントをご紹介します。
歯ブラシの持ち方
歯ブラシはグーで持つのではなく、ペングリップ(鉛筆持ち)が正しい持ち方です。ペングリップによって細かい動きが可能になると、歯垢(プラーク)除去能力がアップして口臭の抑制につながります。また、歯ブラシを歯に当てる圧力も微細に調節できます。
ただし、ペングリップは年齢の小さな子供や高齢者では難しい場合もあるので、練習して少しずつ定着させるようにしましょう。
歯磨きの頻度
必要以上に歯磨きの頻度を増やし過ぎると、歯肉を傷つけて擦り傷を作ってしまったり、口内炎ができてしまったりと、歯をすり減らす原因につながりかねません。また、歯茎が下がってしまう場合もあります。
歯磨きは一日多くても3回にとどめ、回数を増やすよりも、質の良いブラッシングを心掛けましょう。
歯間ブラシ・デンタルフロスの使用
歯間部分は歯垢や食べかすが溜まりやすく、とても虫歯になりやすい場所です。
歯に挟まった食べカスや歯垢を放置していると、そこから口臭を発生させてしまいます。歯磨きの後は必ずデンタルフロスや歯間ブラシを併用し、歯間ケアを徹底して行いましょう。
2.歯磨きに使用する歯ブラシ
歯磨きに使う歯ブラシ選びも重要なポイントです。硬さやヘッドの大きさ、交換時期など、よくある疑問をまとめました。
歯ブラシの大きさ
歯磨きがきちんとできていない方は、大きめの歯ブラシを使っている可能性があります。市販の歯ブラシは全ての方に対して合うように作られているので、女性や顎の小さい方は歯科医院で売っている小さめのヘッドの歯ブラシを購入しましょう。小さいヘッドのものであれば、奥歯の隅々まで磨くことができます。
歯ブラシの硬さ
歯科医の先生は柔らかめの歯ブラシを好みます。なぜかというと、硬い歯ブラシは歯や歯肉を傷つける恐れがあるからです。柔らかめの歯ブラシは、毛先を歯と歯の境目の歯周ポケットに入れることができるので、口臭を発生する歯周病の予防に適しています。
また、柔らかい毛先で歯茎を刺激することでマッサージ効果も期待でき、歯肉の健康維持につながります。
歯ブラシの交換時期
基本的には毛先が開いたら取り換えましょう。だいたい1ヶ月くらいで開いてくるのが普通です。
もし、1週間程度で開いてしまうという方は、強い力で磨きすぎていると考えられます。そのままゴシゴシと強い力で磨き続けていると、歯が削れて知覚過敏になりかねませんので、歯ブラシにかける圧力を一度見直してみましょう。
3.舌苔が溜まっていないか
歯磨き後の口臭の原因は、歯だけではなく舌にも存在します。舌の表面に蓄積する舌苔(ぜったい)は、よくある口臭の原因のひとつです。
舌苔は細菌や口腔粘膜から剥がれた上皮細胞(つまり垢)、食べカス、白血球の死骸、唾液中のタンパク質などから構成されており、この舌苔にある細菌が増殖すると、揮発性硫黄化合物(VSC)という口臭物質が産生されます。
舌苔は食事をとることなどによって除去されますが、多量の舌苔は舌ブラシで除去する必要があります。また、舌苔は免疫力が落ちているときに出現しやすくなります。全身疾患のサインである場合もあるので、体調の変化に注意してください。
4.虫歯や歯周病など口腔トラブルの有無
口腔内のトラブルには様々なものが挙げられますが、いずれも口臭と深く関わっていることが多いものです。歯磨きしても口臭が消えない、またはそれぞれの病気に心当たりがあるという方は、早めに適切な治療を受けることが大切です。
虫歯
初期の虫歯で口臭が発生することはほとんどありませんが、進行すると歯に穴が開き、歯がボロボロになって嫌なニオイがしてきます。
歯の神経である歯髄が腐ると、神経が通る歯根の中の根管で細菌がどんどん増え、細菌と身体の免疫が戦うことで炎症が起こり、歯根の先端に膿が溜まる根尖性歯周炎という病気に発展します。この膿が口腔内に出てくるとイヤな口臭が発生します。
歯周病
歯周病にかかると、必ずと言ってよいほど強い口臭が発生します。原因は揮発性硫黄化合物という臭いガスによるもので、歯周ポケットに溜まった歯周病菌が代謝産物として揮発性硫黄化合物を産生するために、強烈な口臭を発生させます。このニオイは歯周病を完治させない限り、どんなに歯磨きしても消えることはありません。
また、歯槽膿漏という重度の歯周病に進行すると、膿が出て生臭いニオイを発し、さらに口臭が悪化することがあります。
ドライマウス
虫歯や歯周病の他にも口臭が発生する口腔トラブルがあります。それはドライマウス(唾液分泌量が低下した状態)です。唾液が不足すると口臭が発生する理由は、主に2つ挙げられます。
- 抗菌作用の低下
唾液には、細菌の壁を分解してその発育を阻害するリゾチーム、細菌の増殖や成長に必要な鉄分を奪うことで抗菌作用を発揮するラクトフェリン、細菌にくっついてその働きを妨害し、カンジダ菌などの真菌にも抵抗する力を持つヒスタチンなど、虫歯菌や歯周病菌に対抗する抗菌力を持つ物質がたくさん含まれています。唾液が減少することで、抗菌力が低下してしまいます。
- 自浄作用の低下
唾液の大半は水分なので、舌苔を洗い流してキレイにする働きがあります。しかし、唾液量が減少すればその働きも低下します。
唾液の分泌量は、年を経るにつれて徐々に低下していきます。特に女性は自律神経の乱れやホルモンバランスの崩れによってドライマウスを引き起こすことが多いので、症状に気が付いたら早めに対処する必要があります。
5.口腔以外の病気の有無
口腔以外にも、耳鼻咽喉系・呼吸器系・消化器系・代謝系などの全身疾患が口臭に影響することがあります。病気が原因の口臭を改善するには、その病気を治療しなければなりません。口臭以外にも気になる症状がある方は、全身疾患の可能性も疑ってみましょう。
耳鼻咽喉系
口腔に近い耳鼻咽喉系疾患である副鼻腔炎(蓄膿症)や扁桃炎(扁桃腺炎)です。炎症なので膿が生じ、口腔を介して嫌なニオイが発生します。また、鼻が詰まると口呼吸になり、口が乾いて臭くなります。
呼吸器系
気管支炎や肺炎によって膿んだ痰が排出されることがあり、口臭が発生します。
消化器系
逆流性食道炎になると、酸っぱい口臭が発生することがあります。
代謝系
代謝異常においても、糖尿病や魚臭症(トリメチルアミン尿症)が口臭を生じる原因となっています。糖尿病では甘酸っぱい口臭があり、魚臭症では魚のような生臭い口臭が生じます。
原因に心当たりがない場合は「自臭症」の可能性も…
歯磨き後に口臭がする原因が見当たらず、歯科医院・病院でも異常がないと診断された方は、精神的な問題が潜んでいる可能性もあります。いわゆる自臭症です。
自臭症とは、本当は臭くないのに自分のことを「臭い」と思い込んでしまう病気のことです。体臭や口臭が気になり、口臭の場合は口臭恐怖症といいます。社会恐怖症などが背景に挙げられることもあり、複雑な病気で、自分でもなかなか気づくことができません。
一部の病院に設置されている口臭専門外来では、口臭恐怖症に対するカウンセリングも行われています。心当たりのある方は一度訪れてみるとよいでしょう。
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